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第1話・魂の形

[夕方、主人公の住むマンションのそば] (人目につき辛い木陰で、栄養失調の症状で意識が朦朧としているアリエッタ) 【正面・中距離】 はぁ、はぁ……なんてことかしら…… もう一週間も失敗続き……そろそろ魂を頂かないと、意識を保っていられないわ…… はぁ……はっ……はぁ…… (それを見かけて声をかける主人公) 【正面・中距離】 えっ……貴方、私のことが見えるの? 【正面・近距離】 ああ、仲間というわけね…… そういうことなら申し訳ないけれど、一度、上まで連れて行ってもらえるかしら? 少々ヘマをしてしまってね。一度出直すことにするわ…… (主人公に抱き抱えられて運ばれるアリエッタ) 【右側・至近距離】 んっ…… はぁ……はぁ……貴方、温かいのね……(主人公は死神ではなく人間なので) ん、ふぅ……はぁ、はぁ、はぅ……ふぁ……はぁ、はぁっ…… (苦しそうな息を漏らしながら、主人公の生気の影響もあり、腕の中で眠りにつく) [数時間後、マンションの一室の主人公の部屋] 【正面・中距離】 (ベッドの上で目覚めるアリエッタ) ん……あら、ここは……? 天界……ではないわよね。 (近くで携帯を触ってる主人公に気づく) あっ、さっきの…… あなた、どうして私をこんな所に……? 「上に運んで」と頼んだと思うのだけれど…… (ベッドに近づいてくる主人公) 【正面・近距離】 (主「だから僕の部屋まで上げたんだけど」) んーっと、少々待って貰える?どうもお互いの認識に齟齬があるようね。 一度整理しましょう。 あなた……死神ではないの? (主「死神……?」) そう……なら全て合点がいくわ。 だったらここはあなたの家……「上に」というので、このマンションのあなたの部屋まで連れてきてくれた、ということね。 そう……定命(じょうみょう)の者の住処というのは、どこか生気を感じられる……だから体調も少しはマシになったように思えるのかしら。 だけれど、死神であるこの私が地上の人のお世話になるなんて……きっと許されないことだわ。 でも……もう動けそうにないみたい…… 私はここで終わりね……死神としての役目も果たせないまま、ここで消えて無くなる運命なのよ。 (目の前に"魂"があることに気づき、ダメ元で頼んでみようとする) はぁ、はぁ……ん……あなた……こっちに来てくれる? (ベッドのアリエッタに近づく主人公) ええ、そう……もう少し…… 【正面・至近距離】 (手の届く位置まで来た主人公の頬に手を当てる) はぁ……はぁ……あなた、とてもいい匂いがするわ…… 生気の溢れる、新鮮な魂の匂い…… ……一つ、お願いがあるのだけど、いいかしら? (口を開かせるように、親指を主人公の唇に這わせる) あなたの魂、少しだけ、私に味わわせて貰えないかしら? 勿論、魂を奪うような真似はしない。 少し、ほんの少しだけの魂を、私の中に注ぎ込んで欲しいの。 そうしたらすぐに、あなたの元へお返しするわ。 (弱々しく懇願するように) 詳しいことは後で説明するから……お願い…… もう限界なの……これ以上は私、本当に消えてしまうわ…… (主「そこまで言うのなら、どうぞ」) えへ……ありがと。 死神だなんて名乗る女に、あなたは優しくしてくれるのね…… では、じっとしていて……少し目眩がするかもしれないけれど、すぐに終わるわ…… (魂の一部を一時的に取り込むため、手っ取り早く安全な方法としてキスをする) (唇でゆるく食むように、少しだけ吸う動きも絡めて) 【キス】 ん……んむ……んちゅ、ちゅぷ、ちゅ…… ぢゅる、れる、んむ、ちゅぷ、んぷ……えぷ、れりゅ…… (初めて味わう"生きた"魂の味に感動し、心を震わせているアリエッタ) ぷぁっ……はふっ……元気な魂がこんなに美味だなんて……んぷ、ぢゅる、んちゅ……知らなかったわ…… これは……んむ、ちゅ、えりゅ……禁忌の味わいね…… もう少しだけ……れる、れりゅ、えぷ……ちゅぷ、んむ…… (魂の味と得られる生気、キスによる高ぶりも重なって徐々に体が熱くなってくるアリエッタ) んむ、んちゅ、れる……んむ、んちゅ、ちゅぷ……んふっ……んむ、ちゅ、りゅぷ、れる…… れる、ぇぷ、ぢゅる、ちゅぷ……ちゅる、ぢゅるる……んぷ、ぷぁ、ぁぷ…… んちゅぅ、ちゅ、ちゅぷ……んぷ、んっ、んぷ、んっ…… (両頬に手を当てたままゆっくりとキスを中断し、とろけた眼差しで主人公を見つめる) 【正面・至近距離】 はぁ、はぁ……はふぅ…… ん……お陰で、かなり良くなったわ。 