格ゲーメスガキとの出会いから、ゲーム勝負まで
「……ん……おっ?」
「……やってるやってる……ふふっ」
「こんにちはっ♪ ねぇおじさん、それオンライン対戦やってるの?」
「ふーん、そうなんだ」
「この格ゲー、家庭用も出てるのに、わざわざゲーセンに来てまでネット対戦やるって、よっぽど物好きじゃない?」
「その熱中っぷりだと、今日はじめて触ったってわけでもなさそうだし」
「あたし? あたしはたまたま寄っただけだし」
「……にしてもさ、な~んかおじさん弱すぎない? さっきから全然勝ててないじゃん」
「ねぇ『対空』って知ってる? 相手のジャンプ攻撃を落とせないと、ヤラレ放題になっちゃうよ?」
「あー、今のコンボミスは痛い。ダメージ取れるところで取っとかないと~」
「ん~今の中段は立てなきゃダメでしょ。反応悪すぎ~」
「いやぁ……そこでその技は確反もらっちゃうって」
「ほらね」
「はい残念~ ま、け!」
「ぷぷっ、悔しそうな顔! おじさんかわいそ~。なけなしの百円、ドブに捨てちゃったようなもんだね♪」
「……あーあ、落ち込んじゃった! なっさけな~い」
「おじさんみたいなザコちゃんはぁ、飴でもチュパチュパして、元気だそ? はい、飴あげる」
「それにしてもおじさん、へたっぴだね♪ もっとおうちでトレーニングしなよ~」
「え、何? あたしが後ろからうるさかったから負けたって?」
「う~わダッサ! 自分が弱いだけのくせに、人のせいにするのヤバすぎ~ マジありえないんだけど」
「どんだけ格ゲーやってるの? え、まじ? そんな長くやってる割に弱くない? もっかい初心者からやりなおしたら?」
「素人よりはそこそこできるっぽいけど、あたしに言わせたらドヘタだね」
「……あ、傷ついた? ごめんねぇ~そんなにメンタル弱いだなんてぇ、あたし知らなかった~♪」
「あっ、そ~だ! ねえおじさん、ここで会えたのもなにかの縁だしさぁ……」
「あたしとおじさんで、対戦してみない?」
「あ~、今笑ったでしょ? あたしこう見えても結構強いんだよ?」
「いつもおうちでネット対戦やってるし、大会とかにだって出てるもん」
「ネット記事にだって名前載ったことあるし、SNSとかだと結構有名なんだけどなぁ~?」
「あたし、ミトラっていうんだけど、知らない? ミートーラ!」
「えぇ~、マジかぁ。結構フォロワー多いのになぁ」
「じゃあさ、あたしのランク帯教えてあげよっか? 聞いたらきっとびっくりするよ」
「はぁ? 聞くまでもないって? 人のことバカにしすぎじゃない?」
「いいよ、そこまで言うなら勝負する? あたしが弱いっていうなら、もちろん受けて立つよね?」
「言ったね? じゃあやろっ♪」
「あ、言っとくけどお互い手加減なしだからね? あとになって、女の子相手だから手加減しちゃった~とか言うの禁止だよ」
「本気でおいでよ。分からせてあげるからっ」
「ふふ、あたしのことバカにした仕返しに、絶対恥かかせてやるんだから……♪」
「じゃあ2先でやろっか。2ラウンド先取制、先に2回勝ったほうが勝者だよ!」
「ちょうど隣の筐体が空いてるし、こっちでやらせてもらうね」
「あ、そうだ」
「ねぇおじさん、どうせなら罰ゲーム決めようよ。そのほうが盛り上がるでしょ?」
「あたしが負けたら、そうだね~……おじさんのことバカにしたことは謝るし、あたしに勝てたこといっぱい褒めてあげる♪」
「でも、あたしが勝ったら……ふふっ、あたしのいうこと、いっこ聞いてもらおっかな」
「大丈夫大丈夫! ジュース買ってとか、ぬいぐるみ取ってとかそういうのだからぁ」
「……多分ね」
「ふふ~ん、じゃ、まずは軽く小手調べ~」
「えい、えい……とう、とう!」
「うわ~おじさんつよい~やばいよ~このままじゃ負けちゃうよ~え~ん」
