『あなたに「告白」をする文香』
;このトラックのマイク位置は、兄を基点としています。
;SE:ノックをする音
;SE:扉を開く音
;ボイス位置:1 入り口のところで、普通に会話
【文香】
「兄さん。夜遅くにごめんなさい」
【文香】
「部屋、暗いですね。あ、ベッドに横になったままで大丈夫です……少し、お話がしたいだけなので」
;SE:文香がベッドの近くまで歩いてくる足音
;ボイス位置:3 隣に座って、普通に会話
【文香】
「お話というのは、その……私の気持ちのことです」
【文香】
「急でごめんなさい。けれど、ようやく踏ん切りがついたので……お伝えしに来ました」
;沈黙を挟む
【文香】
「私……兄さんのことが好きでした」
【文香】
「昔から、女の子として……兄さんのことが好きでした」
【文香】
「お弁当を毎日作っていたのも、膝枕で耳かきをしたがったのも、お休みのたびに買い物に誘っていたのも、ぜんぶ……兄さんのこと、好きだったからです」
【文香】
「私たち、義理とはいえ、兄妹です。だけど私は……兄さんと一歩進んだ関係性になりたいって、そう思っていました」
【文香】
「兄さんの気持ち、聞かせて、貰えますか?」
;沈黙を挟む
【文香】
「何も言ってくれない……ですか」
【文香】
「……あはは。兄さんは、そんなリアクションをするんじゃないかなって、思ってました」
【文香】
「困ったように笑って、しどろもどろで、優柔不断で……兄さんのそういうところ、昔から変わりませんね」
【文香】
「そういうところ……兄さんの長所だって思ってました。優しい人なんだなって……」
【文香】
「でも、違ったんですね。兄さんは、優しいんじゃなくて……ただ、自分に自信がもてないだけで……」
【文香】
「こうして私が勇気を出してお話をしているのに……ほら。また目を逸らした。昔からずっと、そうです」
【文香】
「お弁当の味付けを変えても、前髪を切っても、香水をつけても……兄さん、ぜんぜん、気付いてくれません」
【文香】
「私。勘違い、していたみたいです。優しい人が好きなんじゃ……なかったんです」
【文香】
「私のことを、ちゃんと見てくれる人。ちゃんと気持ちを言葉にして、行動にして、伝えてくれる人」
【文香】
「告白されたと言ったら、絶対に断れって、強く言ってくれる人……」
【文香】
「乱暴でワガママで身勝手で、いろんな悪いうわさがある人でも……肝心な時に目を逸らすような人より、ずっとずっと……素敵なんだって、気付いちゃったんです」
【文香】
「私のこと、好きなのかどうかも教えてくれない、気持ちを見せてくれない、そんな人より……私、あの人のことが好きなんだ……って」
【文香】
「……勝手に片想いして、勝手にこんなことを喋りに来て、ごめんなさい。これからは、ちゃんと、兄妹らしい距離感で、兄さんに接することにします」
【文香】
「伝えたかったのは、それだけなんです。ごめんなさい。今まで、ベタベタしちゃって」
;SE:文香のスマホが着信する音(バイブ)
【文香】
「あっ……すみません。電話、かかってきちゃいました。それでは兄さん。これで……」
;SE:文香が退室する足音
;SE:ドアを閉める音
;扉越しに、会話している文香の声が聞こえる
;ボイス位置:9 スマホに向かって、普通に会話
【文香】
「せ、先輩? どうしたんですか、こんな夜中に」
【文香】
「今から、先輩の家に……?」
【文香】
「は、はいっ▼ すぐ行きます。あの、持っていくもの、ありますか? カワイイ服とか、エッチな下着とか……」
【文香】
「そ、それじゃあ先輩。また……後で▼」