Track 10

03_B_夏越祭の夜

;環境音 夏越祭 F.I. ;7/左(密着) 【日々姫】「あー、楽しかったー! っていたら、神様に失礼になっちゃうのかな? 茅の輪くぐりも神事やけん、厳かに臨まんといけん! みたいな」 ;7/左(接近囁き) 【日々姫】「ばってん……まっこと楽しかったの。 だってもう、何年ぶりかわからんくらいでしょお。にぃにと一緒に赤井さんの夏越祭にきて、茅の輪くぐったのなんて」 ;7/左 【日々姫】「前のときは――にぃにが帝都にいくまえ……よね。ほーんと、随分間があいちゃった。ふふっ」 【日々姫】「(お祭りの喧騒を寄り添い合いながら幸せに呼吸音とニュアンス。一分ほど)」 【日々姫】「――あの頃の私には、想像もできんよーなことよね。 プロのデザイナーになれたことも。大嫌いだった鉄道に、こぎゃん深くまでかかわるようになったことも」 ;7/左 接近囁き 【日々姫】「……にぃにとほんとに、恋人同士になれたことも」 ;7/左 (ぎゅっとしがみつく近さ) 【日々姫】「……にぃにが離れていっちゃったとき。私……ものすごくかなしかったと。 にぃにがおうちに来てくれて、ようやく私の――‘ひびき”の居場所が見つかったって思うとったのに」 【日々姫】「私の絶対の味方が出来た! って思うとったのに。それがフイって―― 『義父さんの命令だから』って……ただそれだけの説明で、おうちからいなくなっちゃって」 【日々姫】「……ちいちゃかったけん。私。 『にぃには私より、お父さんのいいつけのほうが大事なんだー』って思うて」 【日々姫】「今かんがえたら、あのころのにぃにが、父さんの言うことに逆らえるはずなんてないのに。 ううん、当時だって、落ち着いてちゃんと考えたら絶対わかることなのに。 たださみしくてかなしくて――捨てられたって思いたくなくって。 やけん……にぃにのこと嫌いになろうって、一生懸命がんばって――ばってん……」 【日々姫】「(言葉を探す呼吸音。深い相互信頼すでにあるので、落ち着いたもので大丈夫です)――あ」 【日々姫】「思い出したと。私がなんで、赤井さんの夏越祭にこんよーになっとったか。 茅の輪。ほら、赤井さんのは、くぐるだけやのーて、茅(かや)の葉、抜き取ってよかとじゃない」 【日々姫】「茅の輪……厄ば吸い取ってくれる輪っかの小さいの。手首にまけるの。“自分で作ってお守りにしてもいいですよ”って、茅の葉、毎年抜かせてくれて」 【日々姫】「これ、全国的にはすっごく珍しいことなんだって……初めて一緒に夏越さん連れてきてもらったときだよね。にぃにに私、教えてもらって。 なんかそれが、わたし嬉しくて誇らしくって。あのころはほんとにちいちゃかったけど、手先の器用さだけは結構、自信あって」 【日々姫】「『それならひーちゃん、にぃにの分もあんであげるとー!』って、ふふっ」 ;SE 左耳耳元で茅の葉ひと束をさらさら鳴らす 【日々姫】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)……にぃにがこっちにおってくれたときには、ぜぇんぶの夏に、だったよね。 私がにぃにに、にぃにの茅の輪編んであげるの」 【日々姫】「それができんよーになったら、お祭り、急にいろあせちゃって、さみしくなって、足な自然に遠のいちゃって。 ばってん――今年は、また……うふふっ!」 【日々姫】「ね! にぃに。今年も……もしもにぃにがイヤじゃなければ――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――うんっ!」 【日々姫】「ほんならにぃに、今から編んであげるけん。ご褒美に……えへへっ、またお膝にのせて?」 ;SE 膝にのる ;7/左→(膝にのって見上げてしゃべる状態なので);2/右前 ;1/前(背中向き・密着) /基本、手元に目線おとして、適宜にぃにを見上げてください 【日々姫】「ふふつ、ありがとお。――(呼吸音)――んしょっ。――んっ」 【日々姫】「ほんなら、編むけん」 ;SE チガヤでミサンガを編んでいく 【日々姫】「まずは抜き取ったカヤ……チガヤの束を、おおざっぱに――(呼吸音)――こぎゃんして、みっつにわけて」 【日々姫】「そしたらあとは……ん――(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――ひたすら――みつあみに――(呼吸音)――あんで、って――(呼吸音)」 【日々姫】「(集中した呼吸音+作業のニュアンス。