「あ~体力ゲージもちょっとだ……追い詰められた~……」
「な~んちゃって♪」
「様子見終了!」
「もういいよ、今のでおじさんの実力、ぜぇ~んぶわかっちゃったから~」
「言っとくけど、あたし容赦しないからね!」
「おじさんの動き見てるとよく分かるよ、投げキャラ苦手でしょ? 対策も知らなそうだし!」
「ごめんね~、あたしそういうのすぐ分かるんだ♪」
「遠慮なく、ガンガン投げてくから……ねっ!」
「ハイ、1ラウンドもっらい~。らっくしょ~~」
「うーわ、舐めてかかってたのバレバレ! 顔真っ赤になっちゃってるぅ~ぷぷ!」
「はぁ~、腕が鳴るぅ~。やっぱり格ゲーはオフでやるのが熱いよね♪」
「ささ、次々ぃ~!」
「もうお互い様子見は終わったし、最初から本気でやってってもいいよね?」
「ほらほら、どうした~? 逃げてばっかりじゃこっちのペースだよ? ん? ん?」
「あたしのジャンプ攻撃、全然対応できてないじゃん! 対空下手すぎて笑っちゃうんですケド~!」
「はい投げ抜け~! そんな子供騙し通用しませ~ん!」
「思考わっかりやす~い! おじさんほんと格ゲー下手ぁ! ザコぉ!」
「コンボだってズタボロだし、コマミス多すぎ! 何年格ゲーやってんの!?」
「うわ、わっかりやすいパナシ~! 顔真っ赤なの??」
「あっ、ハイ今の反撃不可です! おつかれさまでした~!」
「残念~。激弱~。2ラウンド目もよゆーで勝っちゃった♪」
「これだったらわざわざメインキャラじゃなくてもよかったな~! サブキャラの練習台にちょーどよさそう」
「さ、早くコイン入れてー。どんどんいこ~」
「おっ、さっきと動き違うじゃん。もしかして戦法変えてきた~? いいよいいよ、格ゲーマーはそうでなくちゃね!」
「あ、待って待って今の立ってたのに~! なんで食らっちゃうかな~?」
「む~、こっちの手の内みて、ようやく本気出したって感じ? ちょっとはやるじゃん」
「じゃあこっちも戦い方変えてみよ! これはどうさばく~?」
「お~っと、さっきまでの攻めはどうしたの~? そんなんじゃやられ放題だよ?」
「あーらら、形勢逆転~。はい、今度はこっちの番だよっ」
「さっきまでのお返し!」
「はい勝利~。ちょー余裕~。またまたあたしが勝っちゃったね!」
「これで最後~!」
「な~んかもう飽きてきちゃったし、さっさと決めちゃおっかな~」
「ほらほら、どしたどした~? 本気出さないとこんなお子様にストレート負けしちゃうよ~? いいのかな~?」
「はい勝利ー! 1ラウンドも取られることなく終了♪」
「おじさん、びっくりするぐらい弱いんだねっ。ざっこ~! もっと精進しなきゃ~」
「ねぇ悔しい? ねぇ今どんな気持ち? ねぇ、ねぇ?」
「うわ、おじさん顔こわ~い。誘拐されちゃうぅ~」
「ははは、顔真っ赤にしちゃって面白~い♪」
「さ、あたしが勝ったことだし、どんな言うこと聞いてもらおっかな~」
「ん? 忘れたの? 罰ゲームだよ、罰ゲーム。負けたらあたしの言うこと、なんでもひとつ聞いてもらうんだからね」
「まさか、あたしにボロボロに負けたくせに、このままノコノコ帰れるなんて思ってないよね?」
「うん、よろしい!」
「う~~ん、そうだなぁ。じゃ~あ~……」
「おじさんに、あたしのおもちゃになってもらおっかな♪」
「ん? 聞こえなかった? おじさんが、あたしの、おもちゃに、なるの!」
「いや、うぅん、おもちゃが欲しいとかじゃなくてぇ……あ~もうめんどくさい!」
「はいおじさん、目つぶって! 絶対あけちゃダメだからね……!」
「あたしが手ひいたげるから、なにも言わずついてきて」
「いいとこ連れてってあげるから!」
「ほらはやく、ぐずぐずすんなぁ~……!」