トラック1:腹ペコ彫刻家見参!
【彫刻家】
「や、やあ……こん……にちは……。
あはは、1週間ぶり……だね……」
【彫刻家】
「実は先日……協会から……差し入れをもらったので……
いつも礼になってるから……キミにと思ってね……」
【彫刻家】
「はい……これ。生菓子の……詰め合わせだって……」
【彫刻家】
「本当は……すぐに渡そうと思ったんだけどね……
もらったあと、すぐ依頼が……入ってね……」
【彫刻家】
「……とりあえず作業が一段落ついたから……持ってきたけど……
気付いたら……こんな時間になってしまっていた……」
【彫刻家】
「賞味期限は……大丈夫だと思う……」
【彫刻家】
「でもいつもおすそ分けをもらってるキミに……
こんな恩を仇を返すような真似をして……すまない……」
【彫刻家】
「……ん?私の顔をじっと見て……どうしたんだい?
え? 私が……やつれてる……?」
【彫刻家】
「あはは……大丈夫、大丈夫……一週間ぐらい
ご飯を……抜いたところで……人間は水さえ飲めば……」
:SE:腹の虫が鳴る音 中
【彫刻家】
「(5秒ほど息遣い)」
【彫刻家】
「……い、いや……気のせいだ。
人間、死ぬ気で……いけば……なんとかなる……」
:SE:腹の虫が鳴る音 強
【彫刻家】
「…………気のせい、気のせいだよ……」
【彫刻家】
「……ん? これを食べれば……よかったのに、か……?」
【彫刻家】
「いや……これを食べてしまったら……
私は……恩知らずになる……」
【彫刻家】
「そんな薄情なこと……アーティストとして……
人ととして……恥ともいえる……」
:SE:腹の虫が鳴る音 強
【彫刻家】
「うっ……なんとも格好がつかない……。
なんで……こんなときに限って……お腹がなるのかな……」
;SE:2/右上→1/正面 足音
;SE:リスナー身じろぐ音
【彫刻家】
「……ちょっ、腕を引っ張って……どうしたんだい?」
【彫刻家】
「なに? こんなことだろうと……予測していた?
だから……食べて行ってください……?」
【彫刻家】
「いや……それは流石に。もう何度も……」
:SE:腹の虫が鳴る音 強
【彫刻家】
「うぐ~……なんとも情けなさない……」
【彫刻家】
「……そんな! 困ったときはお互い様なんて……
私が一方的に貰っていては……お互い様もなにもないだろう……」
【彫刻家】
「……しかし、こんな状態になるなら……もっと
早くその生菓子も渡せば、格好がついたのだろうに……」
【彫刻家】
「……その、今日も含めていつもキミには……
世話になりっぱなしだ……」
【彫刻家】
「私が出来るもので……キミがして欲しいことは…………」
【彫刻家】
「……ん?」
【彫刻家】
「なぁ、キミ? 私の目が……曇ってなければ……
玄関に置いてる……その木材と道具は……」
:1/接近 ささやき
【彫刻家】
「彫刻刀……だよね……
もしかして……彫刻に興味があるのかい?」
;声優さんへ:空腹ですが、同じ仲間を見つけて喜び早口になる演技をお願いします
;1/通常
【彫刻家】
「いやはや、まさかまさか身近に同志がいたとは!!
これは彫刻業界も明るくなりそうだ」
;リスナー身じろぐ音
【彫刻家】
「……おや、そうじゃないのか……?
ふむ……夜な夜な私が彫刻してる音が心地良くて……
睡眠のお供として使ってる?」
【彫刻家】
「だから、私にご飯を与えくれてるのも……そのお礼……」
【彫刻家】
「それは……お礼になるのか……
それほどのようなものじゃないと思うけど……」
【彫刻家】
「……おや、急に携帯を取り出してなにか……」
:SE:スマホに録音した彫刻の音を再生
【彫刻家】
「……この音……うん、たしかに私の彫る音だね。
ふむふむ……これを使って寝ている……か」
【彫刻家】
「……そうだったのか? でも、どうして
私の彫る音と……キミが持つその木材に関係が?」
【彫刻家】
「いや、わかった……私の音を自分でも出してみたいが……
なかなかに、うまくできないと……いったところかな?」
;リスナー身じろぐ音
【彫刻家】
「……なら……私がそのコツを教えてあげようか?
いや、この際、彫る楽しさも……教えてあげよう……」
【彫刻家】
「キミには……いつも、して……もらってばかりだし、
これぐらいのことは……させてもらうよ……」
【彫刻家】
「それに……彫刻界は年々人手不足に……悩まされてる……
きっかけはなんであれ、キミのような……若者はとにかく欲しいんだ……」
【彫刻家】
「基本を覚える必要はあるけど……慣れれば、あとは好きに彫ればいい。
よし、そうと決まれば早速、私の部屋へ……」
:SE:腹の虫が鳴る音 強
【彫刻家】
「…………すまない。まずはご飯を頂いてもいいかな……」