プロローグ
1【マイク位置:左 距離:近い】
あのー?
もしもーし? 生きておりますかー?
2【マイク位置:左 距離:普通】
ぺちぺち…≪軽く叩くSE≫
ぺちぺちぺち…≪軽く叩くSE≫
…困りましたね。せっかく捕らえて、わたくしの部屋にまで運んだというのに。なかなか起きてくれません。
…もしや魔法の威力が少々強すぎましたか?
だいたい、あなたが無駄に頑丈すぎるのが悪いんですよ?
ええ、そうです。あなたが悪いんです。わたくしは悪くありません。
…こほんっ、とにかく。あなたが起きるのを悠長に待っていられるほど、わたくしも気の長い性格ではございませんので。
ですから…
3【マイク位置:左 距離:近い】
はー……
(息吹き)…ふぅううう〜♪
(息吹き)…ふぅううう〜♪
4【マイク位置:正面 距離:普通】(驚いて目覚めた聞き手が仰向けになったイメージです)
…おお、すごい反応です。ぱっちり、お目目が開きましたね。
おはようございます。そして、お久しぶりですね。お耳がとっても敏感な暗殺者さん。
貴女にお会いするのは、これで三度目です。覚えておりますでしょうか?
…覚えてない、ですか。依頼主には関わらない主義。ということでしょうか。
ええ、そうです。あなたがこの屋敷に来るきっかけとなった暗殺の依頼。それを持ちかけた者。そう言えばわかるでしょうか?
あなたに会いたがっていたお姉様がでっちあげた、お姉様を暗殺するという依頼です。
お姉様に敗北して見事暗殺に失敗し、この屋敷で暮らすことになったあなた。
そんなあなたは、愚かにも脱走を決行いたしましたが…それを見逃さなかったわたくしによって捕らえられてしまった。
というのが事の顛末です。
…この時が二度目ですね。
はい。あなたに依頼を持ちかける際、つまり初めてお会いした時に、儚げで健気な少女を演じておりました。わたくしです。
改めて自己紹介と参りましょう。わたくしはリーベ・アスマール。
この屋敷の主であるお姉様、フィリア・ルティック様の忠実なる妹でございます。以後、お見知りおきを。
血のつながりはありませんが…そのようなものは些細な問題です。
それ以上に、わたくしとお姉様の心は深く、深く繋がっているのです…!
わたくしの仕事は主に3つ。
1つ、お姉様の身の回りのお世話やお手伝い。
2つ、お姉様が望むものを手に入れること。
そして3つ、あなたのような不届き者に裁きを下すことです。
殺すだなんてとんでもない。わたくしもお姉様も、そのような野蛮な行為は好みません。
脱走などということを再度企てぬよう、再教育のためのお仕置きを行うつもりです。
そのお仕置きの内容は…もう想像がついておいででしょう?
ええ、そうです。
捕らえられた時や屋敷で過ごした数日間、お姉様からたっぷり施された、あなたの苦手な苦手なくすぐりでございます♪
くすぐったぁい…くすぐったぁい♪
体を縦横無尽に駆け巡る指により、あなたはお腹から、肺から、喉から、笑い声という笑い声を絞り出されて。
苦しくて苦しくて、それでも止めてもらえなくて。
頭の中が真っ白になって、最後は気絶して…ふふふふ♪
人生で初めて、いっぱい、それはもう気絶するまでくすぐられて…どうでしたか、お姉様のくすぐりは? さぞかし効いたでしょう?
あぁ…羨ましい限りです。わたくしも久しぶりに、気絶するまでお姉様にくすぐってもらいたいというのに。
しかし脱走者を捕まえたとあれば、きっとお姉様はわたくしにご褒美を与えてくださるでしょう…!
それも、お姉さまのお気に入り候補であるあなたの脱走を阻止したとあれば…うふふふふふふふふ♪
何を言っているのかって、そのままの意味ですよ。
そうです。わたくしはお姉様にくすぐられたいのです。
息は絶え絶え、何も考えられない。
全力で走った後のような苦しさと、愛する人に触ってもらえて不思議と気持ちの良い感覚。
(恍惚とした感じで)
あぁ…! 思い出しただけでお姉様の指の感触が体から脳に…!
(取り繕うようにわざとらしい咳払い)
…こほん。失礼いたしました。
…お姉様の指からその身に伝わる感触が、思い出されてきたのではないですか?
…おっと。逃げようとしても無駄ですよ?
気絶している間に、あなたの身を拘束しておりましたから。
あなたはもう、このベッドから逃げられません。
この屋敷からも、お姉様からも、わたくしからも。
さぁ、大人しく罰を受けて、己の行いを悔い改めてくださいませ?