プロローグ
あ…あの~、賢者さん?
おはようございます。
昨日のこと覚えてますか?
はい。そうです。
昨日お世話になった僧侶のカレンです。
よかったぁ。
賢者さん、すごくお酒飲まれてたので、
記憶が無くなったりしてないかなって心配だったんですよ。
あのー、席ご一緒してもいいですか?
わたしも朝食をいただこうと思ったんですけど、
席がどこも空いてなくて…。
いいんですか?
ありがとうございます。
それでは失礼しますね。
んしょ…。
ふぅ…。
ん…
ん…
あ、えっと、ごめんなさい。
キョロキョロして、みっともないですよね。
いえ。特になにかあったわけじゃないんですけど…。
朝からこんなにたくさんの人がいるのってなんだか新鮮で。
さすが王都の宿です。
わたしが住んでた村と全然違ってびっくり…。
はい。朝食の注文は済ませました。
出来上がったら、この魔法石が鳴るから、
取りにいけばいいんですよね。
さっき、親切な厨房の人に教えていただきました。
本当にわからないことだらけで、
困ってしまいますね。あはは…。
賢者さんにも昨日はお世話になりました。
改めてお礼を言わせてください。
田舎から出てきて右も左も
わからないわたしたちに、いろいろと教えていただいて。
しかも、こんなに素敵な宿まで手配していただいて。
本当にありがとうございます。
はい?
勇者さまですか?
それが、全然起きなくて…。
いくら呼んでも、返ってくるのはいびきの音ばっかり。
全くもう。だから飲み過ぎないでっていつも注意してるのに。
勇者さまってば、お酒が弱いくせに、人から勧められると
調子に乗っていつも飲み過ぎちゃうんですよ。
あ、お酒を勧めた賢者さんを責めてるわけじゃありませんよ。
今まで何回も何回もそういう失敗をしてきたのに、
直そうとしない勇者さんが悪いんです。
自業自得です。
……はい。
勇者さまとは同じ村出身の幼馴染みです。
子供の少ない田舎ですから、
昔から何をするのも一緒なんです。
ち、違います!
違いますよ!
恋人じゃありません!
どちらかと言うと、姉弟(きょうだい)みたいな関係で。
放っておけないっていうか、目が離せないっていうか、そんな感じなんです。
勇者さまって、昔から失敗やドジが多くて。
それなのに、いきなり魔王を倒す勇者に選ばれちゃって。
正直、最初は冗談だと思いました。
でも、洗礼を受けて本当に旅立つことになって。
わたし、どうしても心配で。
一緒に村を飛び出してきちゃったんです。
親にも内緒で飛び出してきたので、しばらく村には戻れないかも。
絶対ものすごく怒られちゃうだろうし…。
わたし、本当はまだ冒険に出ちゃいけない見習い僧侶なんです。
うちはずっと教会をやってるんですけど、
ちゃんと洗礼を受けて一人前になるまでは冒険には行かせないって両親が厳しくて。
本当はいけないことをしているってわかってるんです。
それでも勇者さまのお役に立ちたかったから…。
ふふふ。
わたし悪い子ですよね。
親に怒られるだけならまだしも、
神様にも怒られちゃうかもしれません。
ちゃんと毎日お祈りして許してもらわないと。
あ。
ごめんなさい!
わたしの話ばっかりしちゃって!
こんな話聞いても退屈ですよね?
何か別のお話をしましょうか。
はい? 恋のお話!?
そ、そんな……恋だなんて!
恥ずかしいですよ…。
い、いませんよ!
彼氏なんて!
勇者さまと魔王を討伐するまでは、そんなことをしている暇なんてありませんし。
それに、わたしは僧侶ですから。
生涯を共にする相手以外とは、簡単に付き合ったりしてはいけないんです。
清らかな心と身体のままでいることが、僧侶の職に就いた者の務めです。
いつかは素敵な方と結ばれたいなとは思っていますけど…。
その人が振り向いてくれるまでは清いままでいたいなって…。
うー、賢者さん、もしかしてからかってます?
さっきからニヤニヤしてませんか?
もう、人が悪いです。
はぁ。
でも本当によかったです。
王都に着いてすぐ、賢者さんみたいな方と知り合いになれて。
あ、そういえば、昨日お話しした件についてなんですけど。
賢者さん、本当にわたしたちのパーティーに参加してくれるんですか?
お気持ちは本当にうれしいんですけど。
やっぱりレベルに差がありすぎませんか?
賢者さんのメリットになるようなこと、なにもできないと思いますけど。
ご迷惑でしたら、お断りいただいても結構ですよ。
王都のことを教えていただいたり、宿を手配していただいただけでも
助けられているのに、これ以上お世話になるのは申し訳ないというか…。
今までもなんとかやって来れましたし、勇者さまの面倒ならわたしが見ますから。
無理に協力していただかなくても大丈夫ですよ。
いいんですか? 本当に?
そうですか……。
わかりました。
ありがとうございます。
賢者さんがいてくれると、とても心強いです。
改めて。これからよろしくお願いしますね。賢者さん。あ…あの~、賢者さん?
