そこそこ好き(大好き)
さあ。ここが私の部屋ですよ。
どうぞ入ってださい。先輩。
いや、そんな所在なさげに立ち尽くさないで、
そこのクッションの上にでも、座ればいいんですよ。
ふふっ。結構座り心地良いでしょう?そのクッション。
私のお気に入りなんですよ。
ん。なんですせんぱい。
ああ、親ならいませんよ。
先輩がお泊りするこの二日間は、帰ってきません。
仕事……みたいな感じですかね。はい。
あ、差し入れ持ってきてくれたんですか。
気を遣わせちゃいましたね。
じゃあ私から渡しておきます。ありがとうございます。先輩。
……さてと。じゃあ、アレですね。
早速ですが、イチャイチャしましょうか。せんぱい。
いや、何動揺してるんです?
当然じゃないですか。彼氏彼女のお泊り会なんですから。
イチャイチャすること以外、することないですよ。
それともなんですか?
先輩はしたくない感じですか?
可愛い後輩彼女との、イチャイチャ。
したい……ですよね?せんぱい?
ふふっ。お顔、赤いですよ。
先輩のそーいうウブなとこ、
「ちょっとかわいいな」って、思います。
じゃあ先輩。イチャつきましょう。
まずは、そうですね……
こんなのはどうでしょうか。先輩。
ぎゅーーーーう。
ふふっ。ハグしちゃいました。
あったかくて良い感じですね。先輩の体。
ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅーーう。
ほら、先輩も私の事、抱きしめ返してください。
いや無理って。ハグ一つで緊張しすぎですよ。
大丈夫です。抱きしめるの下手でも、許してあげますから。
だからほら先輩。
かわいい年下彼女の体、ぎゅってしちゃいましょう?
ん。そーです。
このままいっぱい抱きしめ合いましょうね。先輩。
ぎゅっ。ぎゅっ。ぎゅっ。ぎゅっ。
ぎゅーーーーーーーう。
すぅ……。ふぅ……。(耳元で呼吸音1回)
ふふっ。
ねー先輩。
先輩って、女の子と抱きしめあうの、初めてですか?
ふふっ。まーそうですよね。
そんだけ緊張してますもん、そりゃあ初めてですよね。
じゃあ、先輩。ハグ初体験の感想、私に聞かせてもらえますか?
なるほど。気持ちいいと。
ちょっとエッチな回答をしますね。この先輩は。
まあでも。そうなんですよ。先輩。
柔らかくて、いい匂いがして、多幸感に包まれて。
とっても気持ちいい。
女の子とのハグって、そういうものなんです。
良かったですね、先輩。こんな幸せなこと経験できて。
昨日頑張って、私に告白した甲斐がありましたね。
ふふっ……。
すぅ……。ふぅ……。
すぅ……。ふぅ……。(呼吸音×2回)
……あ。そーいえば先輩。思い出しましたけど。
私、まだ先輩に一度も、「好き」って言ってもらってないんですよね。
はい。言ってもらってませんよ。
昨日の告白、「踊らないか」のひとことで済まされちゃいましたし、
そのあとのやり取りでも、全然言われた覚えがありません。
だから先輩。私、言って欲しいです。
「このはのこと、大好きだよ。」って。
ね。いいですよね、先輩。
先輩は私の事、告白しちゃうくらい大好きなんですから、言ってくれますよね?
ほら、言って下さい。せんぱい。
ふふっ。ありがとうございます。
耳元で「大好き」とか言われると、流石に照れちゃいますね。
えへへ……。
ん?私ですか?
私はまぁ……そうですね……。
先輩のことは、「そこそこ好き」、です。
はい。そこそこですよ。そこそこ。
「彼氏にしてもいいかなー」って程度の、中途半端な好感度ですね。
……おや。なんですか先輩。ちょっと不満そうですね。
私にも言って欲しかった感じですか?
「先輩の事、大好きです」って。
いやだなー。メンヘラさんですねーこの先輩は。
惚れて告白してきた先輩と、それを受けてあげた私。
感情に差があるのは当たり前なんですから、
変な期待しちゃダメですよ、まったくもう……。
いや。そんなに気を落とさないでください、先輩。
これからですよ。これから。
だって私はもう、先輩の彼女なんですから。
お付き合いしていく中で好感度が変化して、
先輩の事大好きになる可能性も、大いにある訳です。
そうでしょう?
ええ。ですから頑張ってください。先輩。
私に大好きになってもらえるよう、彼氏としてアプローチ。
期待してますよ。ふふっ。
……あ。そうだ先輩。じゃあせっかくですから、
「私に大好きになってもらえる効果的なアプローチ方法。」
教えてあげてもいいですよ。
ええ。このはちゃん本人が、直々に伝授しちゃいます。
聞きたいでしょう? 先輩。
ん。じゃあ教えちゃいます。
私に簡単に、大好きになってもらう方法。
それはですね、先輩……
私と。えっちなことをすればいいんです。
そーです。えっちなことです。
私、実はこう見えて結構、好奇心旺盛なので。
先輩が私と、えっちなことをしてくれるのでしたら、
すぐに先輩のこと、大好きになっちゃうと思います。
なので、どうですか先輩。今からでも。
私とエッチな事……しませんか?
ん……。なにを迷ってます?
「肉体関係を持つには流石に早い……。」とか、考えてますか?
そうなんですね。なるほど……。
なら、良いんですね、先輩。
私に大好きになってもらわなくても。
「そこそこ好き」程度の愛情で、満足なんですね。
そーいう意味でしょう?
違いませんって。
じゃあ先輩。そーいうことでしたら、
ハグはもうおしまいにしましょう。
私、進展の見込みがない「そこそこ好き」程度の人とは、
そんなに長時間抱きしめ合いたくないので、離れることにします。
あと、会話ももう辞めましょうか。先輩。
「そこそこ好き」程度の人とする雑談は、
あんまり面白くないので、
これからは事務連絡以外、しないことにしましょう。
ふぅ……。さてと。
それではそこそこ好きな人はほっといて、
漫画でも読むとしましょうか。
先輩がさせてくれない分、ちょっとえっちな漫画でも、読んじゃいましょうかね……。
えーっと確か、あの漫画はリビングの本棚に並べたはず……。
取りに行かなきゃですね……。
ん、しょ……っと。
……ん?
なんですか?そこそこ好きな先輩さん。
何か、事務連絡でもありますでしょうか?
ふっ……。ふふふっ。
最初からそう言えばいいんですよ。
おバカさんですね。この先輩は。
では、しましょうか。エッチな事。
私のベットの上、寝ちゃってください。先輩。