Track 12

真実

えーっと。 この素材は高く売れて、これはピンキリ……。。 これは……どうせ売れないし、燃やしちゃうか……。 あ。勇者様。テント建て終わったんですね。 ご苦労様です。 はい。荷物の整理を、してました。 そろそろ次の町に着くころ合いですから、 売るものとそうじゃないものを、分けておきたくて。 でもこれでひと段落です。 少し二人で焚火に当たって、 寝る前の雑談タイムと洒落こみましょう。勇者様。 ほら。私の隣、座ってください。 どうぞ。 さゆですよ。もう歯磨きした後ですから。 ああ、そうですね。 もう三か月も旅してますから、流石に野宿にも、慣れてきました。 最初は知っての通り、結構抵抗があったんですけど。 今は案外、自然の中で寝るというのも、悪くないと思っています。 ……。 ふぅー……。 息、白い……。 この辺は高所で、年中寒い地域らしいですね。 なんか。生きてるって感じ、します。 すぅ……。ふぅ……。 すぅ……。ふぅ……。(呼吸音2回) ……あのさ。勇者様。 話そうかどうか、迷ったんですけど。 その……。実は……ですね。 私、分かったんですよ。 あの国で流行っていた病気。石化病の、本当の原因が。 はい。 旅の間、いろんな町の資料を集めることで、 答えにたどり着きました。 聞きたいですか?勇者様。 結構複雑な話に、なっちゃうんですけど。 ……そうですか。 じゃあ、話しますね。 まず、石化病の直接の原因は、あの国に突如生え始めた、 黒いクチナシにあります。 はい、私が栞にするために摘んでいた、あの花です あの花が定期的に飛ばす花粉。それに人を石に変える毒が含まれていて、 それが石化病の原因だったんですよ。 ええそうです。石化病は、感染症なんかじゃありません。 花の毒による、中毒被害なんです。 あの病が国中に流行した理由は、黒いクチナシが国中に繁殖したから。 なのであの病を食い止めるには、 あの国から黒いクチナシを根絶やしにしなければならないということですね。 ……でも、勇者様。この話の問題はもっと、根が深いんですよ。 そう。言ったでしょう?「複雑な話だ」って。 ねえ、勇者様。 そもそも黒いクチナシがどこからあの国にやって来たのか、分かりますか? 「毒性の強い花」って聞けば、なんとなく、 察しがつくんじゃないかと思いますけど。 ……そう。魔界です。 あの花はもともと魔界の花。 この世界には存在しないはずの、植物なんです。 しかもあの花、魔界の空気が無いと、生きられない存在らしくて。 本来であればこの世界に生えたとしても、すぐ枯れてしまう植物なんだとか。 つまりその、結論から言うとですね。 あの国のどこかに、魔界のゲートがあるんですよ。 そのゲートから魔界の空気と共に、 あの黒いクチナシが国中に繁殖し、石化病が蔓延した。という事です。 ……言いたいことは分かりますよ、勇者様。 「魔王を討伐した今、魔界のゲートが開かれることはないはずだ」って、 そう言いたいんですよね。 でも、勇者様。 魔界のゲートを開くのが、魔王だけとは限りません。 例えば、魔界にある貴重な鉱石。 その資源を欲して、 こちらの世界から魔界へのゲートを開ける人物が、いるかもしれません。 ん、しょ……。 ほら、二週間前の新聞です。 あの国が、レアな鉱石を大量に輸出して儲けてる。 っていう記事が、書いてあります。 つまりですよ、勇者様。 話を分かりやすくまとめるとですね。 一、あの国の政府が、魔界にある資源欲しさに、魔界のゲートを開く。 二、そのせいで魔界から、毒を持つ花が大量に国内に繁殖。 三、その毒による病気、石化病が国中に蔓延。 ま、こんなところですかね。 そして現在あの国は、国民が石化病で苦しむのを横目に、 魔界から採掘した鉱石でがっぽり儲けてるっていう、 なんとも胸糞悪い話です。 そうですよ。やっぱりあなたは正真正銘、濡れ衣だったんです。 というか多分、あの記事含め、 国が意図的にあなたに濡れ衣を着せたんでしょうね。 魔界のことをよく知る人物は排除しないと、 真実に、気づかれてしまいますから。 ……ふむ。そうですね。 おそらくですが、あの国にある魔界のゲートが閉じれば、 事態は収束すると思いますよ。 さっきも言った通りあの黒いクチナシは、 魔界の空気の中でしか生きられませんから。 ゲートが閉じて、魔界からの空気が遮断されれば、 勝手に全て枯れるでしょう。 そうなれば毒を持った花粉も飛ばなくなって、 現在石化病で苦しんでいる人たちも、自然治癒で回復するはずです。 ええ。自然治癒、するそうですよ。 ほら、勇者様が昔見たって言う、石化病があった村、 あそこの資料がソースです。 ん。魔界のゲートの位置……ですか。 それは何とも言えませんね。 私の予想では、城の地下あたりですけど、確たる根拠はありません。 ……まぁ、でも。 あの国を追い出された私たちには、これはもう関係ない話ですよ。 ただ、その……。 勇者様は全く悪くなかったんだってことを。 私は証明したかったんです。 ……ふふっ。どういたしまして。 さて、それじゃあ勇者様も飲み終えたようですし、 そろそろテントに入って、寝ましょうか。 あ。もちろん寝る前にえっち、しましょうね。 私、今日はしてみたいプレイがあるんですよ。 ……ふふっ。顔赤くして。相変わらずかわいいですね、勇者様は。 はい。 それじゃあ今夜もいっぱい、イチャイチャしましょうね。勇者者様。