90秒ほど)」 【日々姫】「……ん。ふふっ――確かに。(呼吸音)……わたしも随分――(呼吸音)――ちいちゃかころとくらべたら――(呼吸音)――手際よぉ――(呼吸音)―― なった――(呼吸音)――よね――(呼吸音)」 【日々姫】「ちいちゃか、ころは――(呼吸音)――にぃにに、よかとこ、みせたくて――(呼吸音)――緊張しちゃって――がんばって――(呼吸音)―― 指先、ふるえて……ふふっ――(呼吸音)――30分くらい――たぶん――(呼吸音)――かかっちゃってた、ばってん――(呼吸音)――いま、は――(呼吸音)」 【日々姫】「(集中した呼吸音+作業のニュアンス。90秒ほど)――っと――もーちょっと――(呼吸音)――うん」 ;SE stop ;2/右前(密着) 【日々姫】「そしたらにぃに? 手首ば出して」 【日々姫】「(呼吸音)(呼吸音)――えへへ、ありがと。結んじゃうね」 ;SE チガヤミサンガを手首に巻いて編み止める 【日々姫】「公務、も……(呼吸音)(呼吸音)――乗務も、あるけん――(呼吸音)(呼吸音)――滑り結び、して――(呼吸音)(呼吸音)――広げて、はずせる――(呼吸音)(呼吸音)――ように、して――(呼吸音)(呼吸音)――っと!」 ;SE stop 【日々姫】「えへへ。でーきた。これでにぃには一年ずっと大丈夫! わるぃこととかイヤなこと、ぜぇんぶひーちゃん特製の茅の輪が肩代わりしてくれるけん」 【日々姫】「……(甘えてためらう呼吸)……それで、ええと……もしも面倒じゃなかったら、ね? にぃに」 ;3/右(接近囁き) 【日々姫】「私の分の茅の輪。やり方教えるけん。にぃにが編んでくれたらすごぉく嬉しいんだけど――(呼吸音)」 ;SE 携帯着信音 ;膝の上からとびのいて →;1/前 【日々姫】「ひゃうっ!!?」 ;1/前 【日々姫】「携帯? なに、だれ? え!? 社長!!?」 【日々姫】「なんで私に?? って、あ――うん。出なきゃ」 ;(よそ行きのいい声) 【日々姫】「はい。右田です。どうなさったんですか? まさか、なにかトラブルでも」 【日々姫】「(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――はい。あ、にぃに――んんっ、兄さんの携帯がつながらなくて――っ♪」 ;独り言、小声 →受話器に向かい直す 【日々姫】「にぃに、邪魔入らんよー、携帯きっといてくれたとかな……ふへへっ――あっ!? いえ、ごめんなさい。なんでもないです。 それで、あ! にぃにに変わります?」 【日々姫】「このままで……(呼吸音)(呼吸音)――ふんふん――海外のお客様が……(呼吸音)(呼吸音)――あー、なるほど。今日中につけなくなって――(呼吸音)(呼吸音)――! あ! はい、もちろんです! そうしていいなら泊まっちゃいます! 嬉しか! ありがとうございます!!」 【日々姫】「(呼吸音)――あ、ですね。うん。わたしデザイン息づまってるのもあるし――ブルートレイン鱈木(たらぎ)。ご近所過ぎていっかいもとまったことがなかったですし」 【日々姫】「――はい、ありがとうございます。かならずなにか……ちょっとでも持ちかえれるよう――(呼吸音)(呼吸音)――うふふっ、どうですね! 思いっきりに楽しんで! その楽しみから、なにかきっと見つけ出します!」 【日々姫】「はい。――はい。――(呼吸音)(呼吸音)――はい。ありがとうございました。失礼します」 【日々姫】「(電話切った安堵&自らを落ち着ける吐息)」 【日々姫】「にぃに、あのね? 電話、社長らで、外国からのお客様、来る予定だったのが飛行機の遅れで明日になっちゃうんだって」 【日々姫】「で、先様のご希望で予約しといたお宿。ブルートレイン鱈木がこのままだと当日キャンセルで完全に無駄になっちゃうから、よかったら泊まらないかっていうお話しで……(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)――よか!? よかと!? やったぁ!」 【日々姫】「うふふっ、そしたらお泊りの荷物だけまとめて、駅に行こ! 来賓のためのためだった特別ダイヤ。鱈木廃駅への臨時停車で、そのまま走らせてもらえるってゆー話やけん!!」 ;環境音 F.O.