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1.最悪の出会い

「んぇー、分かる分かる。勉強とかねー、何の為にしてるのって感じ。どうせ将来なんの役にも立たないでしょー、うんうん」「あっははは。ほんとそれな。あたしだってそだよ~。えー?マジ?ないない。......え?あ、ごめんね、今日はちょっとさ、うん、図書室寄ってく。......あはは、皆たまには本とか読みなよぉ~。んー、ばいばーい。また明日~。......、......」「あ、ヤビツさん。今日も?読書熱心だね~」「うん!ちょっと場所借りるね~」「どうぞ~。ほんとさ~、全然ひと来なくて退屈だよ。もぉお、ジャンケンで負けたからって、本当こんなのやるんじゃなかったなぁ~。ま、のびのびとスマホゲー出来るからいいけどね♪」「あはは~。図書委員も大変だねぇ......」......ッはァアッ。チッ。チッ、チッ。うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい。私に話しかけるな。この不真面目なクソ図書委員といい、さっきのクソクラスメイトといい、野猿どもが。何が分かる分かるだよ。お前に何が分かるっての。ぜんぶ悟ったような口で、あーあーあーあー馬鹿馬鹿しい。馬鹿どもの相手は本当、馬鹿馬鹿しい。あー気分悪い。吐きそう。世の中、クソが溢れすぎてる。......将来、未来、勉強の必要性、よくもまあ呑気に口に出来るもんだ。勉強の意味を一度でも考えた事があるのか?考える脳もないくせに。はあ。もうやめよ考えるのやめよ。本、本......うん、今日は太宰治にしよう。よし。気持ち切り替えて......私のお気に入りスペース......で、......、......え?おい。おいおいおいおいおいおい。誰だ。誰だよ。誰だ。そこに座ってるの。はァッ。最ッ悪、最低&クソクソクソクソ。どこぞの馬の骨の野郎が、私のいつもの居場所を奪いやがった。澄ました顔して本読みやがって。ふざけんな。あッ。こいつ、よく見たらクラスメイトの地味地味ぼっち野郎だ。いつも教室でぽつんと本読んでる根暗。なんで今日は図書室にいるんだ。ぶっ殺すぞ殺すぞ殺すぞ殺すぞぼっち。死ね死ね死ね死ね死ね。......はあッ。仕方ないな......。「あのぅ。ふふ。そこ、良い場所だよねぇ。本棚の陰......好きなんだ?......ああ、そうなの。あはは。あたしも一緒だよ~。ん?あ、そうそう!あたし、ヤビツ藍だよ。クラスメイトの。覚えててくれたのっ?うれしい~♪うん。私もいつもそこで読んでるんだ。落ち着くよねぇ、うんうん。え?ああいや!ほら、普段誰も使ってないからさ、びっくりしちゃって。んふ。自由に使っていいんだよ~、ゆったりくつろいでくださいな~」いいわけないだろ。そこは私の場所だ。私の場所を返せ。お前誰の許可もらって座ってるんだ。私の......私の場所を穢すな!「......え?いやマジ、いいってば。先にとったひとのモノだよ。あたしは他の場所で読むからさ~。あはは。え、だからさ、いいって言ってんじゃん。 ......、......?......なぁに?その目......あっ......、......へ?」......行った。行きやがった。あいつ今、なんて言った......?「取り繕うのは、疲れるよね」......だって?意味深な言葉と、全てを見透かすような眼差し......。......ざけんな。ざけんなざけんなざけんなざけんなざけんなざけんなざけんなざけんなざけんなざけんなざけんなざけんなざけんなざけんなざけんなざけんなざけんな。「あれっ?や、ヤビツさんどうしたの!?」......。「あ、ちょっといいかなぁ!ごめんね!あのさ、今のどういう意味かな?ごめんあたしバカだからさ、分かんなかったや。教えてくれるかな?......うぇ、や、約束なんて別に......、あとでも、ほらまだ、話終わってないし、ちょっと待って――」「へっ、な、なぁに?この紙。......、......ID?何の......って、あ!まッ、あのっ、話はまだ......あッ」何だ。何だ何だ、何なんだあの男は......。なぜどうしてなんで私が、こんな気持ちにならなきゃいけないんだ。私はただ本を読みたかっただけなのに......!あいつの絡みつくような言動、表情、何もかもが私を苛む。嘲笑う。「取り繕うのは疲れる」、どう解釈しても最悪の答えしか出てこない。つまりあいつは、私の、私が誰にもこぼした事のないアレを、知ってるって事。......ぁあ。あぁあッ。あり得ない。あっちゃいけない。そんな、そんな事は、絶対に。でも、もし誰かに......喋られでもしたら......、いや、あんな根暗男の言う事なんて、誰が聞くか?私なら絶対聞かない。それなら大丈夫か?いやダメだ。私の平穏を崩される可能性が少しでもあるなら。......クソッ。この紙は......あいつにもらったこれは、きっと、無料通話アプリのID。確かに通話なら、周りの目を気にしなくて済む。でも、でも......。ウグ......。こんな事で胃を痛めるなんて、最ッ悪......。この紙は、まるで呪いだ。私の口で、あいつを言いくるめるしかない。登録してやる......。......チッ......。一応、あいつの本名か。悪戯だったらマジでぶっ殺すところだ。......よし、通話。......出ろ、出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ......、出ろッ!

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