アリシアと共に
勇者様。勇者様。
起きて。起きてください。
おはようございます。勇者様。
すいません。気持ちよく寝ていたところを、起こしてしまって。
でもその。緊急事態なんです。
はい。
えっと……ですね。
私、昨日あなたの家が燃えた後、どうなったのかが気になりまして、
早朝に、勇者様の家を見に行ったんです。
そしたら、その道中で……
こんな張り紙が、してありました。
……そうです。
あなたの、指名手配書です。
国は。あなたを処刑する気なんですよ。
石化病を持ち込んだ、国家転覆の犯罪者として。
つまり国まで、信じてるんです。
「勇者を排除すればこの病気は治る」って言う、あの記事の内容。
何の根拠もない、くだらないデマを。
……ひとまず今は、
私が張った結界で、あなたを見つけることは誰にも出来ません。
でも、国があなたを追っているとなれば、
この結界もいずれ、何かの拍子に破られるでしょう。
そうなればあなたは拘束され、処刑台の上。
国民も知っての通り、誰も勇者様を庇いませんし、終わり……です。
……。
もう、さ。
この国に、私たちの居場所は、無いようですね。
どう……しますか?勇者様。
…………いえ、ごめんなさい。
分かってますよね。取るべき選択肢なんて。
……分かって、いるんです。
すぅ……はぁ……。(深呼吸)
逃げましょう。勇者様。
この国を出て、どこか遠く。
安心して暮らせる場所を、目指すんです。
大丈夫。一人じゃありません。私、アリシアがお供します。
いいえ。言ったじゃないですか。
私は何があってもあなたの味方、あなたの恋人だって。
だから遠慮せず、あなたの旅路へ、連れて行って下さい。
ね?勇者様。
ずっと。一緒ですよ。ふふっ……(力なく笑う)
……あ。
泣いて、るんですか?
……そうですか。
ここまで来てやっと、泣くんですね。あなたは。
ぎゅーーーーう。
今までよく頑張りました。
お疲れさまでした。勇者様。
よしよし。よし、よし。
富も名声も、もう何も残っちゃいませんが。
最後に私が、残りましたよ。
あなたがこの世界を救ったこと。
誰も出来なかった魔王討伐を成し遂げたこと。
あなたが、英雄であったこと。
私は絶対に忘れません。
あなたの物語、絵本にして持ってますから。
その栄光はどうしたって、私の中で生き続けるんです。
……ねえ、勇者様。
私のこと、好きですか?
……ん。
ならきっと、二人きりの逃避行の先でも、幸せになれますよ。
私、アリシアが。責任を持って幸せにして見せます。
……じゃあ。……ほら。……ちぎりましょう。
……顔、あげてください。
ん……ちゅっ……。(キス)
私も。あなたのことが大好きですよ。勇者様。