02【1520文字】約束_世界を明るくする方法
もう! また泣いてるの? 顔を上げて。
お待たせ。メンテナンスに時間がかかっちゃってごめんね。
また一緒に冒険しましょう?
ふふ! そんなに喜んでくれるの?
ありがとう。あなたって本当に可愛いね。
なあに?
私にお願い? 二つも?
何かな。一つ目から教えて。
私の事が知りたいの?
そんなに興味持ってくれるなんて、お姉さん嬉しいな❤
そこまで推理してくれたんだ。
その通りだよ。私の身体は機械でできているけど、魔力をエネルギー源として動いている。
その魔力を送っているのが、とある魔法使い。
つまり、ここから離れた所にいる私の本体だね。
あー……。
ごめんね。これ以上は話せない。
でも。私があなたの味方なのは本当だから。
それじゃ、ダメかな?
えっと。そうじゃないの。
私が素性を明かせないのは、あなたが頼りないからとか、信用できないからじゃなくて。
単に私の都合だよ。あなたは何も悪くない。
うん?
なるほどね。
いいよ! 元々そのつもりだったし。
二つ目のお願いはOK。
お姉さんが、あなたを立派な勇者にしてあげる!
私はこれから、あなたの先生になって。
食べられる植物とか、獲物の取り方とか。冒険に必要な事を教える。
それで、今あなたが言った通り、いつかあなたが立派な勇者になれたら。
正体を明かすか、その時もう一度考えるね。
じゃあ、早速頑張っちゃおうか。
私がいるからにはね?
もう食用キノコと毒キノコを間違えさせたりなんかしないんだから。
でもあの、間違えたのは恥ずかしい事じゃないからね?
あのキノコ、本当に見分けが難しいし。
お姉さんはそういうお仕事してるから知ってただけで。
あなたが知らなくても当たり前だよ。
え? まぁ、お医者さんでもあるかな。本職はこの通り、人形操作の魔法使いだけど。
薬とかも作ってて、最近は……。
ほら。私の話はこれでおしまい。始めよう!
まずはこの森の話をしようか。初めて来たんだもんね。
この木は知ってる?
これはね、この辺にしか生えない『竜の血』って木なの。
見ての通り普通の木なんだけど。
昔の人は、これをずっとモンスターだと勘違いしていたんだ。
理由は……。
ここを切り落としてみて?
木なのに、樹液が赤い。血を流しているみたいでしょう?
だから、昔の人は勘違いした。
この森が、大きな一体の植物系モンスターが根を張る場所だと思い込んだの。
でも、そうじゃないってわかった今は、この木は薬とか化粧品とか、家具の木材に使われるようになった。
ねぇ。面白くない?
今と昔で、この森のイメージはこんなに変わったんだよ。
ちなみに見た目グロすぎてとてもそうは見えないけど。
木の実は食べられます。取って行こう!
だよね!
私、賢くなるって事は、世界が明るくなる事だと思ってるんだ。
たとえばこの森は。
何も知らずに歩いていたら、ただの『綺麗で平和な森』だよね。
でも、珍しい木が生えてるって知ってたら観察したくなるし。
それが昔モンスターだと思われていたってわかったら、見方が変わるよね。
同じ景色でも、知識がある分だけ、見所は増える。
冒険の計画も立てやすくなる。
つまり。
そういう事! 知識はあなたを助ける。
だから、私はあなたに賢くなってほしい。
あなたが生き残るためにも、世界をもっと楽しむためにもね。
ど、どうかなぁ?
そうだよ! その意気。
私だっていつまでいられるかわからないんだから。早く成長してね?
ううん! どこにもいかないよ。
あなたが私を必要としてくれる限り。
私はずっと、そばにいる。
よし、じゃあ結構歩いたし、あそこの木陰で休憩しようか。
……うわっ⁉
うん。約束、するから。
絶対だよ……。
もう。いつまでくっついてるの?
この身体、デリケートなんだよ?
ちょっと力を入れただけで壊れちゃうんだから。
仕方ないなぁ。
もう少しだけだよ……。