【幽世の癒し:序】
(扉SE)
もともと、この花屋敷には数多の客人(まろうど)様を迎えてきた歴史があります。
私や母、祖母、その母の曾祖母…、来訪した全ての客人様をおもてなししてきました。
それは、先祖代々連綿と続く使命。
今や、おもてなしこそ、生きがいと言ってもいいかもしれません。
具体的にどうおもてなしするかのかと言いますと、
客人様が抱える、日々のストレスからの解放…。
即ち、癒しのおもてなしをさせていただきます。
人の心と体を知らず知らずのうちに蝕むのがストレス。
緊張、不安、悩みからくる心の疲れや、純粋に肉体の疲れからくるもの。
原因は人それぞれ、多岐にわたります。
貴方様にも…ございますね。
ストレスに苛(さいな)まれ、日々にお疲れなのがわかります。
癒やされたい、と心の底から思っておいでなのがわかります。
その思いは、叶います。
その願いは、現実になります。
(コップSE)
お屋敷の庭から摘んだお花のお茶になります。
お茶の香りは、自律神経に作用して心身をリラックス状態に導きますが、
見知らぬものばかりで緊張なさっておいでですし、喉もお渇きでしょう。
まずは、ひとくちどうぞ。
熱いのでお気をつけ下さい。
(ふぅふぅ、ずず…ごく…)
熱く、さっぱりとしたひとくちが、
じんわりと染み入っていきます。
(ふぅふぅ、ずず…ごく…)
喉から、染み入っていきます
乾きがほどけて、人心地付く。
(ふぅふぅ、ずず…ごくごく…)
お腹から、染み入っていきます
緊張がほどけて、人心地付く。
(ずず…ごくごく…)
体の中から、染み渡る。
不安がほどけて、人心地付く。
(ずず…ごくごく…ごく)
(お茶飲み:2分:BGM)
人として生きる。
人として生活する以上、
365日、いい気分のまま、過ごすことはありえません。
どうしても、悪い気分に苛まれる時があります。
そんな時、乱れた感情のまま一日を過ごそうとしても、良い方向に進むことはありません。
ですので、そんな感情に囚われず、気分を切り替えていくのが重要になります。
リラックスした気持ちで日々を迎え、過ごす。
そのために、心を落ち着かせていきます。
熱く、さっぱりとしたひとくちが、
体の中から、五体へ…。
頭、首、胸、手、足…余すとこなく染み渡る。
血液の流れは良くなり、
細胞の新陳代謝は促され、自律神経が安定する。
そうして…、
貴方様の体と心は、癒される。
ストレスがほどけて、人心地付きます。
(BGM:終)
(コップSE)
これは、癒しの始まり。
一服して落ち着いた今からが…本番になります。
リラックスした今からが、本番。
そのまま、何も考えずにお待ちください。
私が言葉によるイメージの世界に誘導致します。
それは、リラクセーションを深める、癒しのイメージ。
それは、リラクセーションを高める、ヒーリングの風景。
心と体だけでなく、魂をも癒やす癒しの原風景。
(鈴の音)
貴方様は、今、飛行船の中。
一般的な紡錘(ぼうすい)形の遊覧用飛行船に乗っております。
今から3つ数えると、係留マストに結ばれた太いロープが外されて、テイク・オフ。
地上から飛び立ちます。
3、
2、
1、
テイク・オフ。
風船につかまった体がふわっと浮かび上がるように、浮き上がる。
鳥になった気分とはまた違う、独特の浮遊感。
あっという間に100メートルほど上空へ。
そのまま、青空に向かって上昇を続けます。
そうして、300メートルの高みまで上昇。
全速前進。
安定した所で、窓を開けますね。
飛行機では絶対にありえないシチュエーションですが、飛行船なら可能です。
窓を上部にスライドさせるように、オープン。
日本晴れの澄んだ空気。
空を渡る風を頬に感じる。
実に気分爽快。
いい気持ち。
しばらく、それを味わいます。
なんともいえない開放感。
眼下に広がる街並み。
それを見下ろしてみましょう。
見覚えのある街並み。
それは貴方様が生まれた街。
様々な思い出の詰まった街。
喜怒哀楽、悲喜こもごも、懐かしい記憶に満たされています。
それを高みから見下ろしながらの空中散歩。
なんともいえない優越感。
日々の様々な悩みや問題もこの景色のように小さく見えます。
思うようにならないことへの不満。
自分だけがついてないと嘆く身勝手。
全ては、なんてことのない些細なことなのです。
それにしても、心地良い。
軽やかな浮遊感。
爽やかな風。
穏やかな日差し。
心が洗われる。
心が豊かになる。
心が満ち足りる。
不安が鎮まり、安心感で満ちていきます。
そんな貴方様を応援するように地平線をまたいで架かる大きな七色の虹。
ため息が出るほどに美しい。
心が和(な)ぐ。
心が和(なご)む。
心が和(やわ)らぐ。
不安が和らぎ、心が癒されていきます。
安らぎの風景。
それは、貴方様が思いもよらない豊かさや才能、資質、未来の可能性を見い出すきっかけ。
安らぎの光景。
それは、貴方様が望む、幸せな未来や自己実現、豊かな人生のためになる力。
頭の中に、まざまざと浮かび上がる。
私の言ったことが、心の中で反芻(はんすう)されます。