まだ少しフラフラしているけれど、貴方の魂から頂いた生気が、体中に染み渡っているのを感じるわ…… この調子なら、じきに治ると思う。 ありがとう、人間さん。 (主「そろそろ君のこと教えてくれる?」) ええ、約束だものね。私のこと、教えてあげるわ。 (頬から手を離し、視線をそらすアリエッタ) 【正面・近距離】 私は死神……と、貴方達定命の者が呼ぶ存在よ。 天界より派遣された、いかなる命にも平等に訪れる"終わり"を告げ、その魂を回収する存在…… 死というのは覚悟を持った者へ訪れる事もあれば、偶発的に、突然やって来る事もあるの。 でも、それらは全てアカシックレコード……わかり易く言えば“運命”に定められているわ。 私達の仕事はそれに則り、死によって開放される魂から生前の苦しみなんかを浄化して、安全に天界へ届けること。 天界へ届けられた魂はそれぞれに必要な期間だけ安らぎを与えられた後、転生を待つことになるの。 (これまでに失敗を思い出し、暗い表情になる) だけれど……私はもう二度も失敗を…… 私たちが存在を保つためには、回収した魂を浄化する際に削ぎ落とされる、生への執着や未練といった、魂のかけらを摂取する必要があるの。 最近になってようやく地上での仕事に就いたはいいけれど、もう何度も失敗を続けてこの有様、ってわけ。 笑っちゃうでしょう? (主「具体的にはどんな仕事を?」) 具体的には……そうね。 私の担当は、これから起こる事象によって、突発的な死を迎える命から魂を回収することよ。 わかりやすく言うと、事故や急性の病気で回復不可能に損傷した体から、魂を刈り取ることなの。 けれど仕事だとはいえ、この手で直接目の前の命を奪うことは……私にはできなくて。 躊躇ったところで定められた結果を変えられるわけがなく、対象にはもっと苦しんだ上での、悲惨な最後が訪れる…… 生命の終焉に安らかなる死を迎えられなかった魂には、死に至るだけの痛みや苦しみが与えられる事になるのは分かっているのに…… 本当に、自分勝手で愚かな死神よね。 (主「分かったようなわからないような感じだけど、応援するよ」) あら。応援、してくれるの? あなたたち人間にとってみれば、私たちは恐怖の象徴でもあるのに? (主「でも、それは救いでもあると思うんだ」) えへ……そんなこと言ってもらうのは初めてだわ。 そうね、これ以上の不必要な苦しみからの救い……そういう見方もできるのね。 (人間からそんな言葉をもらうとは思ってなかったので、少しだけ心が晴れやかになる) うふふ……まさか、人間に助けられた上に説教されてしまうなんて、思ってもみなかったわ。 定命の者は普通、私達の存在に気付くことはないもの。 貴方はなぜ私のことが見えるのかしら。 (主「さあ?なんでだろ」) うふ。不思議ね。 でも、ありがとう。 私、もう少し、頑張れそうな気がするわ。 そういえば、あなた。少し体が軽くなったように感じないかしら? (主「そういえばそんな気も……」) うふふ、気のせいなんかではないのよ。 貴方の魂の老廃物……不安や悲しみ、暗い気持ちなんかを少しだけ浄化したの。 さっきも言った通り、私達は存在を保つために魂のかけらを利用するのだけれど、それはほんの小さなもので十分なの。 魂の老廃物は体の疲労と一緒で、解消しない限りあなたの情動や思考に悪い影響を与え続けるわ。 勿論ない方がいいものだから、私が頂いてしまったというわけ。 (主「お腹が空いたらいつでもどうぞ」) うふふ、そうね……もしまた私が倒れそうになった時、側に貴方がいたならば…… その時は、また頼らせてもらってもいい、かしら。 (主「もちろん」) ふふ、ありがたいわ。 (主「えっと……」) ああ、私の名前ね。 私はアリエッタ、仮免許実習中の死神よ。 貴方の名前は……今は聞かないわ。 貴方のことを詳しく知ると、同時にあなたの運命もわかってしまうもの。 (主「そうなんだ」) ええ、そういうものなの。 それじゃ、行くわね。 (腰掛けていたベッドから立ち上がる) 【正面・中距離】 今日は本当にありがとう。 また、会えたらいいわね。 (主「うん」) でも、また会えると言うことは、私の仕事がうまくいっていない……と言うことになるのよね。 (少し寂しそうにする主人公) ふふ……でも、あなたにとっては間違いなく、そうみたい。 きっとこれは運命ね……私と貴方の。 貴方もそう、思うでしょう? (満更でもない表情を浮かべる主人公を見て嬉しいアリエッタ) うふふv

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