■トラック1「目覚め――まずはほこりを落としてやろう」(耳かき//耳吹き)
//心配そうに
//ボイス位置:1(くぐもった声で)
【あやめ】
「……い、おい、聞こえているか?」
//音がクリアになって、
【あやめ】
「おっ、どうやら目が覚めたようだね」
【あやめ】
「おっと、そのまま。まだ身体を上手く動かせないだろうから、その体勢のままで聞いてくれ。そう、仰向けで寝ているままでだ」
//芝居がかった感じで、
【あやめ】
「(咳払い)……さて、おそらく気付いていないだろうが、君は一度死んだ。死因は……まぁ、三文小説でお決まりの交通事故だとでも思ってくれたまえ」
【あやめ】
「そして、それを僕が蘇生させた。もっとも、以前と同じように人間としてではない」
【あやめ】
「そう、いわゆる吸血鬼の眷属、というやつだよ」
//ボイス位置:2
【あやめ】
「っと、自己紹介が遅れたね。僕はあやめ、伏見あやめ。吸血鬼だ」
【あやめ】
「僕は物心ついたときから吸血鬼でね、一人で夜の街をずっと生きてきた」
【あやめ】
「ところが昨晩、偶然にも死にたてほやほやの君と出くわしてね」
//少し申し訳なさそうに
【あやめ】
「つい出来心で、思わず眷属にしてしまったんだ。すまない」
【あやめ】
「その代わりと言ってはなんだが、これから主人として君の世話をしていくつもりだ。慣れない眷属生活、ちゃんと君が一人前の吸血鬼になれるまで、面倒を見ていこうと思う」
【あやめ】
「どうだい、まだ身体が重いだろう? 僕の力に馴染んでいないんだ。でも安心してくれていい。動けないあいだは僕に任せておくれ」
【あやめ】
「君の身体はとても汚れている。さっき言っただろう? 事故で命を落としてしまった、と。だから、まずは身を清めてあげないとね」
【あやめ】
「おっと、その前に……やらなくちゃいけないことがあるんだった」
//芝居がかった感じで、
【あやめ】
「なぁに、簡単なことだよ。主人に力を与えると同時に、その繋がりを保持するための、血液を対価とする魂の契約……分かりやすく言えば吸血行為だ」
【あやめ】
「なんだか不思議そうな顔をしているが、何も難しい話じゃない」
【あやめ】
「まだ君は生き返ったばかりで、その身体は吸血鬼でも人間でもない中途半端な存在だ」
【あやめ】
「そんな君の面倒を見るために、僕自身が力をつける必要があるわけだが……そのために吸血鬼は血を吸わなくちゃならない」
//芝居がかった感じで、
【あやめ】
「でも、そこら辺にいる奴の血を吸ったら、僕は人殺しになってしまうだろう?」
【あやめ】
「いくら吸血鬼といえども、ご覧の通り見てくれは人間、この世の中に溶け込んで暮らさなきゃいけない身だからね。余計なトラブルは起こしたくないんだ」
【あやめ】
「だから僕は君の血を吸う。眷属である君の血なら、いくら吸っても問題はないからね」
【あやめ】
「身勝手な言い分で申し訳ないが……君ももう一度死んでしまうのは避けたいだろう? そのためにも、君の血を吸わせてほしい……いいかな?」
【あやめ】
「……ふふ、ありがとう。君が物分かりの良い眷属で助かったよ」
【あやめ】
「それで、だ。血を吸うと言っても、色々と方法がある。というわけで……まずは君の耳を使わせてほしい」
【あやめ】
「普通こういうのは、首筋がセオリーじゃないのか?と君も思うだろうが、あいにく君はまだ蘇生したばかりだ」
【あやめ】
「今は身体の末端、比較的負担の少ない場所から血を吸うのが、君を傷付けないための最善策だと思ってね」
【あやめ】
「話は理解できたかな? では下準備に、君の耳掃除から始めよう」
//ボイス位置:3
【あやめ】
「まずは、右耳からだ。耳かき棒を入れるから動くんじゃないぞ? 動いたら怪我をしてしまうかもしれないからな」
