Track 1

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嵐の夜。家出JKを拾う

○トラック01.あらしのよるに。家出JKを拾う 【美鳥】 「おじさん。ありがとう……かも」 【美鳥】 「うん……お風呂と、着替えと、ご飯。助かった。朝から何にも食べてなかったから、おうどん美味しかった」 【美鳥】 「あー。この土砂降り、台風だったんだ。なるほど。どうりで止まないわけだね」 【美鳥】 「うん。美鳥、スマートフォン持ってないから知らなかった」 【美鳥】 「仕方がない。美鳥は今日、家出したくなった。天気に左右される家出なんてこの世にない。多分」 【美鳥】 「名前? 美鳥は、美鳥っていう。青葉、美鳥」 【美鳥】 「うん、そうだよ」 【美鳥】 「おじさん、何で美鳥の通ってる学校、わかったの?」 【美鳥】 「制服でわかった……の? すごい。美鳥、自分の通ってるとこの制服以外、一つも知らない」 【美鳥】 「……おじさんの情報が増えた。ちゃんと覚えとく」 【美鳥】 「うん。おじさんは、とっても親切。あと、おうどん作るのが上手。それと、女の子の制服にも詳しい」 【美鳥】 「今のところ、この三つ。すごい。三つも長所がある」 【美鳥】 「……? なんだか微妙そうな顔、かも。まあ、いいや」 【美鳥】 「ねえ、おじさん。美鳥、とってもお世話になったよね」 【美鳥】 「お礼がしたい。美鳥にして欲しいこと、何かある?」 【美鳥】 「お礼、いらないの? おじさん、ちょっと変わってるかも……それならどうして、こんなに良くしてくれるの?」 【美鳥】 「美鳥が困ってたから、助けてあげたかった、だけ?」 【美鳥】 「……え。他に、欲しいもの? まだ、くれるの? 本当に優しいおじさんだね」 【美鳥】 「う~ん。お金は別にいらないかも。美鳥、買いたいものとかないし」 【美鳥】 「他に、欲しいもの。欲しいもの……」 【美鳥】 「あ。あった、かも。これ。いま美鳥が着てる、おじさんのカッターシャツ。これ欲しい」 【美鳥】 「うん。匂いが、なかなか好み。心が落ち着く」 【美鳥】 「…? いい匂いとは言ってない。どっちかというと、くさいほう、かも」 【美鳥】 「でも、なんかいい。これ。くんくんすると安心する」 【美鳥】 「くれるの? やった。ありがとう」 【美鳥】 「おじさん、長所が四つ目。シャツを惜しげもなく、くれる。いい人だ」 【美鳥】 「美鳥さえ良ければ、暫くここにいていいの?」 【美鳥】 「んー。あのお家に帰らなくていいのなら。美鳥としてはそれ、すごく助かるけど」 【美鳥】 「おじさん、迷惑じゃない? せっかくの一人暮らしなのに。美鳥が住み込んだら窮屈かも」 【美鳥】 「ふぅ~ん。一人は一人で寂しいもの、なんだ? そっか。なら美鳥、ここにいてあげる」 【美鳥】 「うん。美鳥はお家に帰らなくて良くてラッキー。おじさんは寂しくなくてハッピー。いいことづくめ、かも」 【美鳥】 「あ、でも一つだけ。美鳥、けっこう飽きっぽい性格だから、ある日フラッと消えちゃうかも」 【美鳥】 「それでもいい? うん。なら美鳥、しばらくここでお世話になる。よろしくお願いします」

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