Track 4

4.時間の壁を越えたくて

どういう事かな。......ああ、ごめんね。唐突すぎた。あまりに待ち遠しくてさ。でも、よく考えなくても分かるでしょ?どうして私が電話をかけたのか。知らないとは言わせないよ。言ったら許さない。............分からないの?本当に?じゃあ教えてあげるよ。......。て・ん・こ・う・せ・い・さん。そう。白水鳥子(しろみずとりこ)さん。すっごく礼儀正しくて、とっても美人で......沢田さんや磯貝さんよりも気品があって、目が綺麗で。ねえ。知ってるよ。君が放課後、白水さんとなかよさそーうに話してたの。だってほら、今日は君がバイトの日だったから。バイト先と帰る方向真逆だし、一緒に帰れないからさ、声を一言かけようと思ったら......教室に君がいなくて。下駄箱でさ......君と白水さんが......。......ねえ。聞いてる?私ね。君がいなくなった後、お話したんだよ。白水さんと。話しかけられた......っていうのが正しいかな。......君の幼馴染なんだってね。十年ぶりの再会だって聞いたよ。小さい頃お引っ越しして、ご両親の都合でこっちに戻ってきたら、転校先に君がいた。すごいね。奇跡みたい。いや、それは別に良いよ。何もおかしい事なんてないし、私だってそれくらいじゃ怒らないもん。問題はね......?白水さんは君の......許嫁......って......言ってた。幼い頃からご両親同士の確約があったんだって?そしてそれは、彼女も君も......了承してた、と。昔も、今も。......。............忘れられない。あの時の白水さんの微笑み......。「あのひとは私のものですよ」って言葉。なんで......。......ねえどういう事?私は?君にとっては私は、何......?何なのかなぁ......?君が私にしてくれたプロポーズは............ん......?でたらめって?何が......?......えっ。許嫁の約束が......?......そんなの、分からないじゃん。あのひとが許嫁じゃないってどうやって証明するのさ。 うふふふ。そんなに慌てなくても大丈夫だよ。君は何も悪くないもん。悪いのは全部、......あのひとだから。あのひとだけだから......。幼い頃のおぼろげな記憶を理由に、私から君を奪った......。絶対に......許さない。......許さない......!んー?ねえ君、声が震えてるよ......?うふ......あのね、私は神様でも仏様でもないんだよ。人間なの。嫉妬する心を持った、人間。だから......私......、あのひとを......あのひとを............あのひとをッ!......。......。......ぷっ。ふふっ、あははははははは!ごめんごめん。ちょっとからかっただけだよ。びっくりした?いやいや。いくら私がどんくさいって言ってもさ、あの言葉が嘘って事くらいは分かるよ。だって許嫁なんて......昔の約束はともかく、今の君がそんなの承諾するわけないもん。それに君のご両親だって、私の事は知ってるって言ってたもんね。白水さんと婚約してるんだったら、私とお付き合いなんてしないでしょ?あははは。たまには君を驚かせちゃおうと思って、ちょっぴり意地悪してみました♪ごめんね、あははは。いつも私に意地悪するからこういう事になるんだからね。ふふふ。私の演技、すごかったでしょ?でもこんな事、君を信頼してるからできるんだよ?君以外のひとになんて、怖くてできないしやりたくないもん。君はきっと最後に笑ってくれると思ったから......やっちゃった♪て、てへぺろ♪......あ、でも......白水さんってさ。あんなに清楚な雰囲気なのに、平気で嘘をつくんだね。ひどいひとだよ、まったく。ひとは見かけによらないなぁ。......きっとあのひと、君の事を好きに違いないよ......。隙あらば君を私から奪い取るつもりなんだ。要注意人物、白水鳥子......と。しばらくは監視対象だね......。というより、私より可愛いひとはみんな要注意人物!ああっ。でもそれって......世界中の女のひと、全員私の監視対象になっちゃう。そんなに見切れないよぉ。うう、でも......君が私以外の子に目移りしないように......ちゃぁんと見張ってるからね?うふふふ♪