Track 8

⑧消息不明 

//正面 距離普通 (ナレーション2/声少し低め) 慌てた様子を見た、スタッフがこちらにやって来る。 「どうなされましたか?」 落ち着きを抑えきれない中、ひと呼吸して、さちえが居なくなった状況を説明した。 話を聞いた女性スタッフが、確認の為に、露天風呂へ向かう。 残された男性スタッフは、あの神妙な面持ちで会釈をしたスタッフだった。 スタッフはこう答えた。 「確か、24時の定期巡回の時間でしたのでハッキリと覚えてます。 女性のお客様(さちえ)が露天風呂はこちらですか?と尋ねたので、フロントを右手に真っすぐ行ったところです。と答えてお客様を見送りました。 その時間帯にお客様がお風呂に入るのも珍しくはないのですが、本日は誰も見かけなかったので、ハッキリと思えてます。」 そこでさらに、男性スタッフは、 「男性のお客様(自分)がお戻りの際、お連れの客様(さちえ)が見当たらないので、 まだ、長風呂なのかと思いました。それまでは露天風呂へ通じるフロント前は誰も通っていませんので」と。 なので、少しばかり不思議そうな、神妙な面持ちで会釈したのだと……。 話し終えたところで女性スタッフが慌てて戻ってきた……。 「あの…脱衣所にも、露天風呂にも、誰もいらっしゃいません……」 女性スタッフはさらに、 「おかしな事に、浴衣や着替え類の荷物も見当たらないのです……」 動揺を隠し切れない女性スタッフ……。 男性スタッフは、 「今すぐ、女将に連絡します……」 そう答えると、フロント奥の事務所へと入っていった……。 連絡を終えて戻ったスタッフから、もう一度探そうとの事で、3人で女露天風呂へ向かった。 お客様は誰一人もいなく、脱衣所もカラで、女露天風呂も、くまなく探したが、誰も居なかった。 途中で、女将が合流し、警察に連絡、他のスタッフも呼び出し、館内を探し回ったが見つける事が出来ずにいた……。 女将もただただ、申し訳けございません、すみません。と、ひたすら頭を下げていた。 必死だった……。皆が消えたお客様(さちえ)を探すために必死だった……。 あの時、露天風呂へ向かうとき、一緒に……、一緒について行く事が出来ていれば……。 … …… //BGM 時計 開始 無情にも時は過ぎ、ロビーで警察より聞き取りをしていた時だった……。 //BGM 時計 停止 「み、み、みつ、見つかりました!見つかりました!!」 一人の警察官が声を荒げてロビーに入ってきた……。 時刻は朝方、5時を回ろうとしていた……。