Tr3 幸多の棚田
【みくろ】「わ──」
;幸田の棚田環境音 F.I.
【みくろ】「(言葉も忘れて景観に見惚れる16呼吸)」
【みくろ】「わぁあ! すごい! 段々畑──じゃないですね、これ。
水田だから──ええと…………」
【みくろ】「棚田(たなだ!) 棚田、みくろ──棚田が石垣の上にできてるの、はじめてみました」
【みくろ】「これ、ものすごい歴史があるものですよね、きっと。
だって、セメントとか使ってる感じ全然しない──まるでお城とかの石垣みたいですし」^
【みくろ】「……(じっと耳を澄ませる4呼吸)──あー、本当にお城の石垣とおんなじなんですね。
お城の石垣をつくってた石工(いしく)さんたちが、何百年も前につくった──」
【みくろ】「反り……わ! ほんと。石垣にアールがついてますね。
上の方にいくほどに、せりあがっていってる感じに」
【みくろ】「これがお城と同じ特徴……だから、この幸多(こうだ)の棚田は、
『田んぼのお城』って言われてる」
【みくろ】「……お仕事で視察にきてるにしたって、下調べカンペキすぎです、さすがマスター。
みくろ、もっと尊敬しちゃいます」
【みくろ】「……ふんふん。この幸多の棚田のお米をつかった米焼酎が、ものすごく美味しい。
その秘密を分析するため、お水のサンプルを少しもらってくる」
【みくろ】「なるほどです! サンプルって、この試験管にとって蓋すればいいんですね?
みくろ、お手伝いしちゃいます!」
【みくろ】「お水……お水──田んぼの中から直接とっちゃうのはダメだし──ええと」
【みくろ】「(棚田から棚田に順序よく流れる水に関心し、見惚れる息とニュアンス。16呼吸ほど)」
【みくろ】「……お水、棚田から棚田に流れ落ちていくのも、とっても綺麗ですね。
水路もきっと、すごーく緻密に計算されてるんでしょうね」
【みくろ】「それに、音も……」
【みくろ】「(じっと耳を澄ませる16呼吸)」
【みくろ】「流れの音。川の音みたい……って、あれ?」
;SE みくろ足音(土) ;7/左→;15/左遠→;14/後左遠
;14/後左遠
【みくろ】「マスター! ここ、暗渠(あんきょ)になってるとこの先、川があります!」
;SE マスター足音(数歩)
;環境音 vol↑
【みくろ】「(マスターの移動を待つ4呼吸)」
;7/左
【みくろ】「ね? これ、棚田から流れ落ちてきた水。
サンプル、ここでとってもいいですよね? みくろ、いまやっちゃいます」
;16/左前遠
【みくろ】「ん、っしょ……」
;SE 流れ落ちる水を試験管にいれる→ゴム栓する。
;16/左前遠→;7/左
【みくろ】「(安堵と満足の息)──はい、どうぞです、マスター」
;7/左
【みくろ】「お水……それにしても豊かですよね。
これも、さっきの竹仲池とおんなじ──霧縞山系の湧き水なんですよね? もともとは」
【みくろ】「山からずーっと地下をつたって湧き出して、田んぼを満たして川になって。
最終的にこの川から──きっと海にまで流れていくんでしょうね」
【みくろ】「ここからだったら……鹿兒島湾に流れていくのかな。それとも、八ツ城海なのかな」
【みくろ】「いまここでざーっと流れてる水たちも、その一粒一粒のもとをたどってみたら……
もしかして、山の頂上と、谷底と。遠く遠く離れて降った雨粒同士だったりして」
【みくろ】「(少し考え込む呼吸)──ふふっ」
;1/前
【みくろ】「……マスターと出会えたこと。すごい奇跡って、いっつもみくろ、思ってるんです」
【みくろ】「だからなのかもしれないです。雨粒のこと、そういうふうに感じたの」
【みくろ】「だってみくろは、きっとコップの中に一粒だけ残っちゃった。
あとは乾くしか無い雨粒だったんだって……今振り返ると思うんです」
【みくろ】「車籍を抹消されて、38696と一緒に大牟田の動物園に引き取ってもらって。
『もう二度と走れないんだな』って思ってる矢先に、おねえさまの8620の復元の話が伝わってきて」
【みくろ】「おねえさまもみくろも走れないままより、おねえさまだけでも走ってほしいって──
みくろ、本当にそう思って。だから、部品、技師さんに必要だっていわれたぜんぶをプレゼントして」
【みくろ】「それでおねえさまが走れるようになって、みくろ、本当に幸せで。
……それだけで十分だったのに、おともだちから部品、いろいろわけてもらえて──
みくろは、目も手も足も、普通に機能するように戻れて」
【みくろ】「……だから、少しでも恩返しがしたくって。
みくろに部品をくれたこには、もう恩返しできないけど──
その分、今困ってる子を少しでも助けてあげられたらって、みくろ、思って」
【みくろ】「それで保存機の──公園のD51(デゴイチ)清掃をして。
清掃をきっかけに、偶然マスターに出会えて。
それからですよね。グングングンって、すべてがすごい勢いでまわりはじめたの」
【みくろ】「ぼろぼろだったみくろが。ぼろぼろだった公園のデゴイチが。
パートナーを失った同士で、支え合って、もう一度走れるようになって。
ううん──」
;1/前(密着距離)
【みくろ】「マスターが、みくろを支えてくれて。デゴイチと、みんなと結びあわせてくれて」
【みくろ】「だからみくろ、どんなことでもマスターに恩返ししたいんです。
今回のお供の間はもちろん、その後でも、いつでも、ずっとずうっと」
;3/右(密着囁き)
【みくろ】「ね、マスター。もしもみくろにお手伝いできそうなことがあったら、なんでもいってくださいね。
みくろ、いつでも──(呼吸音)(呼吸音)(呼吸音)──うふふっ」
;3/右
【みくろ】「確かに、ちょっとあっついですね。お水がいっくら涼やかだって、お外の気温は……
熱に強いレイルロオドのみくろでも、ちょっと高いなって思うくらいですもの」
【みくろ】「マスターのお顔赤くなっちゃってるの、みくろ、気づくの遅れてごめんなさい。
連日の視察ですし、疲労もたまってきちゃってますよね」
【みくろ】「ね、マスター。今日の視察はここでおしまいなんですよね?
なら、お宿にもどって、のんびりゆったりすごしましょう」
;3/右(接近囁き)
【みくろ】「マスターがお昼寝する間、みくろずうっと、うちわであおいで、涼しい風を送りますから」
;環境音 F.O.