Track 2

そこそこ好き(大好き)

さあ。ここが私の部屋ですよ。 どうぞ入ってださい。先輩。 いや、そんな所在なさげに立ち尽くさないで、 そこのクッションの上にでも、座ればいいんですよ。 ふふっ。結構座り心地良いでしょう?そのクッション。 私のお気に入りなんですよ。 ん。なんですせんぱい。 ああ、親ならいませんよ。 先輩がお泊りするこの二日間は、帰ってきません。 仕事……みたいな感じですかね。はい。 あ、差し入れ持ってきてくれたんですか。 気を遣わせちゃいましたね。 じゃあ私から渡しておきます。ありがとうございます。先輩。 ……さてと。じゃあ、アレですね。 早速ですが、イチャイチャしましょうか。せんぱい。 いや、何動揺してるんです? 当然じゃないですか。彼氏彼女のお泊り会なんですから。 イチャイチャすること以外、することないですよ。 それともなんですか? 先輩はしたくない感じですか? 可愛い後輩彼女との、イチャイチャ。 したい……ですよね?せんぱい? ふふっ。お顔、赤いですよ。 先輩のそーいうウブなとこ、 「ちょっとかわいいな」って、思います。 じゃあ先輩。イチャつきましょう。 まずは、そうですね…… こんなのはどうでしょうか。先輩。 ぎゅーーーーう。 ふふっ。ハグしちゃいました。 あったかくて良い感じですね。先輩の体。 ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅーーう。 ほら、先輩も私の事、抱きしめ返してください。 いや無理って。ハグ一つで緊張しすぎですよ。 大丈夫です。抱きしめるの下手でも、許してあげますから。 だからほら先輩。 かわいい年下彼女の体、ぎゅってしちゃいましょう? ん。そーです。 このままいっぱい抱きしめ合いましょうね。先輩。 ぎゅっ。ぎゅっ。ぎゅっ。ぎゅっ。 ぎゅーーーーーーーう。 すぅ……。ふぅ……。(耳元で呼吸音1回) ふふっ。 ねー先輩。 先輩って、女の子と抱きしめあうの、初めてですか? ふふっ。まーそうですよね。 そんだけ緊張してますもん、そりゃあ初めてですよね。 じゃあ、先輩。ハグ初体験の感想、私に聞かせてもらえますか? なるほど。気持ちいいと。 ちょっとエッチな回答をしますね。この先輩は。 まあでも。そうなんですよ。先輩。 柔らかくて、いい匂いがして、多幸感に包まれて。 とっても気持ちいい。 女の子とのハグって、そういうものなんです。 良かったですね、先輩。こんな幸せなこと経験できて。 昨日頑張って、私に告白した甲斐がありましたね。 ふふっ……。 すぅ……。ふぅ……。 すぅ……。ふぅ……。(呼吸音×2回) ……あ。そーいえば先輩。思い出しましたけど。 私、まだ先輩に一度も、「好き」って言ってもらってないんですよね。 はい。言ってもらってませんよ。 昨日の告白、「踊らないか」のひとことで済まされちゃいましたし、 そのあとのやり取りでも、全然言われた覚えがありません。 だから先輩。私、言って欲しいです。 「このはのこと、大好きだよ。」って。 ね。いいですよね、先輩。 先輩は私の事、告白しちゃうくらい大好きなんですから、言ってくれますよね? ほら、言って下さい。せんぱい。 ふふっ。ありがとうございます。 耳元で「大好き」とか言われると、流石に照れちゃいますね。 えへへ……。 ん?私ですか? 私はまぁ……そうですね……。 先輩のことは、「そこそこ好き」、です。 はい。そこそこですよ。そこそこ。 「彼氏にしてもいいかなー」って程度の、中途半端な好感度ですね。 ……おや。なんですか先輩。ちょっと不満そうですね。 私にも言って欲しかった感じですか? 「先輩の事、大好きです」って。 いやだなー。メンヘラさんですねーこの先輩は。 惚れて告白してきた先輩と、それを受けてあげた私。 感情に差があるのは当たり前なんですから、 変な期待しちゃダメですよ、まったくもう……。 いや。そんなに気を落とさないでください、先輩。 これからですよ。これから。 だって私はもう、先輩の彼女なんですから。 お付き合いしていく中で好感度が変化して、 先輩の事大好きになる可能性も、大いにある訳です。 そうでしょう? ええ。ですから頑張ってください。先輩。 私に大好きになってもらえるよう、彼氏としてアプローチ。 期待してますよ。ふふっ。 ……あ。そうだ先輩。じゃあせっかくですから、 「私に大好きになってもらえる効果的なアプローチ方法。」 教えてあげてもいいですよ。 ええ。このはちゃん本人が、直々に伝授しちゃいます。 聞きたいでしょう? 先輩。 ん。じゃあ教えちゃいます。 私に簡単に、大好きになってもらう方法。 それはですね、先輩…… 私と。えっちなことをすればいいんです。 そーです。えっちなことです。 私、実はこう見えて結構、好奇心旺盛なので。 先輩が私と、えっちなことをしてくれるのでしたら、 すぐに先輩のこと、大好きになっちゃうと思います。 なので、どうですか先輩。今からでも。 私とエッチな事……しませんか? ん……。なにを迷ってます? 「肉体関係を持つには流石に早い……。」とか、考えてますか? そうなんですね。なるほど……。 なら、良いんですね、先輩。 私に大好きになってもらわなくても。 「そこそこ好き」程度の愛情で、満足なんですね。 そーいう意味でしょう? 違いませんって。 じゃあ先輩。そーいうことでしたら、 ハグはもうおしまいにしましょう。 私、進展の見込みがない「そこそこ好き」程度の人とは、 そんなに長時間抱きしめ合いたくないので、離れることにします。 あと、会話ももう辞めましょうか。先輩。 「そこそこ好き」程度の人とする雑談は、 あんまり面白くないので、 これからは事務連絡以外、しないことにしましょう。 ふぅ……。さてと。 それではそこそこ好きな人はほっといて、 漫画でも読むとしましょうか。 先輩がさせてくれない分、ちょっとえっちな漫画でも、読んじゃいましょうかね……。 えーっと確か、あの漫画はリビングの本棚に並べたはず……。 取りに行かなきゃですね……。 ん、しょ……っと。 ……ん? なんですか?そこそこ好きな先輩さん。 何か、事務連絡でもありますでしょうか? ふっ……。ふふふっ。 最初からそう言えばいいんですよ。 おバカさんですね。この先輩は。 では、しましょうか。エッチな事。 私のベットの上、寝ちゃってください。先輩。