//SE:耳かき音(30秒ほどオンリーで聞かせてから、セリフを被せる)
//楽し気に、
【あやめ】
「……ん……ふふ、どんどん汚れが取れていくぞ。生前の君は、あまりこまめに耳かきをしないタイプだったのかな? これならもっと念入りにやらなくてはならないな」
//SE:耳かき音(外側からより中へ、15秒ほど聞かせてからセリフIN)
【あやめ】
「ふぅ……ふふふ。こんなに掃除のし甲斐がある耳は初めてだ。……いや、そもそも人の耳掃除なんて、ほとんどしたことないのだけどね」
【あやめ】
「ここ百年は一人で過ごしていたから……こうやって誰かと話すこと自体、本当に久しぶりだ」
【あやめ】
「こうして……おいしそうな耳を、指先でくりくりといじるのもね」
【あやめ】
「ああ。早くこの、やわらかそうな耳たぶを噛ませてもらいたいなぁ……どんな味がするのだろう? とても楽しみだよ……ふふふ」
//SE:耳かき音(ここまで)
【あやめ】
「さて、そろそろいい頃合いかな。そのまま動くんじゃないぞ? 仕上げに梵天で……」
//SE:梵天(20秒ほど)
//ボイス位置:3(至近距離に寄って)
【あやめ】
「……うん、いいだろう。そして最後に……」
【あやめ】
「(吐息)」
//ボイス位置:3(元の位置に)
【あやめ】
「ふふ、どうだい? 耳掃除の後は息を当てるのが相場だと聞いていたからね。これでさらに綺麗になっただろう」
【あやめ】
「それでは、反対の耳に移ろうか」
//SE:移動する音
//ボイス位置:7
【あやめ】
「おお。こちらの耳もなかなかだね……。君は代謝が良いのかな? 細胞の移り変わりが激しいから、耳もどんどん汚れていってしまうのだろう」
【あやめ】
「安心してくれ。僕が責任を持って綺麗にするさ。じゃあ、始めることにしよう」
//SE:耳かき音(30秒ほどオンリーで、その後セリフIN)
【あやめ】
「今さらだが、君は耳かき棒と綿棒、どちらが好みなのかな?」
【あやめ】
「してほしいことがあったらなんでも言ってくれよ。僕は君のご主人様だからね。眷属の望みを叶えるのは、主人である僕の役目だ」
//SE:耳かき音、徐々に中に入っていく(15秒ほどオンリーで、その後にセリフIN)
【あやめ】
「まぁ今のところ、満足してくれているようでよかった。耳かき棒のカリカリとした感覚、とても気持ちがいいだろう?」
【あやめ】
「君にストレスをかけないためには、これを使うのが正解のようだ。ストレスが過度にかかってしまうと、血の質も落ちてしまうからね」
【あやめ】
「うん……よし。これで耳掃除は終わりだ」
//ボイス位置:7(至近距離)
【あやめ】
「では、仕上げに梵天で……」
//SE:梵天(20秒ほど)
//恍惚とした感じで、
【あやめ】
「ふふふ……気持ちいいかい? では、僕の息もプレゼントしてあげよう」
【あやめ】
「(吐息)」
【あやめ】
「よし、これで綺麗になったな」
【あやめ】
「それでは……お待ちかねの血を吸わせてもらうとしよう。今日はこちらの耳たぶから……」
//少しあどけない感じで、
【あやめ】
「いただきます」
【あやめ】
「(甘噛み)」
//甘噛み、20秒ほど続けて、満足したかのように終わる
//ボイス位置:7(元の位置に戻って)
【あやめ】
「ごちそうさま」
//満足した感じで、
【あやめ】
「君の血、とても美味しかったよ。身体中を駆け巡って気持ちがいい……君が僕の一部になったことを、改めて実感するね」
【あやめ】
「……うん、顔色もどうやら問題なさそうだ。これからも時折、こうして血を吸わせてもらうよ」
【あやめ】
「そういうわけで。これからよろしくな、眷属くん」