プロローグ
0:00 ……坊や。坊や。
0:06 ……久しぶりだな、坊や。こうして顔を合わすのはしばらくぶりじゃな。
0:13 わらわが居らぬ間も、よい子にしておったか? 寂しくて枕を濡らしたりはしなかったか?
0:22 ……くくっ、意地を張りおって。相も変わらず、素直でない勇者様よの。久々にわらわに会えて嬉しいくせにのぅ♪
0:37 構ってやれなかったから拗ねておるのか? ん?
0:43 仕方が無かろう、それも坊やの願いを叶えるためよ。
0:48 魔族と人間との和平……まったく、世界の平和とは、壮大なおねだりをしてくれるものよ。
0:59 ……だが案ずるな、魔王たるわらわの政治力と人心掌握術をもってすれば、人間の指導者どもをたぶらかすなど容易い事……
1:11 最期はみな、喜んで和平に同意してくれたぞ?
1:19 ……なんだ、その目は? 心配せんでも、ちゃんと平和裏に説得したわ。
1:24 わらわが、坊やの意に反するような事をしたことがあったか?
1:30 ……ふふふっ、そうよなぁ、沢山したっけなぁ♪
1:37 だが……坊やが本気で嫌がる事は、していないであろう?
1:45 ……そっぽを向きおって。認めてしまえばよかろうものを……♪
1:50 まあよい。とにかく、誓いは果たしたぞ。次は坊やの番だ。
1:59 約束であったよな……世界の平和と引き換えに、わらわのモノになると……。
2:08 これで未来永劫、坊やはわらわのモノじゃ……違える事は許さぬぞ?
2:17 ……ふふ、何を渋々という顔をしておる、本当はわらわのモノになれて嬉しいのであろう?
2:27 違うと言うなら、わらわの目を見てはっきり言うてみ? 目を逸らさずになぁ……♪
2:36 くくっ、まったく、愛い坊やよ。
2:42 ほれ、抱きしめるから大人しくしておれよ。流石にほうぼう駆け回って疲れたわ。……癒してくれるであろう?
2:55 ……ふふ、よい子だな、勇者は。
3:02 ……身を固くして、緊張しておるのか?
3:06 まったく、これから夫婦になるというのに、困ったものよ。まあ、そんな所も可愛いのだがな。
3:18 ……うん? どうした、目を丸くして? ……ああ、すまぬすまぬ。まだ言っておらなんだな?
3:28 わらわと坊やの婚約が決定したゆえ、まあひとつよろしく頼むぞ。
3:36 ……何故と言われても。異なる勢力同士が繋がるために、婚姻を結ぶのは普通の話であろう。
3:44 人間と魔族の和平の象徴として、勇者と魔王の結婚ほど分かりやすいものは無い。
3:53 しかも、坊やがわらわのモノになる、という約束も同時に果たせて、一挙両得というものではないか。
4:03 ……ははあ、わらわのモノになる、というのを、奴隷とか玩具とか、そういうイメージでおったのか?
4:14 ふふ……王とは奪うものだが、奪った以上のものを与えるのが、名君の器というもの。
4:25 このわらわの身をくれてやろうと言うのだ、もっと素直に喜べばどうだ?
4:32 それに、今さら何を言おうと無駄よ。各国の王、魔族の有力者、民衆への告知も済んでおる。
4:43 無論……坊やの母君へのご挨拶も済ませてきた所よ♪
4:48 坊やが魔王城で留守番しておる間、世界中その話で持ち切りだったのだぞ? 知らぬは本人ばかりよ。
4:58 だが、不満はあるまい? 坊やが望んだ世界平和のためなのだ。
5:05 ……それに、表向きは聞こえの良い英雄譚をねつ造するゆえ、案ずるでないぞ。
5:13 夫を立てるのがよき妻というもの。
5:16 坊やがわらわに惨敗したあげく、快楽責めで調教された変態マゾ勇者だという事実は、歴史の闇に葬り去ってやるゆえな……くくくっ♪
5:31 ……それとも、わらわとの結婚は嫌か? ん?
5:37 …………ふふ、困った顔をしおって。最近は、意地も張りきれんようになって来たなぁ。
5:46 まったく……愛い坊やよの……ふふっ♪