「くっ……覚えてなさい!」
「……依頼は……失敗みたいね……。不覚……とんでもない不覚だわ……」
「えっ? でも楽しかったから良い、ですって?」
「ま、まあ、私も楽しく依頼をこなせたのは間違いないけど……それでも……失敗は失敗だから」
「次は便利屋総出で先生を寝かし付け、しちゃおうかしら……物理的に寝かし付けしそうな子もいるけど……背に腹は代えられないものね、先生?」
「えっ? そしたら両耳同時に攻められてパラダイス、ですって!?」
「そうは言うけどね、先生? 4人よ? 4人。たまにいる耳が4つある生徒じゃないんだし、耳を攻めるにしても2人余っちゃうわ」
「……そのときはそのときでいろいろと寝かし付けて貰う、ですって……? 流石先生……大人はいろいろ知っているのね……」
「……」
「……と、それはそうと先生、結局寝かし付けられなかったわね……どうしようかしら……」
「……ん? 寝かし付けの仕上げに手を握っていて欲しい、ですって?」
「べ、別に……それぐらいなら全然構わないけど……ここまで丹精込めて寝かし付けをしたのに、手を繋いだくらいで寝かし付けられるなら苦労はしないわよ、先生?」
「……」
「……っていうか、アレね。手袋のまま繋いじゃってるけど……こ、こういうときはも、もしかして……ちょ、ちょちょちょ直接手を繋いだ方が良いのかしら!?」
「そ、そもそも先生? もう繋いじゃってるけど……手を繋ぐっていうのはどうなのかしら!? 私と先生、生徒と先生の関係で手を繋ぐって言うのは……」
「ち、違うわよ!? べ、別に嫌だとかそういうのはないわ! ただこう……大分こう……ハードボイルドでアウトローなんじゃないかなーと思ったり……するわけよ」
「も、もちろん!? ハードボイルドでアウトローなのは大歓迎よ!? 望むところでどんとこい! ね?」
「……つ、次の機会があったら手袋を取って手を繋いであげちゃうわ! ふふっ、社長たるもの、クライアントの隠れた要求にも気付いて応えるのも当然よね!」
「でもアレね……。また寝かし付けとなったら……他に何をしてあげたらいいのかしら。されて眠くなるようなこと……」
「文字ばかりの書類に目を通していると眠くはなるけれど……それは寝かし付けとは違うし……うーん……難しいわね」
「次の依頼までちゃーんと調べておくわ。折角だし便利屋の面々にも聞いてみようかしら。もしかしたら何か良いアイディアも出るかもしれないし」
「……そ、そういえば……ちょっと長めに寝かし付けをしていたら……時間的にお腹がすいてきたり……してないかしら?」
「こんな夜遅くに、眠れなくてついつい食べちゃうラーメン、それはもうアウトローな味わいがするに違いないわ」
「ふふっ、大丈夫よ? ちゃーんとこの時間でも営業してるラーメン屋さんは調査済みだし、安心して。先生♪」
「それじゃあ、ふたりで行く? それとも……折角だし、便利屋の面々も呼ぼうかしら? せ、先生がふたりきりが良いって言うならふたりきりにするけど……」
「うーん、一応依頼で出かけてるって言ってあるし、心配してるかもしれないから連絡だけでもしてみて、それから決めちゃっても……」