Track 9

Tr3 幸多の棚田

【みくろ】「わ──」 ;幸田の棚田環境音 F.I. 【みくろ】「(言葉も忘れて景観に見惚れる16呼吸)」 【みくろ】「わぁあ! すごい! 段々畑──じゃないですね、これ。 水田だから──ええと…………」 【みくろ】「棚田(たなだ!) 棚田、みくろ──棚田が石垣の上にできてるの、はじめてみました」 【みくろ】「これ、ものすごい歴史があるものですよね、きっと。 だって、セメントとか使ってる感じ全然しない──まるでお城とかの石垣みたいですし」^ 【みくろ】「……(じっと耳を澄ませる4呼吸)──あー、本当にお城の石垣とおんなじなんですね。 お城の石垣をつくってた石工(いしく)さんたちが、何百年も前につくった──」 【みくろ】「反り……わ! ほんと。石垣にアールがついてますね。 上の方にいくほどに、せりあがっていってる感じに」 【みくろ】「これがお城と同じ特徴……だから、この幸多(こうだ)の棚田は、 『田んぼのお城』って言われてる」 【みくろ】「……お仕事で視察にきてるにしたって、下調べカンペキすぎです、さすがマスター。 みくろ、もっと尊敬しちゃいます」 【みくろ】「……ふんふん。この幸多の棚田のお米をつかった米焼酎が、ものすごく美味しい。 その秘密を分析するため、お水のサンプルを少しもらってくる」 【みくろ】「なるほどです! サンプルって、この試験管にとって蓋すればいいんですね? みくろ、お手伝いしちゃいます!」 【みくろ】「お水……お水──田んぼの中から直接とっちゃうのはダメだし──ええと」 【みくろ】「(棚田から棚田に順序よく流れる水に関心し、見惚れる息とニュアンス。16呼吸ほど)」 【みくろ】「……お水、棚田から棚田に流れ落ちていくのも、とっても綺麗ですね。 水路もきっと、すごーく緻密に計算されてるんでしょうね」 【みくろ】「それに、音も……」 【みくろ】「(じっと耳を澄ませる16呼吸)」 【みくろ】「流れの音。川の音みたい……って、あれ?」 ;SE みくろ足音(土) ;7/左→;15/左遠→;14/後左遠 ;14/後左遠 【みくろ】「マスター! ここ、暗渠(あんきょ)になってるとこの先、川があります!」 ;SE マスター足音(数歩) ;環境音 vol↑ 【みくろ】「(マスターの移動を待つ4呼吸)」 ;7/左 【みくろ】「ね? これ、棚田から流れ落ちてきた水。 サンプル、ここでとってもいいですよね? みくろ、いまやっちゃいます」 ;16/左前遠 【みくろ】「ん、っしょ……」 ;SE 流れ落ちる水を試験管にいれる→ゴム栓する。 ;16/左前遠→;7/左 【みくろ】「(安堵と満足の息)──はい、どうぞです、マスター」 ;7/左 【みくろ】「お水……それにしても豊かですよね。 これも、さっきの竹仲池とおんなじ──霧縞山系の湧き水なんですよね? もともとは」 【みくろ】「山からずーっと地下をつたって湧き出して、田んぼを満たして川になって。 最終的にこの川から──きっと海にまで流れていくんでしょうね」 【みくろ】「ここからだったら……鹿兒島湾に流れていくのかな。それとも、八ツ城海なのかな」 【みくろ】「いまここでざーっと流れてる水たちも、その一粒一粒のもとをたどってみたら…… もしかして、山の頂上と、谷底と。遠く遠く離れて降った雨粒同士だったりして」 【みくろ】「(少し考え込む呼吸)──ふふっ」 ;1/前 【みくろ】「……マスターと出会えたこと。すごい奇跡って、いっつもみくろ、思ってるんです」 【みくろ】「だからなのかもしれないです。雨粒のこと、そういうふうに感じたの」 【みくろ】「だってみくろは、きっとコップの中に一粒だけ残っちゃった。 あとは乾くしか無い雨粒だったんだって……今振り返ると思うんです」 【みくろ】「車籍を抹消されて、38696と一緒に大牟田の動物園に引き取ってもらって。 『もう二度と走れないんだな』って思ってる矢先に、おねえさまの8620の復元の話が伝わってきて」 【みくろ】「おねえさまもみくろも走れないままより、おねえさまだけでも走ってほしいって── みくろ、本当にそう思って。だから、部品、技師さんに必要だっていわれたぜんぶをプレゼントして」 【みくろ】「それでおねえさまが走れるようになって、みくろ、本当に幸せで。 ……それだけで十分だったのに、おともだちから部品、いろいろわけてもらえて── みくろは、目も手も足も、普通に機能するように戻れて」 【みくろ】「……だから、少しでも恩返しがしたくって。 みくろに部品をくれたこには、もう恩返しできないけど── その分、今困ってる子を少しでも助けてあげられたらって、みくろ、思って」 【みくろ】「それで保存機の──公園のD51(デゴイチ)清掃をして。 清掃をきっかけに、偶然マスターに出会えて。 それからですよね。グングングンって、すべてがすごい勢いでまわりはじめたの」 【みくろ】「ぼろぼろだったみくろが。ぼろぼろだった公園のデゴイチが。 パートナーを失った同士で、支え合って、もう一度走れるようになって。 ううん──」 ;1/前(密着距離) 【みくろ】「マスターが、みくろを支えてくれて。デゴイチと、みんなと結びあわせてくれて」 【みくろ】「だからみくろ、どんなことでもマスターに恩返ししたいんです。 今回のお供の間はもちろん、その後でも、いつでも、ずっとずうっと」 ;3/右(密着囁き) 【みくろ】「ね、マスター。もしもみくろにお手伝いできそうなことがあったら、なんでもいってくださいね。 みくろ、いつでも──(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)──うふふっ」 ;3/右 【みくろ】「確かに、ちょっとあっついですね。お水がいっくら涼やかだって、お外の気温は…… 熱に強いレイルロオドのみくろでも、ちょっと高いなって思うくらいですもの」 【みくろ】「マスターのお顔赤くなっちゃってるの、みくろ、気づくの遅れてごめんなさい。 連日の視察ですし、疲労もたまってきちゃってますよね」 【みくろ】「ね、マスター。今日の視察はここでおしまいなんですよね? なら、お宿にもどって、のんびりゆったりすごしましょう」 ;3/右(接近囁き) 【みくろ】「マスターがお昼寝する間、みくろずうっと、うちわであおいで、涼しい風を送りますから」 ;環境音 F.O.