Track 11

『添い寝リターンズ』

;SE:布団に横になる音 ;ボイス位置:1 こしょこしょ声で 【クリス】 「ふぃぃぃぃぃ……」 【クリス】 「お酒を飲んですぐ、気だるさに身をゆだねて横になるのは心地いいですね」 【クリス】 「一番お酒の余韻(よいん)を味わえる瞬間かもしれません」 【クリス】 「(三十秒ほど息遣い)」 【クリス】 「幸せですねぇ……あなたも幸せだと感じてくれていたら、嬉しいです」 【クリス】 「休日を大切な人とだらだら過ごす……」 【クリス】 「幸せすぎて、目を開けていられないくらい、眩しいです」 【クリス】 「これは夢だったりしませんよね」 【クリス】 「まだ小さい私が見ている、10年以上の長い夢……とか」 【クリス】 「目が覚めたら、急に小さい私に戻ったりしていないでしょうか……あぁ、なんだか怖いです……」 【クリス】 「顔に……触れてもいいですか?」 【クリス】 「目の前にあっても、指先に確かな温かさがないと、不安で不安で仕方ないんです」 【クリス】 「だから……」 ;SE:左頬に手が触れる音 【クリス】 「ふふ……あったかい……」 【クリス】 「よかった。夢の中ではないみたいです」 【クリス】 「あの……もう一つ、お願いを聞いてもらっても良いでしょうか」 【クリス】 「その、おでことおでこをくっつけたまま眠りたいんです」 【クリス】 「実家にいたころはお母さんにやってもらったんですが、もうこの年になると誰かに甘えたりなんて出来ないですから」 【クリス】 「あなたじゃないと頼めない事なんです」 【クリス】 「いい、ですか?」 【クリス】 「では……失礼しますね」 ;SE:おでこ同士をくっつける音 ;ボイス位置:1 至近距離、こしょこしょ声で 【クリス】 「わぁっ……。温かいですね、私よりほんのりと」 【クリス】 「すごく安心します」 【クリス】 「あの……私はこれから目を閉じますけど、見つめたりしないでくださいね」 【クリス】 「もしこんなに近くで見られていたら、ちょっとだけ、恥ずかしいので」 【クリス】 「すーーーっ。ふーーーっ……」 【クリス】 「良い匂いがします。小さい頃から感じてた、あなたの匂い」 【クリス】 「こんなに近くで深呼吸すると、お酒を飲んでいてもあなたの匂いが分かりますね」 【クリス】 「(二十秒ほど息遣い)」 【クリス】 「あなたは昨日、夢を見ましたか?」 【クリス】 「私は見ました。とても、悲しい夢を」 【クリス】 「私とあなたが違うところに就職して、離れ離れになって……連絡はしても、今みたいに家で2人でだらだらと過ごすなんて、もうできなくなる夢です」 【クリス】 「だから、今日ちょっと変な感じだったんですよね。……気づきました?」 【クリス】 「男女の友情は成立しない。という言葉がありますけど、私はそうは思わないんです」 【クリス】 「友情から恋愛に発展するから、とか、ふとしたきっかけで儚く(はかなく)も崩壊してしまう、とか……」 【クリス】 「でも、考えてみてください」 【クリス】 「発展や崩壊が起ころうと、今までそこにあった関係性は、確かに友情だったと思いませんか」 【クリス】 「永遠に続く友情は存在しないかもしれません」 【クリス】 「ですが、それは男女に限らず、どんな関係だろうと同じだと思うんです」 【クリス】 「小学生の時に友達だった子、いたじゃないですか。今再会すれば昔の話に花を咲かせる事でしょう。でも、今も友達かと問われれば、そうは言えないと思うんです」 【クリス】 「だから、私たちのこれまでの関係は友達であり、男女の友情であったと言えるのではないでしょうか」 【クリス】 「あはは……寝る前なのに、小難しい話になってしまいましたね。すみません」 【クリス】 「つまり何が言いたかったのかと言いますと……私からは、一つだけ」 ;ボイス位置:7 重要 耳元に顔を近づけて単語の一つ一つを聞き取れるようにゆっくりと、囁き声で 【クリス】 「Ich liebe dich(イッヒ リーベ ディッヒ)」 ;ボイス位置:1 少し離れる 【クリス】 「これが私の気持ちです」 ;ボイス位置:1 照れながら 【クリス】 「でっ、では……おやすみなさい!」 【クリス】 「(吐息から寝息へ。その後3分ほど流し終了)」