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プロローグ

――お入りください。  ……ああ。跪く必要はありません。  そちらへお座りください。  さて。  宮殿にまでご足労いただき、ありがとうございます。  ええ。あなたのことは存じています。  わたくしの警護をしてくださっている、近衛兵でしょう?  この前の、魔法研究会はお疲れさまでした。  世界中の魔法士が集まる中、隅々まで見守ってくださり、深くお礼申し上げます。  ところで……お隣に行ってもよろしいでしょうか?  ありがとうございます。  ああ。どうか、緊張なさらず。  あなたが何か重大な過ちを犯して、その折檻のために呼びつけた……というわけではございません。  どうぞ、リラックスしてお聞きください。  単刀直入に申しましょう。  実は、わたくし……今、子どもを授けてくださる相手を探しています。  あなたさえよろしければ……  わたくしと結婚して……  わたくしを、オナホにしていただけませんか。  ……ええ。驚くのも当然だと思います。  一から、理由を説明させていただきます。  我が国、〝ペカド〟は――魔法の研究が、世界の中でも随一であることは、ご存じですね?  にも関わらず……年々、国の人口は減少していっています。  ペカドは、他の国……例えば、〝ミルタ王国〟などと比べると、とても小さい国です。  若者も、田舎の小国ではなく、大国で名を成したいと思うのも当然でしょう。  ……ですが、それは国として、由々しき問題です。  わたくしはペカド王国の王女として――その対策をずっと考えていました。  我が国は魔法の国です。魔法とともに生まれ、魔法とともに暮らす国です。  今から、歓楽街を建設する――という方向に舵を切ったところで、それが上手くいくとは思えません。  ならば、いっそ……さらに、魔法の国として名を挙げていくべきなのでは、と考えました。  ……あなたは、魔法の中でも、〝血統魔法〟というものをご存じでしょうか?  魔導書に乗っているようなものではなく、その一族に伝わる、門外不出の魔法です。  ……実際にお見せしたほうが早いでしょう。  ここに、紙があります。  これを両手に持ち……  ……このように。  右手では紙が発火し――  左手では、紙が凍結しました。  この血統魔法は……〝熱〟を、自由自在に操ることができます。  はい。気づきましたか?  この部屋の中は……不自然に涼しいでしょう。  血統魔法を、魔道具と呼ばれる、魔力を持つ道具に注ぎ込んで……  部屋の中に配置して、快適な室温にしているのです。  血統魔法の有用性がご理解いただけたでしょうか。  わたくしは、この魔法のノウハウを公開し……使用できる者を増やそうと考えています。  公開されれば、この有用性に惹かれてペカドに来る魔法士も増えるでしょう。  そして、ゆくゆくは、魔道具を生産させ、商品として世界に流通させます。  魔法士の就職先を作りつつ、商業的な利益を得られる……というわけです。  ……ですが。これには問題が一つあります。  そもそも、ペカドの王族の中で……この血統魔法を使える者が、現状、わたくしと国王――お父様しかいないのです。  これでは、ノウハウを確立する前に……そもそも魔法自体が途絶えてしまいかねません。  そこで……結婚と、子作りに話が繋がってきます。  現状、わたくしは未婚です。そして、結婚の適齢期です。  お父様は、婚姻について、わたくしの意思に任せると言ってくださいました。  そして……あなたは、体に流れている魔力が、ペカドの血統魔法と相性がいいことが分かっています。  はい。この前、近衛兵の定期診断と称して、血液を採取させていただいたでしょう?  それで確かめてもらったのですが……  お城に仕える者の中で――あなたとの相性が、一番良かったのです。  ですから、あなたと結婚をして、子をなせば――  きっと、血統魔法を使いこなす子が、生まれることでしょう。  ……以上が、あなたと結婚をしたい理由です。  ここまでで、何か質問はございますか?  ……〝オナホ〟?  ああ。そちらの説明が必要でした。 〝オナホール〟……という玩具をご存じでしょうか?  わたくしは、話でしか聞いたことがないのですが……  男性の性器を気持ちよくする玩具なのだとか。  わたくしを、その〝オナホ〟と同じ扱いにしていただいて構いません。  ただ自分で自分を慰めるように、わたくしを〝オナホ〟にして、中に子種を注ぎ込む……  そういう認識の子作りで、問題はありません。  実は、この前の魔法研究会にて……  ミルタ王国の王女様とお話ししました。  彼女も最近――わたくしとまったく同じ理由で、結婚したと仰っていました。  ……照れ隠しなのではないかと思うほど、仲睦まじい印象でしたが。  ミルタの王女様が結婚するときの誘い文句として―― 〝オナホと同じ扱いで構いません〟、と仰ったそうです。  ですから、それを真似しました。  つまり……  結婚といっても、無理に、わたくしを女性として愛していただく必要はない、ということです。  ただ、わたくしをオナホだと思っていただき……中に、子種を注いでくださればそれで構いません。  あなたが望めば、わたくしもあなたに深く関わらないようにいたします。  それに……わたくしは、男性に好かれる体つきをしている……ようです。  自分では、よく分からないのですが……  胸は大きめ……のようですし。全体的に、むっちりしています。  オナホにしたら、それなりに気持ちいいのではないかと思っています。  ……ここまではよろしいでしょうか?  では、続いて実務的なお話ですが……  わたくしと結婚していただくと……王族に入ることによる、様々な式典などのお仕事は、どうしても発生してしまいますが……  基本的には、〝わたくしと子作りをすること〟のみとなります。  それ以外は、寝て過ごしていただいても問題ありません。  失礼な物言いに感じたら、申し訳ありませんが……  少なくとも、近衛兵より、お仕事は楽になるかと思います。  また、あなたのご家族にも、金銭的な保証は十分にさせていただきます。  ご希望であれば、一等地の住居を用意させていただきます。  ……話すべきことは以上でしょうか。  ご検討くだされば嬉しいです。  ……ああ。もちろん、これは強制ではありません。  わたくしが王女だからといって、絶対に聞かなければならないわけではありません。  一度家に帰って、一晩考えていただいても構いません。  …………。  わたくし、ですか?  はい。もちろんです。  失礼ながらわたくしは、まだあなたに愛情を抱いているとは言い難い状態ですが――  結婚することは、決して嫌ではありません。  わたくしは、王女として、この国を守り、繁栄させることを第一に考えています。  この行いは、正しいと信じています。  それに……  わたくしとあなたは、まったく知らない人、というわけでもありません。  丁寧に、わたくしを警護してくださったあなたのことは……印象に残っていましたから。  ですから、わたくしの意思は、どうぞお気になさらないでください。  それで……あなたは、いかがでしょうか?  …………。  ……本当によろしいのですか?  ありがとうございます。  受け入れてくださり、とても嬉しく思います。  それでは……  わたくしと、結婚をしましょう。  あなた様。

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