■ track.8 貴方に出会えたこと…
「ごめんなさい…突然、お邪魔して。」
「あの…大丈夫、ですか? 驚かすつもりは、なかったのですが…」
「…私の顔に、何か?」
「そ、そんなに似ていますか? 貴方が存じ上げている方と…」
「そ、そうだったんですね…不思議なことも、あるんですね…。」
「あ、えっとそれで…実は、お願いが…。」
「急に訪ねて来た上で、失礼は承知の上なのですが…」
「その…」
「し、しばらくの間、私をここに置いてくださいませんか…?」
「私その…行く当てが、なくて…」
「突然こんなことをお願いしても、ご迷惑だとは思うのですが」
「村の人に相談した所、貴方なら、お力になってくれるかもしれない…と、
そう、伺いました。」
「も、もちろん、何もしないわけじゃありませんよっ。」
「家事は一通りできるように、学びま…あ、いえ…
身の回りのお世話や食事の用意だって、できます」。
「あ、そうだ。さっき村の人に、お野菜を分けてもらって…」
「ほら、立派なかぼちゃをいただきました。」
「かぼちゃの胡麻揚げ、得意料理なんです。その、想い出の味というか…」
「…あの、やっぱり、だめでしょうか?」
「いいんですか…本当に? ありがとう、ございます…っ。」
「あ…っ!」
「大丈夫ですか? 足取りがおぼつかないような…もしかして、お体が悪いんじゃ…?」
「そうですか…良かった…。」
「あの…」
「私と似ている女性、と言うのはどんな方だったんですか?」
「私よりも、まだ幼い…そう…ですか」
「何ヶ月も前に、姿を消してしまわれたんですね。」
「貴方は…また、その子に会いたいと、思っているんですか?」
「い、いえ…なんとなくそんな気がしたと、思って。えっと、その…。」
「どうして姿を消したのかは分かりませんが、貴方の事、ずっと忘れずにいると思います。」
「恨みとか、悲しみとは違う…」
「貴方に出会えたこと…とても、感謝していますよ。」