7 : 快 楽 の そ の 先 に 待 つ 真 実 ( 会 話 )
7:快楽のその先に待つ真実(オフィス/夜)
(位置5/有声音/小声)
あぁ…、凄く気持ちよかったです…♪
もしよろしければ…、またしてくれませんか…?
それとも…、私みたいな女性は嫌いですか…?
そう…、よかった…♪
あなたは罪な人です…。
だって…、こんなにもあなたを求めてしまうんですもの…。
いいえ…、違う…。
罪深いのは私の方…。
実は…、あのマッチングアプリ…。
ダミーアプリなんです…。
つまり…、存在しないアプリ…、という事です…。
やはり…、キョトンとしていますね…。
あのアプリは…、私が作ったものなんです…。
正確には作らせた…、と言った方いいですね…。
あれはそう…、半年くらい前でした…。
社内で噂になっている…、ルーキーが居るって…。
最初はそんな噂話…、気にも留めなかった…。
だって父の会社で働く社員さんですもの…。
優秀でないと困ります…。
だけどその考えは覆った…。
そう…。
偶然あなたのプレゼンを聞くまでは…。
あなた覚えています…?
そう。
開発中の建築材に不十分な所があるって…、プレゼンしていたでしょう…?
あの場に私も居たんです…。
建築材の耐久性について欠陥があるって…、そう訴えかけていた…。
その場に居た誰もが…、でっち上げだって言って聞かなかった…。
あぁいう話題って誰しも目を背けたくなるもの…。
でもあなたは退かなかった…。
このままでは重大な事故に繋がるって…。
一対多数の状況下で…、あなたの目は…、火が消えるどころか輝いていた…。
あぁ…、この人は本気で会社の未来とお取引先…、それにお客さんの事を考えているんだって…。
そういう熱を感じた…。
それで私…、プレゼン中なのに…、その…、濡れてしまって…。
そう…、孤軍奮闘するあなたに…、興奮してしまったんです…。
言ってみれば一目惚れでした…。
ううん…、もうそういう程度ではありませんでした…。
あなたに興味がある…。
あなたに近付きたい…。
あなたが欲しい…。
なら手に入れてしまえばいいって…。
その後は簡単でした…。
あなたの同僚に、それとなくあのアプリを勧めました…。
気に入ったら他の社員さんにも勧めて下さい、とも。
私は待ちました…。
その時が来るのを…。
数日後、あなたが釣れました…。
登録時に本名を入力しましたよね…?
それで間違いない、あなただって。
嬉しくて私、真っ先にあなたに全力でアプローチしました。
でも私一人だけだと怪しまれるかなと思い、他のアカウントも作って、成り済ましてあなたに色々と質問したりしていました。
そう、他の女性と思っていたのは全部私です。
あなたは他の女性にどう反応するんだろう…、と思ってしまい不安でした。
でもあなたったら、アプリ内でも凄く真面目で、隙がない人だなって思いましたっけ。
アプリでの会話が進むに連れ、騙している事を段々と後ろめたくなってしまって…。
それで実際に会う事を提案したんです。
真面目なあなたですから、誘っても断られるんじゃないか…、そう思っていました。
でも違った。
あなたは快くオーケーしてくれました。
それがどれだけ嬉しかったか…。
それに…、返事を聞いた時からずっと…、身体が疼いてしまって…。
毎日「待て」をされている様で…、中々眠れない日もありました…。
待ちに待った当日…。
予めアプリで、あのお店を予約してくれる様に誘導した。
ええ、これも計算通りでした。
ですからオーナーに話しを通して貸し切りに…。
お店にお客さんは私達二人きり…。
もう我慢出来なかった…。
そう…、私はあの日、禁断の果実を口にしてしまったんです…。
これが真実。
全貌です…。
こんな事までしてあなたに近付いて…、私の事、嫌いになりましたか…?
そう…ですか…。
あなたはどこまでも真面目で…、優しいんですね…。
そんなあなただからこそ…、好きになったんです。
はい、何でしょう…?
えぇ…、えぇ…。
えっ…?
ダミーアプリだと…、気付いていた…?
嘘はやめて下さい…。
冗談にしては突飛過ぎます…。
え…?
はい、続きですか…。
えぇ…、えぇ…。
なっ…!要するに、ここに赴く前は、アプリ開発に従事していたって事ですか…?
嘘…。
そんな…、だってあなたの経歴も調べましたが、そんな事、どこにも書かれていませんでしたよ…?
機密事項…。
もしかして、この会社よりもっと上の…、例えば政府の機関に居た…とか…?
ですよね…。
言えないですよね…。
でもどうして…。
どうしてダミーだと分かっていて、アプリをインストールしたんですか…?
えっ…。
父からの依頼…?
な、何を言っているんです…?
何故父が出てくるんですか…?
(閃いたという様に)はっ!まさか…、父が「私が婚約相手を連れてくる」と言っていたのが…、あなた…?
ああ…、嘘…。
眩暈がしてきました…。
え、ではここまで父のシナリオ通りだった…、という事ですか…?
はあ…。
ではこれまであなたを掌握(しょうあく)していると思っていたのは、すべて思い過ごしだったんですね…。
はい…、やられました…。
はぁ…。
でも、あなたが好き、というのは事実です。
これは真実を聞いた今でも揺らいでいません。
あなたは…?
惨めな私は…、嫌ですか…?
本当…?
でしたらあなたを好きで居ていいんですね…?
でしたらその…、関係を続けて下さいませんか…?
いえ、この際ハッキリ言います。
順序が逆になってしまいましたが…、私は…、あなたが好きです…。
ですから…、お付き合いして下さい…。
いいんですか…?
嬉しい…。
ありがとうございます…♪
(深呼吸)ふー…、すー…。
あーあ、この半年、何をやっていたんでしょう…。
こんな展開、まるで作り話みたい。
でもこの気持ち…、好きっていう気持ちは、紛れもなく本物…。
ですので、これからどうぞよろしくお願いします♪
では早速ですが、父に会いに行きましょうか?
ええ、言う事はもう決まっています。
「参りました」ってね♪