【常世の国の海宮】
(BGM)
(ナレーター調に)
常世(とこよ)。
それは、海の彼方にあるという国。
そこは、その昔ある釣り人が亀の背中に乗って訪れたという国。
日本書紀には、「蓬莱山(ほうらいさん)とは常世の国のことであり、不老不死の理想郷とされる世界である」。
と、記されている。
常世とは、誰もが憧れる理想郷。
空想上の、と言ってもいい理想郷。
(口語調に)
ですが、
それは実在致します。
嘘ではございません。
今、この私の声を耳にしている貴方……。
そう、貴方様の事でございます。
本日は、貴方様を常世の国にお招きしたく参りました。
突然のことで、驚かれるのも無理はないと思います。
ですが、貴方様があまりにも、古き愛しき人と似ておりますもので…。
居ても立ってもいられず…こうして声をお掛けした次第でございます。
勿論、貴方様の都合がつけばで構わないのですが……いかがでしょう?
……。
…喜んで?
そう言っていただけますか?!
嬉しい…っ。
私、久方ぶりに胸が熱くなりました……(しみじみ感じ入る)。
ありがとうございます。
本当にありがとうございます…っ。
では…、
その決心がお変わりになる前に…、
早速、お連れ致しますので、目をおつむりいただけますか?
……。
はい、結構です。
今から…私が「ひとつ」から、「とお」まで数を数えますが、耳元で「とお」と聞こえましたら、ふたたび、目をお開け下さい。
それでは、どうぞ、そのまま。
つむったままでお待ち下さいませ。
では、
(ゆっくり)
ひい、ふう、みい、よお、いつ、むう、なな、やあ、ここのつ、(囁き)とお。
はい。
目を…ゆっくり、ゆ(溜め)っくり、お開け下さいませ。