00.彼女の名前は天条院麗華
どうぞ、お入りになって下さい。
朝も早くから私に何の御用かしら…あら、お見かけしない顔ですね。
もしかしてあなたが今日から勤めることになった人ですか?
ええ、話は聞いています。
私は天条院麗華。
天条院財閥総帥の子にして、その跡取りとなる者です。
ふふっ、緊張しているのが顔に出てしまっていますよ?
それにその顔…昨晩はよく眠れなかったのかしら?
安心して下さい。
取って食べたりするようなことはしませんから、もう少しだけ落ち着いて下さい。
そんな顔をされては、あなたをパーティーにも連れていけません。
あら、これは聞いてないのかしら。
あなたは今日付けで、お付きの使用人になるんですよ。
こら、また変な顔をしてますよ?
これから主人となる人間の前で、何度も変な顔をしてはダメですよ。
よろしいですか?
…なんとも自信のない返事ですね。
もう少しはっきりと物を言って下さい。
…確かに、私は天条院という、とても大きな家系の者。
しかしあなたと私では、主人と使用人という間柄であるだけです。
はい。それではもう一度繰り返しますよ。
あなたは私の使用人です。異論はありませんね?
はい、とてもいい返事です。
晴れてあなたは、私の使用人です。
ふふっ、もう下がっていいですよ。
あなたには、あなたの仕事があるはずですから。