03
さ、次は耳かきするわね…と、本当なら、そこの枕を頭にして、寝転んでもらうんだけど…今日は私、浴衣だから裾が自由にならないのよ。
ってわけで、特別に…んしょ、ベッドにあがって…はい、いいわ。
ん、何って顔ね、心外よ…君、こう正座して膝を打って呼んでたら、間違いなく「膝枕してあげる」のサインなわけよ。
なら応じる。
そ、それに、今回は特別だから…たまたまよ、私が浴衣だから…いつもこうとはいかないんだから。
さぁどうするの?
ん、賢い選択よ。
横向きじゃなくって、私と一文字になるように…ええと、こうよ。
頭を足の谷間に、んしょっと。
はい、いらっしゃい。
で、どうかしら?
頭のおさまりは?
夏だから、人とくっつくの、暑いだけって思ってる?
なら、今日はじっくり夏と人の違いを教えてあげるわ!
さて…私を見上げてたい気持ちはわかるけど、それじゃ耳かき出来ないから、どっちかに向いてもらえる?
ん、そっちからね、はじめるわ♪
ああ、耳かき棒は帯にはさんでおいたのよ。君専用、新品だけど、耳あたりいいように磨いて整えてあるから、安心して。
じゃあいくわよ。
んっ
んん
んはっ
ちょっと耳たぶひっぱるけど、我慢ね。
ふーっ、ふぅ~ふぅふぅ。
ふぅ~~っ。
んっ
あっ
んっ
んしょ
あまり、顔下向きすぎると耳が見えなくなっちゃうわ。こうよ。
ふぅふぅ、ふぅ~。
ふぅ~ふぅ~。
風鈴、鉄器なのよ。ガラスのともまた違う、凜とした澄んだ音色でしょ?
お土産なんだけど、私、お気に入りなの。
んっ
んしょ
んんっ
んあっ
ふぅ~ふぅふぅ、ふぅ~。
ふぅ~ふぅ、ふぅ~。
君は、どんな夏の声が好き?
花火? かき氷? 夕立? セミ?
どれもいいわよね。
耳を澄ませてみても、ほら、暑いばかりじゃないでしょ。
んっ
んんっ
んあっ
んふっ
ふぅ~、ふぅふぅ、ふう~。
ふぅうう~~っ♪
ん、こっちの耳は綺麗に出来たわ。
そ、今度は逆。
ご耳愛は、まだまだ続くわよ。