Track 1

Next Track Back

1.僕の言う事は何でも聞くの。

......あ、え、ええっと......もしもし。ん......僕。咲雪だよ。あー、うん、久しぶり。う、うるさいな。こういうの慣れてないんだよ......。電話ってさ、変な感じするじゃん。なんか、こう、顔が見えないから......。いやお兄さんとはさ、ドア越しに会話してたけど......それとは違うっていうか。......あーそうですよ、コミュ障ですコミュ障!いちいちやかましいんだよ......。はあッ。うっざ。むっかつくなぁ相変わらず。今のお兄さんの表情、当ててやろうか。きっしょい、きっもいにやけ面。......当たりでしょ?あ?なに驚いてんの。分かるよそんなの。だって、僕だよ?......、......なに嬉しそうにしてんだよきもいな。え?用?いや、別に......。ほら、暇なんだろうなあって思ってさ。......それも当たりでしょ?土日はド暇のド変態お兄さんには、野暮用すら存在しない事くらい分かってるさ。だって、......友達いないもんね(笑)しかもさ、月曜休みで三連休だよ?初日すらお出かけしないの?ねえ?......はあ?同じじゃないよ同じじゃ!一緒にすんじゃねえよ馬鹿。知らなかった?これでも僕、すっごい忙しいんだぞ。いや学校じゃないよ。そんなくだらないところ行ってる余裕ないの。......ああッ?何が年中夏休みだよ。喧嘩売ってんの?はっ倒すよ?馬乗りになるよ?身動きできないお兄さんを好き放題するよ?いいの?はしゃぐなきもい!きもいきもいきもいいいッ!男に馬乗りされて喜ぶ異常者、世界中どこ探したってあんただけだ!あーもう。あれから少しは成長したかと思ったけど、ほんっと相変わらずだね。僕は今ね、猛勉強中なわけですよ。ふっふっふ。何の勉強かって?聞きたい?聞きたそうだね?どうしよっかなぁ。教えてあげようかな。そんじゃあお兄さん、僕の下僕になって?そしたら教えたげる。下僕は下僕。僕の言う事は何でも聞くの。聞かなきゃダメなの。いい?......即決だね。なんでそんなハツラツとした声が出るんだよ......。仕方ないなぁ~もう。僕には目標が二つあってね。一つめが~、その勉強の話なんだけど、ふふふ。えっとね~......、......は。え、おい、何で先に答え言っちゃうの!?いやまずどうして知ってるの?え、え?誰に聞いた?どして僕が車の勉強してるって――、てか知ってたなら下僕のくだり要らなくね?なにお兄さん、ひょっとして僕のに......なりたかったの?ひええぁ前回以上にキモゲージ振り切れてる!鳥肌立ってきた......。まあそれは置いといて......。誰がそんな......この事、言ってないのに。......愛?誰だよそれ。愛......愛......?ああ、黒崎愛?愛お姉さんか。はあッ......あのひとおどおどしてるくせに、口だけは達者なんだなぁ......。地味だしぼっちそうな奴だけど、お兄さんとも関わりあったんだ。ふうん。まあ、いいや。そういうわけだから、うん。ねえ......感想は?いや、その。学校行かずに車の勉強って......おかしいかな。......そう。よかった。......え、理由?んん、まあ、あれだよあれ。運転手......になりたいんだ。タクシーでもバスでも、教習所の職員でも......。とにかく、誰かを乗せたい。乗せて走りたい。それが目標だよ。言っとくけど、本気だからね。ひとの命あずかって運転するんだから、当然でしょ。お兄さんみたいなさ、ちゃらんぽらんに仕事してる奴とは違うんだよっ。......ククッ。怒った?ねえ怒った? 2いや「怒ってないよ♡」じゃねえよ。なに高い声出してんのきもい。僕、お兄さんには負けないよ。ゲームでも僕が強いんだ。リアルでだって負けてたまるかッ。それが二つ目の目標!お兄さんよりバリバリ仕事するひとになって、車を買って、お兄さんを助手席に座らせてやるんだ。お兄さんは僕の下僕だもんね?言う事聞かなきゃダメだよね~?自分で望んでそうなったんだもん。あーあ、どうなっても知~らね!バーカ。......で、さっそくひとつ命令を聞いてもらいたいんだけどさ。お兄さんって、車持ってるの?......ああそう。じゃあ、ほら、......乗せてよ。......あ?嘘だ絶対聞こえてただろ!このッ......二度も言わせんなよ。......うぐぐぐぐ。隣にッ!乗せてよッ!あああああうぜえうぜえうぜえ何だあんたマジで!本当に下僕!?もっとへりくだれ、這いつくばれ!もっと僕に慎ましく接しろよおおおおおおおおッ――

Next Track Back