●第1節・はじめまして仔羊様、ですの
※あらすじ
とある放課後、校舎の片隅で意気消沈してるあなたの脳内(鼓膜)に語りかけてくる少女。
自称「お悩み相談部」のシスター服を着た不思議な少女に困惑しつつも、その真摯な眼差しにどこか心を許してしまう
[とある日の放課後]
(校舎のすみっこ、あまり使われてない教室などが多い廊下でため息をつく主人公)
(その空き教室の一つ、扉の向こうから主人公に語りかけるアリア)
ああ、そこに佇む迷える仔羊様……
私(わたくし)の名前はシスターアリア……今あなたの脳内に直接語りかけていますの……
こんなひとけの無い校舎の隅でため息などつかれまして……一体どのような悩みをお持ちですの?
この私に、ぜひ聞かせて欲しいですの……
(声のする方の扉を開ける主人公)
(扉の向こうには制服の上からシスター服を着たアリアがいた)
えへ……バレてしまいましたの……
それでは改めまして……
私の名前はアリア、お悩み相談部のシスターさんですの。
(主「お悩み相談部?」)
はい、その名の通り、悩んでたり、迷ってたり、落ち込んでる人のために、そのお悩みを聞いて、時には手助けをする……そんな活動をしておりますの。
(主「そんな部活聞いたことないけど……」)
えへ……部とは言っても私が勝手に名乗っているだけですの。
こうやって校舎の隅でため息をつくような仔羊様を、ずっと待っておりましたの。
さあ、仔羊様……私に、そのお顔を曇らせているモヤモヤを、全部聞かせて欲しいですの。
このシスターアリアに……仔羊様のお悩み、打ち明けて下さいませ、ですの。
[しばらく後、悩みを打ち明けた主人公]
なるほどなるほど……好きだった女性が、仔羊様のご友人とお付き合いすることになったと……
それはまた……その、御愁傷様、ですの。
うゆ……活動を始めて3ヶ月、初めての仔羊様がこんな悩みの持ち主とは……
……いえ、ですがこれもサンペルトン教の教えですの……何かお力になれること……
(こんな提案したことないので少し不安に思いながらも、教えに従おうと決めるアリア)
ん……でしたら、その……代わりに私とお付き合い、してみるのはいかがでしょうか?
我らがサンペルトン教は愛に生き、愛を求めるものたちの集う場所。
たとえシスターあっても、その色恋については許され、個人の意思が尊重されますの。
もちろん姦淫は認められていませんので、仔羊様に少しでもその気があるのでしたら、という話ではありますけれども……
仔羊様の気持ちがまだその女性に向いているのでしたら、また別の解決法を提案いたしますの。
ですが、人の気持ちは移りゆくもの。
ここは、そのご友人の幸せを祈りつつ、気持ちを入れ替えて歩み出すのも一つの手段だと思いますの。
(主「君はそれでもいいの?」)
えへへ……私はもちろん、心に決めた相手などおりませんの。
これから先の話は分かりませんので、こんな提案ができるのは今だけかもしれませんの。
「恋心の生まれる確率は奇跡的なもので、その機会の糸が絡まるのはほんの一瞬」
「汝、欲(ほっ)するものがあるなら、その糸を逃すことなかれ」(これらはアリア自身のことでもある)
聖典にもそう記されていますの。
これもきっと神様の思し召し……でしたら、それに従ってみたいと思いますの。
それに……私は先程のお話を聞いて、仔羊様の愛の大きさと、少しの運の悪さを感じましたの。
もし、私がそのように想われていたら、そして、運良くそれを伝えられていたら、きっと私は、仔羊様の大きな愛に気付けていたと思いますの。
ですので、もしその愛の行き場を探していらっしゃるのでしたら、私に注いでいただけないでしょうか?
もちろんお試し期間付きで、私のことはいつでもクーリングオフ可能ですの。
私の存在によって少しでも仔羊様の暗い気持ちが晴れるのなら、それに越したことはありませんの。
(主「本当にいいのかな」)
はい、もちろんですの。
むしろ私のわがままですので、もし本気になって頂けなくても、それはそれで問題なし、ですの。
仔羊様は安心して、私と、サンペルトン教に少しの間だけ、その身と心を任せて欲しいですの。
神様ピトゥルスの名の下(もと)に、私がきっと、仔羊様に笑顔を取り戻してみせますの!
(主「じゃあお試しで、お願いしてみるよ」)
えへへ……はい、よろしくお願いいたしますの……v
それでは、仔羊様……契約の証を……
(目を瞑り、口づけを待つような仕草のアリア)
(困惑している様子の主人公)
……いかがなさいましたの?
(主「どうすれば良いのかなって」)
ああ、説明不足でしたの。
サンペルトン教での契約は、キスによって締結いたしますの。
体の中で最も神聖な場所であるお口同士を触れ合わせることで、心と体を一つにし、お互いに気持ちを伝え合いますの。
(主「初めてだから、緊張しちゃうな」)
うふ……私も、これが初めてですの。
私のファーストキス……仔羊様にお捧げいたしますの……v
(不器用に唇を擦り合わせるようなキスを交わす)
ん……んむ、ん……んふ……ん、んむ、んぷ……
(主人公の方から離れる)
んふ……ふはぁ……はぁ……えへ……
キス、とってもドキドキしますの……
仔羊様、私の初めてのキスのお味、いかがでしたの?
(主「ドキドキしてる」)
ふふ……お体が少し震えていますの。
緊張、してしまいましたの?
(主「ちょっとね」)
私も……ですのv
ですが、これにて契約は結ばれましたの。
これから少しずつ、お付き合いを重ねて、お互いのことを知っていきたく思いますの。
仔羊様も、きっと私のことや、サンペルトン教について、もっと知りたいでしょうし。
私はいつでも……もちろん授業中は別ですが……ここにおりますの。
呼んでいただければどこへでも馳せ参じますので、連絡先もお渡ししておきますの。
それと、もし私がこのシスター服でなく普通の制服を着ていて人前で呼ばれる際は、本名で呼んで欲しいですの。
私が天の声、お悩み相談部のシスターアリアであるということは、まだ誰にも内緒ですの。
(主「でも、僕が初めてって言ってなかった?」)
……ええ、その通りですの。
お悩み相談部は勝手に名乗ってるだけで、今までこんな校舎の隅まで迷える仔羊様は来てくれませんでしたので、シスターアリアの知名度はゼロですの。
ですが、これからも活動は続けていきますので、もし悩んでいる方がいましたらご紹介して欲しいですの。
サンペルトン教の教えを世に広めるため、そして世界を愛で満たすため、私は全力で頑張りますの!
(主「それで、本名って?」)
あ、申し遅れましたの。
私の本名は「有屋ハル」と申しますの。
人前ではそれで……二人きりの時は好きに、呼んでほしい、ですのv