おはようございます。
昨日のこと覚えてますか?
はい。そうです。
昨日お世話になった僧侶のカレンです。
よかったぁ。
賢者さん、すごくお酒飲まれてたので、
記憶が無くなったりしてないかなって心配だったんですよ。
あのー、席ご一緒してもいいですか?
わたしも朝食をいただこうと思ったんですけど、
席がどこも空いてなくて…。
いいんですか?
ありがとうございます。
それでは失礼しますね。
んしょ…。
ふぅ…。
ん…
ん…
あ、えっと、ごめんなさい。
キョロキョロして、みっともないですよね。
いえ。特になにかあったわけじゃないんですけど…。
朝からこんなにたくさんの人がいるのってなんだか新鮮で。
さすが王都の宿です。
わたしが住んでた村と全然違ってびっくり…。
はい。朝食の注文は済ませました。
出来上がったら、この魔法石が鳴るから、
取りにいけばいいんですよね。
さっき、親切な厨房の人に教えていただきました。
本当にわからないことだらけで、
困ってしまいますね。あはは…。
賢者さんにも昨日はお世話になりました。
改めてお礼を言わせてください。
田舎から出てきて右も左も
わからないわたしたちに、いろいろと教えていただいて。
しかも、こんなに素敵な宿まで手配していただいて。
本当にありがとうございます。
はい?
勇者さまですか?
それが、全然起きなくて…。
いくら呼んでも、返ってくるのはいびきの音ばっかり。
全くもう。だから飲み過ぎないでっていつも注意してるのに。
勇者さまってば、お酒が弱いくせに、人から勧められると
調子に乗っていつも飲み過ぎちゃうんですよ。
あ、お酒を勧めた賢者さんを責めてるわけじゃありませんよ。
今まで何回も何回もそういう失敗をしてきたのに、
直そうとしない勇者さんが悪いんです。
自業自得です。
……はい。
勇者さまとは同じ村出身の幼馴染みです。
子供の少ない田舎ですから、
昔から何をするのも一緒なんです。
ち、違います!
違いますよ!
恋人じゃありません!
どちらかと言うと、姉弟(きょうだい)みたいな関係で。
放っておけないっていうか、目が離せないっていうか、そんな感じなんです。
勇者さまって、昔から失敗やドジが多くて。
それなのに、いきなり魔王を倒す勇者に選ばれちゃって。
正直、最初は冗談だと思いました。
でも、洗礼を受けて本当に旅立つことになって。
わたし、どうしても心配で。
一緒に村を飛び出してきちゃったんです。
親にも内緒で飛び出してきたので、しばらく村には戻れないかも。
絶対ものすごく怒られちゃうだろうし…。
わたし、本当はまだ冒険に出ちゃいけない見習い僧侶なんです。
うちはずっと教会をやってるんですけど、
ちゃんと洗礼を受けて一人前になるまでは冒険には行かせないって両親が厳しくて。
本当はいけないことをしているってわかってるんです。
それでも勇者さまのお役に立ちたかったから…。
ふふふ。
わたし悪い子ですよね。
親に怒られるだけならまだしも、
神様にも怒られちゃうかもしれません。
ちゃんと毎日お祈りして許してもらわないと。
あ。
ごめんなさい!
わたしの話ばっかりしちゃって!
こんな話聞いても退屈ですよね?
何か別のお話をしましょうか。
はい? 恋のお話!?
そ、そんな……恋だなんて!
恥ずかしいですよ…。
い、いませんよ!
彼氏なんて!
勇者さまと魔王を討伐するまでは、そんなことをしている暇なんてありませんし。
それに、わたしは僧侶ですから。
生涯を共にする相手以外とは、簡単に付き合ったりしてはいけないんです。
清らかな心と身体のままでいることが、僧侶の職に就いた者の務めです。
いつかは素敵な方と結ばれたいなとは思っていますけど…。
その人が振り向いてくれるまでは清いままでいたいなって…。
うー、賢者さん、もしかしてからかってます?
さっきからニヤニヤしてませんか?
もう、人が悪いです。
はぁ。
でも本当によかったです。
王都に着いてすぐ、賢者さんみたいな方と知り合いになれて。
あ、そういえば、昨日お話しした件についてなんですけど。
賢者さん、本当にわたしたちのパーティーに参加してくれるんですか?
お気持ちは本当にうれしいんですけど。
やっぱりレベルに差がありすぎませんか?
賢者さんのメリットになるようなこと、なにもできないと思いますけど。
ご迷惑でしたら、お断りいただいても結構ですよ。
王都のことを教えていただいたり、宿を手配していただいただけでも
助けられているのに、これ以上お世話になるのは申し訳ないというか…。
今までもなんとかやって来れましたし、勇者さまの面倒ならわたしが見ますから。
無理に協力していただかなくても大丈夫ですよ。
いいんですか? 本当に?
そうですか……。
わかりました。
ありがとうございます。
賢者さんがいてくれると、とても心強いです。
改めて。これからよろしくお願いしますね。賢者さん。