【耳かき×和楽器】
(コンコン)
失礼致します。
(引き戸)
予約時にご所望の特別のお癒やしに参りました。
お耳のお掃除でございますね。
ちなみに、
雪月花のお耳掃除は、
和楽器の演奏と共に行います。
もちろん、耳かきをしながらの演奏は不可能ですので、
広間で演奏を合わせて行います。
実は、和楽器の音色というのは、耳かきとの相性が抜群なのですよ。
まずは、お琴。
(手を叩く)
(琴曲:始)
数フレーズは耳にしたことがあっても、
なかなか一曲まるごと聴く機会はないのではないでしょうか。
改めて、じっくり耳を傾けてみてください。
十三本の弦から紡がれる、清涼感のあるゆるやかな旋律。
心がゆったりと、優雅で穏やかになっていきます。
(囁き)
お客様、
どうぞ、頭をこちらに。
膝枕でございます(照れつつ)。
本日、この時間はお客様のご予約になっております♪
(衣擦れSE)
(右耳)
お客様のご着座、確認致しました…。
それでは…早速、
始めさせていただきます。
あら…。
これはなかなかの積雪でございますね。
ですが、
雪かきなら、毎日やっておりますので…問題ございません…。
雪には、やわらかい新雪から、固く締まった雪まで、色々な雪があります。
除雪には、それに応じて楽に作業のできる道具を使う。
耳かきも同じです。
積もった耳垢に合わせて、適切に作業のできる耳かきを使います。
例えば、乾燥タイプなら、綿棒。ベビーオイルで少し湿らせて使うと良い感じにとれますし、
湿ったタイプなら、奥へ奥へと押し込まないように掻き出すタイプの耳かきがよいです。
一見すると、
お客様のは、日本人の85%がそうと言われる乾燥タイプですね。
ですので、こちらの黒色の綿棒を使います。
黒ですと掃除の成果がよく見えるので、大変捗(はかど)るのでございます。
それでは、失礼して…、
(耳かきBGM:始)
さくさく、さくさく。
強く擦りすぎないように、あくまでも軽く…。
さくさく、さくさく。
お耳の雪かきは順調、順調に進みます。
さくさく、さくさく。
綿棒をふるう度に、どんどん、どんどん減っていきます。
さくさく、さくさく。
さくさく、さくさく。
すっかり視界良好。
だいぶ雪がなくなってきましたね。
あとは、
そう…、
ひとかき…でしょうか。
あと、ひとかきで、すっきりさせることができそうです。
ひとかきだからこそ、
慎重に…、
せぇの…、
えい♪
取れましたっ。
ふふ。
お陰様で…無事にお掃除できました♪
あら…、
ご夕食の時のように良いお顔をされてますね。
ご満足いただけてるようで、なによりです。
ですが、
これで終わりではございません。
もう片方のお耳が残っております。
(囁き)
反対側を向いてくださいませ。
ようございます。
そして、反対側のお耳をする前に、
和楽器の演奏を変更いたします。
次は、お琴から…、
(手を叩く)
三味線です。
(三味線曲)
三味線とえいば、
津軽蛇味線が有名ですよね。
雪をも溶かす炎のように力強く奏でる印象がありますが、
このように、ゆったり、透き通る音を奏でることもできます。
三味線のもつ様々な表情の中の一つではあるのですが、
耳かきには、やはり、この音色。
(耳かきBGM:始)
実は、特別のお癒やしとして耳かきを始めたのは、
先代の女将…私の母からだったり致します。
人手がそれほどいらない新しいサービスが出来ないかと、色々模索した結果のようですよ。
初めてみたところ、意外にも好評で、
しかも、やってる方も楽しい。
これは、続けるしかないなと、思い至ったそうです。
私もそんな母の姿にはじめこそ、半信半疑だったのですが、
やってみましたら、意外に楽しく…。
耳かきというのは、される方はもちろん、する方も楽しいものなんですよね♪
(耳かき)
ちなみに、耳垢の味はどんな味がするかご存じですか?
あ、私が食べた事があるわけではありません(笑)。
あくまでも母から聞いたお話、とうことで。
甘い?
辛い?
それとも、何の味もしない?
どれも違います。
実は…、
苦いらしいです。
何故苦いかといいますと、昆虫などの侵入を防いでいるからだそうです。
なるほど、ですよねぇ。
人体の不思議。
ほんとう、うまく出来ています。
あぁ、
そんなうんちくを語っておりましたら、
お耳のほうは、すっかり綺麗になっておりました(笑)。
(息を強く吹き込む)
はい♪
大変、お疲れ様でした。
(手を叩く)
耳かきと和楽器のコラボはいかがでしたでしょうか…?
…すっきりされたお顔が全てを物語っておりますね。
無粋な質問…失礼いたしました(笑)。
ご満足いただけたようで、大変ようございます♪