Track 1

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1.ラブラブサセテクダサイ

うー......うぅー......。んんん~......最近、アレだな......アレ。だんだん喋ることが......なくなってきた気がする。ここでぺちゃくちゃ語るのは、それだけ吐き出したいものが多いってこと。今は、悩み葛藤、一切合財、さようなら。どうしてかな。どうしてだろう。たぶん、貴方に出会ったからです。先輩とお前と、貴方です。おかげさまで、家守依知、超元気な日々を過ごしてます。なので今日は、いや今日も、大好きな先輩とお話しちゃいます。へへへ。......でもね、実はね、これが最後な気がするの。お前と私の物語。それも終章。長かったようで短かったな。しみったれた空気が最近苦手だから、明るくいかせてもらいたい。いえぇ~~い、いっくよ~~~ぅ。もしもし。どうも先輩。家守だよ。依知だよ。こんこんこんにちは。......あごめん、今日ちょっとテンション高いの。いや、休日だからとかそういうんじゃなくて。あのね私ね、先輩と出会って一年が経ってたことに気づいたんだ。ほら、恋人って記念日みたいなの祝うらしいじゃん。誕生日だ、年明けだ、ってやつ、先輩って気にしないひと?私は気にしないひとなんだけど、よくよく考えればイイモノだなって思った。記念日から次の記念日までに色々あったりなかったり。それを振り返るにはちょうどいい時期です。先輩との出会い、いつまでも忘れない。夏の終わりの放課後だったね。ノートの切れ端に、きったない字で電話番号書いたやつ渡してきてさ。好きです、お友達からお願いします。って。......ぶふッ。先輩、不器用かよ。くふふっ。今思うとッ......あっはは、おかしー。......ひゃー、怒った。怒んないでよ。確かにあの時は「なんだこいつ」程度にしか思ってなかったけどさ、でもね。あれが私の人生の転機だったんですよ。あれがあったから、私、こんなひとになっちゃったんですよ。いや違う。こんなひとになれたんですよ。感謝してます。むしろ感謝しかしてません。先輩がいなかったら私、家守はきっと、一生あのまま。なんてつまらん存在だったろう。呼吸してるだけの生き物だった。でも、今は......。ねえ先輩。私ね、お前のこと......愛してるぞ♪ふふふ......照れちゃってもう。「好き」を教えてくれたのも、先輩なんですよ。なんでこんな素敵な気持ちを知らなかったんだろう。十数年間、私、大損してました。くやしい。でも先輩がその分を埋めてくださったので、プラマイゼロ、むしろプラだな。......ねー、先輩。先輩は私と出会って、何が変わった?変化っていうのは、まさしくこうして振り返らないとさ、分からなかったりするものですよね。新しいものは自然と身にまとわりついて、日常になって、どれが当たり前で、どれが過去になったか、考えないと分からない。普段過ごしてるだけだとそれは、空気みたいなもの。目には見えないから、分からないね。妙なものが見える私にも、それだけは見えないから。だからこうして、たまに先輩と過去を振り返るのも、悪くない。......先輩は私の姿が見えるけど、家守依知という存在は、目に見えない形で先輩の中にいる。それだけで私、嬉しいよ。っと、話が逸れたけど、先輩、何か大きな変化とかありましたか。......、......そうか、それはよかった。私が、家守依知が、先輩や、お前の人生の軸のひとつになれてるなら、 それも私の生きる源になるよ。......うん、ありがとう。......あ......ねえ、先輩。一周年記念ってことで、ですね、あのですね。いややっぱりなんでもない。忘れて。忘れなさい。忘れろ。ぐぬ......抵抗されるとは。うぅ、まあ、切り出したのは私......だし、分かった、言います。言いますよ。私、その。......あのね、先輩と......、......イチャイチャ!......したいです。ほら、この前は......お前の部屋でゆっくりしようとしたけど、ああいう感じになっちゃったし。デート先も心霊スポットだったから、イチャイチャレベルがそこそこだったし。一回ぐらいは、その、めちゃんこラブラブしたくないですか。......マジ?いいの?お、おぅ。そうか、ハハ、なら、うん、よかった。急に押しかけたりしても大丈夫?......あは、嬉しい。ありがとう。じゃあ、あの、家に入るね。......え?うん、今、先輩の家の前にいます。そだよ。ずっとここで話してたよ。......声、震えてますよ。大丈夫?あそうか、一応ピンポーンしないとダメだね。失礼だね。じゃあ押すね。入っていいですか。実はさっきから暑くて暑くて、ぶっ倒れそうなんです。ふふふふ。お邪魔します。じゃまじゃまおじゃまのサプライズ。■こんにちは、先輩。......え、ありがとうございます。あの不器用な先輩が、私の服を褒めるとは。雨でも降るのではないでしょうか。......ん?どうしました?ほぁ、先輩のお母さまでしょうか。初めまして、家守依知と申します。あ......はい。先輩とは、お付き合いさせていただいております。え。そんな。私全然、そういうの言われないですから。あ、先輩には可愛い可愛い言われますけど。ハハ。えと、先輩とは同じ学校で、先輩のひとつ下で、......ああいえ、お構いなく。すみません、急に訪ねてしまって。私、先輩のこと大好きなので、どうしても会いたくなってしまったのです。......うぇ?なに、先輩、......部屋?あぅ、引っ張らないで。分かりました行きます。行きますから落ち着いて。すみませんお母さま、失礼します。先輩のお部屋、お邪魔します。じゃまじゃまおじゃま、二回目。やー......お母さまがいらっしゃるとは思わなかった。焦ったー。先輩もかなり焦ってたけど、どうしたの。あの様子だと、ご両親に私のこと、言ってなかったっぽいね?お母さま、かなりびっくりしてたよ。そういう話は、ふつう家族にしないもの?ふつうがよく分からん。ああでも、お優しいひとなんだな、って思いました。最初は戸惑ってたけど、若干ニヤニヤしてたし。......母がいる、って、いいね。いえ、なんでもないです。てか先輩、めっちゃ顔赤いですよ。息も荒いですよ。......まさか発情してるの?ダメですダメです。抑えてくださ......、......あ、なに、お母さまと私が鉢合わせしちゃったのが、顔を真っ赤にするほど恥ずかしかったってわけ?......ァハ。ハハ。先輩、かわい。まったく、なに可愛い子ぶってんですか。ねぇ、先輩ったら、家守をそんなキュンキュンさせてどうする気ですか。ねぇ~、せんぱぁ~い♪ん、なに?私さっき言いましたよね、ラブラブしたいって。だからこうして、先輩の腕に抱き着いてるんです。これはラブラブの一環であって、先輩をからかってるわけではないです。ぁは~、悔しそう。言い返せないの悔しいね、先輩悔しいね。ほらほら、立ち話もなんですから、座りましょうよ。ね。

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