「……な、舐めちゃっていいのかしら」(耳舐め)
「えっ? 門外不出でハードボイルドでアウトローな寝かし付け方法がある、ですって!?」
「ちょっと言い方が嘘っぽいけど……本当にそんな寝かし付けがあるなら教えて欲しいわ」
「ふむ、ふむふむ……な、なんですってー!?」
「……と、驚いたけどそんなに驚かなかったわ。でも驚いたわ」
「……飴を舐めるだけじゃなく……耳を舐める、ですって? 先生、本当によく分からないことを知っているのね……」
「飴を舐める前も聞いたけど……本当にそれで寝かし付けになるのかしら。飴よりもよっぽど寝ることに集中出来なさそうだけど……」
「えっ? 逆にめちゃくちゃ集中するから大丈夫、ですって……?」
「先生がそういうなら……仕方ないわね。その耳を舐める寝かし付け、しちゃうわ」
「……ふふっ、それじゃあ……言われたとおりにしちゃうんだけど……」
「当たり前だけど、こういうことはしたことが無いから……あまり上手じゃないかもしれないけど……」
「えっ? 逆にそれはそれでご褒美、ですって? よくわからないけど……ご褒美なら良いわ! ……良いのかしら?」
「それじゃあ……早速……」
「…………」
「や、やっぱりちょっと緊張しちゃうわね。先生の髪の良い匂い、してくるし……」
「…………」
「……こ、今度こそ寝かし付けを始めるわ」
「ぺろぺろぺろり」
「……ほ、他の人の耳を舐めるなんて初めてだけど……ふ、不思議な感触ね……」
「ぺろぺろぺろり」
「ど、どうかしら? こんな感じで……問題無い?」
「そう。それなら続けるわ」
「ぺろぺろぺろり」
「ふふっ、分かってるわ。こっち側の耳も、でしょう? 先生♪」
「ぺろぺろぺろり」
「……こ、これであってるのかしら」
「ぺろぺろぺろり」
「な、何か先生……寝入るどころかちょっと変な声、漏らしちゃってるけど……本当にこれで良いのかしら……」
「ぺろぺろぺろり」
「えっ、あまりのリラックス効果に声が出ちゃっただけ、ですって? そ、それなら良いけど」
「ぺろぺろぺろり」
「それにしても……先生の耳、丸いタイプの耳なのね」
「あまり耳をじっくり見ることなんて無いから……新鮮かも」
「ぺろぺろぺろり」
「ふふっ、そんなに良さそうにしてくれて……それじゃあ少し長めにしてみちゃうわ」
「ど、どうかしら? こんな感じで続けても大丈夫……みたいね」
「初めてで勝手が良くわからないけど……何かちょっとクセになっちゃうかも……」
「こう……耳を攻めるなんてちょっとした拷問みたいでハードボイルドだと思うの」
「……せ、先生の髪の匂いまでこんなに近くで感じられるし……凄いわね……これは……」
「……先生がちょっと気持ち良さそうな声、出しちゃうのも……グッとくるわ……」
「こう……舐めているだけでこんな反応だったら……こうしたらどうなっちゃうのかしら……」
「はむはむ、はむはむはむっ」
「せ、先生? 私……初めてアウトロー映画を見たとき並みにゾクゾクしたわよ……?」
「はむはむ、はむはむはむっ」
「そしてこの噛み心地……グミキャンディーを食べるたびにアウトローな気持ちになっちゃいそうだわ……」
「はむはむ、はむはむはむっ」
「……こっち側のお耳は……噛み心地、どうかしら?」
「はむはむ、はむはむはむっ」
「……同じような、違うような。先生の反応は……ちょっと違う、気がしないでもないわ」
「はむはむ、はむはむはむっ」
「……ちょっと念入りに味わってみちゃうわね、先生」
「ふぅ」
「こう……耳のこりこり感、何かちょっとメンマみたいな感じがするわね、先生」
「ふふっ、こりこりメンマ、しっとりメンマ、どっちの食感にも似てるわ♪」
「……メンマより好きかも♪」
「ふぅ」
「もしかして……先生も噛んでみたくなっちゃったかしら? ふふっ」
「えっ……? 私の耳を噛ませてくれるのか、ですって……?」
「……せ、先生がどうしてもと言うなら……ちょ、ちょっとくらいなら……」
「先生がこんな風に気持ち良さそうにしてくれると……私も少しは興味が無いこともないわ」
「……ま、まあ、そのときは改めて依頼を頂戴、先生」
「……」
「ふふっ」
「私……初めて本物のアウトローを見かけたときみたいに……ゾクゾクしちゃってるかも」
「……」
『先生? こうしちゃったら……ど、どうかしらー?』
「……わ、悪くはなさそうね、先生。でも、確認は大事だからもう1回……」
「……や、やっぱり悪くはなさそうね。流石先生」
「反対側の耳は……どうかしら?」
「ふふっ、こっちの耳も気持ち良さそうね。具合が悪くないようで良かったわ」
『それじゃあ……ちょっと長めにするから……たっぷり味わいなさい♪ 先生♪』
「……ふぅ」
「長めだと集中出来て気持ち良い、ですって?」
「ふふっ、流石先生。正直に教えて貰えると私もやりやすいわ」
『じゃあ……長めにしちゃうわね』
「ふぅ。流石にちょっとアゴ? 舌?が疲れるわね……」
「べ、別に先生の耳を舐めるのが嫌で疲れてるわけじゃないわよ!?」
「アウトローとして……こう……舌も鍛えなきゃと痛感しているくらいだから!」
「だから……練習を兼ねて……こう、たまには……ね?」
「ふぅ」
「……そ、そろそろ仕上げといこうかしら」
「えっ? 疲れて来たなら無理しなくても大丈夫、ですって!?」
「だ、大丈夫よ! 便利屋の社長として依頼はちゃんとしちゃうわ!」
「で、でもしすぎちゃうと耳がふやけちゃうかもだし……」
「ふぅ」
「ちょっと頑張っちゃってみたけど……ふふっ、問題無さそうね。流石先生」
「もうちょっと続けて……」
「ふぅ」
「もちろん、こっちの耳も、ね♪」
「……ふふっ、もうちょっと、ね♪」
「ふぅ。何だかクセになっちゃうわね、これ……」
「ほーら、先生? 先生もクセになっちゃんじゃないのー?」