⑨果ての際
//正面 距離普通 (ナレーション2/声、少し低め)
露天風呂の敷地、また旅館の敷地をさらに超えた崖の下……。
さちえは、遺体として見つかった……。
他の洗面道具や荷物も遺体の近くに落ちていた……。
転落した衝撃なのだろうか、右腕がもぎれて悲惨な状態であった……。
他に目立った外傷はなかった……。
不思議な事に、脱衣所に荷物が無かったことを踏まえると、
露天風呂に入ることなく、荷物を持ったまま露天風呂の柵、
そして旅館の柵を乗り越えたことになる。
この件は、自殺として処理された。
勿論、さちえが自殺なんかするはずもない……。
やはり、何か曰く付きとして、祟られてしまったのだろうか……。
悔やんでも、悔やみきれない……。
…
……
旅館を立つ際、その足取りは重く、苦しみや悲しみだけが、重くのしかかる……。
旅館を去ってから、その悲しみに包まれた姿は、家路につく事はなかった……。
途中にある大きな湖の観光橋で、その車は見つかった……。
人の姿はそこにはなく…後日、湖にて水死体として発見された……。
全国のニュースで話題になるほどの…事故だった……。
当時、怪奇現象や心霊などの番組も多く、様々な形で取り上げられた。
その後も、この部屋では、数多くのケガや事故が、後を絶たず、
重く受け止めた旅館は、その部屋を、永遠に貸し出すことは無かった。
そして……
数十年後、温泉地を震源とした地震が発生。
観光業に大きな打撃を与えて、旅館は廃業しました。
旅館の解体作業の際、地中より白骨化した遺体を発見。
遺体には右腕が無い状態で見つかり、
さらに右腕はそこから数十メートル離れた場所で発見されました。
奇しくも、その遺体を発見した場所は、かつて上遠野さちえ達が宿泊した部屋の下で、
さらに右腕が見つかったのは女湯露天風呂付近だったそうです。
何かしらの力が働いて、様々な事故を招いていたのかもしれません……。
この話を聞いた時には、背筋が凍るような思いでした……。
//正面 距離普通 (ナレーション1/テンション低め)
今宵はお時間いただきまして、誠にありがとうございます。
いかがでしたでしょうか。
有名な温泉観光地の旅館で起きた、ホラーかつ、不思議で怖いお話は……。
もしかしたら、何かの力が働いて、不思議な事を起こしていたのかもしれませんね……。
そして…今……あなたの背後に、何者かが、いらっしゃるかもしれません……。