00.プロローグ.妹がお姉ちゃんに!?
ふぅ…ただいま~。
マジ今日疲れた~。
先輩には怒られるし、友達には約束破られるし。
大人は「社会に出てから大変」なんて言うけど、ガッコはガッコで辛いだっつーの。
はぁ、ま、いいんだけどさ。
…って、あ、お兄ちゃんいたんだ。
平日のこの時間にいるって…暇そうでいいわねー。
毎日毎日…。
はぁ、なんつーか癒しが欲しいっ。
え? お茶?
は? いい、いらない。
いや、自分で淹れるから。お兄ちゃんに借とか作りたくないし。
ていうか下心ありあり?
変に優しくされるとキモい。
この時間のテレビ,ニュースばっかなんだよね。
私に合わせて番組作ってよ。政治とかぶっちゃけ誰も興味ないっしょ。
はぁ~。
あ゛~。癒し~。癒し~。
ていうか、なんで私には兄がいるのよ。
クラスのみんなは『お兄ちゃん欲しかったー』とか言うけどさ、欲しいならあげる、つーの。
いや、あえて聞こえるように言ってるに決まってんじゃん。
まぁお兄ちゃんがダメダメすぎるってものもちろんあるけど、例えイケメンで頭よくて優しくてもなんか違う気がするのよ。
やっぱさー、弟っしょ!
可愛い顔して、幼くて、お姉ちゃんがいないと何にも出来ない可愛い弟!
こうさー、ぎゅーっとして、ぎゅーっとして頭撫でたい!
それでお姉ちゃん、かっこ私…はちっちゃくって可愛い弟に流行りの香水とかつけてくんくんするの!
やば!お姉ちゃん、テンションあがってきちゃった!
それでそれで、いつか女装とかさせて「アッ君」は顔真っ赤にさせちゃって、そのまま街に出て。
ちなみに「アッ君」ていうのは架空の弟の名前ね!
みんながそのあっ君を見て可愛い可愛いって言ってて、お姉ちゃん…かっこ私は…その横でニヤニヤしてるの!
キャーー!
はぁ。
私にいるのは弟じゃなくてお兄ちゃん…。
無いものねだりじゃないわ。本当に弟が欲しいの。
あ…!そうだ。
ねぇお兄ちゃん?可愛い可愛い妹のぉ、頼み事聞いてくれるぅ?
おねがぁい?
ほんとっ!? ありがとーお兄ちゃん大好き!
じゃあ~、このジュース。飲んで?
あ、怪しくないよー!
お、美味しいジュースらしくて、お小遣い奮発して、お、お兄ちゃんのために買ってきたんだから!
ね?だからいいでしょ?
飲んでみて?
うん、そうそう。ゴクゴクって一気に一気に。
どう?美味しい?
美味しくはない?
お、おかしいなぁ。美味しいって書いてあったから買ってきたんだけどなぁ。
あれ?お兄ちゃん、どうしたん?具合悪い?
マジでやばい系のクスr…じゃなくてジュースだったのかな?
急に強烈な眠気?
いや、よく分んないけど、寝るなら部屋戻ってよ。こんなとこでお兄ちゃんの寝顔とか見たくないし。
え、無理?
大した距離じゃないじゃん。それにあたしテレビ見たいし、二階で寝た方が絶対いいって。
あーもー、寝ないでってばー!
あ、起きた…。
うわっ、マジだったんだ。声も変わってるし。
何が起きたって、何か気付かない?
身体が軽くて…目線もなんか下がってるっしょ?
服もダボダボ…。
はい、鏡。
やっと気づいたみたいね。
いやー、今日の帰り道に道端が怪しいおばあさんが若返り薬とか胡散臭いの売ってて、騙されたと思って買ってみたの。
自分飲んで死んじゃったら嫌だし、まずはお兄ちゃんに飲ませてみて、上手く行ったらまた買えばとか思ってたら…
…まぁびっくり。
一週間もすれば治るんじゃない?知らないけど。
ていうか、そんなことよりさ…
めっさ可愛んですけど!!
お兄ちゃんというより弟って感じ!!
理想の弟って感じ!
やば!
見るからに歳も下がってる感じだし、これはお兄ちゃんじゃなくて弟よ!
やったぁ!ついに念願の弟を手に入れたわ!
妄想が膨んじゃう!テンション上がっちゃう!
あ、これから「アッ君」て呼ぶから。いい?
ていうか私がお姉ちゃんな訳だし、許可なんて取る必要なんてないのよね。
弟はお姉ちゃんの言うことちゃんと聞くの。
わかった?
返事!
いい返事ね。
いい子はお姉ちゃん好きだからね。