Track 3

03【1134文字】告白とキス_獲物の捕らえかた

ダメ。まだ待って。もう少し引き付けてからだよ。 あのモンスターはね。あなたの事、取るに足らないと思ってる。 すぐに倒せるって見くびってる。 でも、それが狙い。 弱そうに見える事。それが今のあなたの武器なの。 だって本当は違うんだから。 絶対に目的を果たしたいなら『私何もわかってません』って態度で、油断させて。 それから焦らずに相手をよく見る事。 そして、相手が隙を見せたら……。 一撃食らわせてあげるの。 よし。今。撃って。 もう一発。 仕留めて! やったね! 先生として誇らしいよ。 もう。まだそんな事言ってるの? これはあなたの力。あなたが倒したんだよ。 本当によく頑張ったね。 ふう。じゃあ解体始めようか。 とはいっても、こいつの肉は食べられたものじゃないから。 高値で売れる毛皮と爪は回収して。 他のパーツは持てる分だけ持って、終わりにしよう。 じゃあ、お姉さんはそこでちょっと休むね。終わったら教えて。 ううん? 元気だよ。 ただ、緊張の糸が切れたっていうか……。 本当に、平気平気! そうだ。この前のお誘い、どうするか決めた? いい話じゃない。あんな強い人が仲間になってくれるなんて。 どうして? 一人で頑張るのも、そろそろ限界でしょう。 あなたも強くなったし『足を引っ張るかも』なんて心配する事ない。 これからのためにも、誰かと組んだ方がいいよ。 でも、こんなチャンスもうないかもしれないよ。 あ、終わった? うん! すごく綺麗に処理できたね。えらいえらい。 じゃあ、街に戻ろうか。 そうだ。頑張った勇者ちゃんにはご褒美をあげなくちゃね。 何がいい? 装備でもマジックアイテムでも、何でも用意するから。 うん? どうかした? へっ⁉ あ、あ。急に何を言うの? だから他の仲間は作らないし、それを言うために今日頑張ったって事? それは、その。 二か月前のあの日、あなたを助けたのが私だからそう思うだけだよ。 あなたはまだ世界を全然知らなくて。仲間も私だけで。 つまり今一番近くにいるのが私だから、特別に見えるだけだよ。 それにあなた、私の事何も知らないでしょう。 もし私が悪の手先だったら、どうするつもり? あのね。簡単に言わないで。それでもよくなんかないよ? 私『ちゃんと相手をよく見てから行動しろ』って今教えたよね? もう。全然人の言う事聞かないんだから。 わかったよ。あなたの気持ちはわかった。 好きって言ってもらえて嬉しい。 でも私は……。 そう……よかった。 へっ⁉ それは言った。ご褒美あげるって。でも、そんなの……。 何それ……。 これ、機械人形の身体だよ。 本当の私はずっと遠くにいるから、あんま意味ないよ。 いいの? それでも。 キス、したいの? 勇者ちゃんはバカだね。 でも。 ちゅっ。 ちゅっ……ちゅ。 あたしもバカだね……。 ちゅっ。 好きだよ……。あたしも、あなたが大好き。