Track 10

その日の夜

(添い寝中) すぅ……ふぅ……。 すぅ……ふぅ……。 んー……。 はぁ……。(ため息) ああ、いえ、ごめんなさい。中々、寝付けなくて。 おかしいですね。 国を出て、丸一日歩いて、疲れてるはずなのに。 ……そうですよ。私、野宿は初めてです。 ずっとあの国に、いましたから。 勇者様は……。 そうですよね。慣れた、ものですよね。 今よりももっと酷い時代。 魔物が世界中をうろついている時代に、 魔王討伐の旅を、してたんですもんね。 ……知りませんでした。夜の森で寝ることが、こんなに恐ろしいこと。 テントというものが案外、頼りないこと。 私はずっとあの家で、守られて生きていたんですね。 ……。 ……勇者様。もっとこっちに、来てください。 そうです。私の事、抱きしめて欲しいんです。 ん。ありがとうございます。 暖かい……。 安心……です。 ……ごめんなさい。 本来なら私が、勇者様を慰めなきゃいけない立場なのに、 初日の夜から、甘えてしまって。 ……そうですか。勇者様も安心するなら、良かったです。 ……優しいですね。勇者様は。 それじゃあ、このまま抱き合って、寝ましょうか。 おやすみなさい。勇者様。