☆プロローグ
えーっと……
あ。あの方でしょうか……
あの、すみません。
先日、冒険者ギルドで仲間の募集をされてた方……でしょうか?
そうでしたか♪
はい。私が、連絡させていただいた……ミアです♪
よろしくお願いします。
はい。プリーストをしております。
メインで使えるのは、治癒魔法と強化魔法で……あなたの後衛でサポートさせていただくことになるかと思います。
攻撃系も多少は使えますが……あまり期待はしないでください。
…………。
あちらに、座るところがございますので……
よろしければ、少しお話しませんか?
ありがとうございます。
お隣、失礼いたします……
……はい。あなたのことは、冒険者ギルドで伺っております。
しばらくお一人で活動されていて、Cランクまであがったと。
ですが、何故、急に仲間の募集をされたのですか?
……なるほど。
そうですね。魔物の討伐は危険ですし……お一人では限界が出てきてしまうでしょう。
……元々、誰かといるのが苦手だったのですか?
こうしてお話していると、そうは思えませんが……
いえいえ。
人には向き不向きがありますから。それも仕方のないことです。
早く、気を遣わずにおしゃべりしてもらえるように、私も頑張りますねっ。
はい?
ええ。私……実際に冒険者として活動するのは、これが初めてです。
今までも、パーティの募集に応募してはいたのですが……
なんというか。ご縁がなくて。
〝理由〟……というのは、私が冒険者になった理由ですか?
……お恥ずかしい話なのですが。
私の所属している教会が……経営難で、なくなってしまいそうなのです。
私が昔からお世話になっている教会ですし……
それに、恵まれない子どもたちの支援などもしておりますので。
それを途絶えさせるわけにはいきません。
そのためには、やはり。
依頼をこなして報酬を得る、冒険者になるのが、一番手っ取り早いと考えまして……。
そういう理由ですから……お金については、あればあるほどよく……。
報酬については、依頼達成報酬の三割をいただけると、嬉しいです。
……この条件に問題はありませんか?
そうですか♪ よかった。
……わ。私のステータス、ですか?
そうでしょうか。
私、高いほうなのでしょうか……。
……えっと。それなのに、今まで他のパーティーとご縁がなかったのは……
…………。
すみません。正直にお話いたします。
命を預け合う仲間に、不信感があってはいけませんね……。
……その。
私の魔法の使い方が、少々特殊でして……
プリーストは、教会に所属し、神にこの身を捧げて祈ることで、魔法を使うことができます。
〝神聖魔法〟という種類の魔法なのですが……
……私は、その中でも更に特殊な魔法を使います。
〝舌交(ぜつこう)魔法〟と申しまして……
対象に強力な加護を与えることのできる魔法なのですが……
魔法のかけ方が、とても特殊なのです。
〝舌交〟……〝舌の交わり〟。
つまり……その。
かけたいお相手と、私の舌を交わらせることで、初めてかけられる魔法なのです。
……要するに、ですね。
私とキス……べ、ベロチューをしないと、魔法がかからないのです。
……うう。はい。
このご説明をしたら、〝ふざけんな〟と言われて、パーティーから拒否されたことが五回ほど……。
……だから。少し、言いづらくて。
申し訳ありません……。
……た、ただ、舌交魔法による補助は、大変強力ですっ。
倍の速度で動けますし、三倍の力を発揮することだってできますっ。
大怪我だって、たちまち治せます。
それは……神に誓って、保証させていただきますっ。
……いかが、でしょうか?
こんな私を……
仲間にしていただけますか?
…………。
……そうですね。仰る通りです。
まずは、実力を確認していただくのが先決です。
実は、先ほどギルドの掲示板を見て、手頃そうな依頼を探しておきました。
はい。この近くの森に、脅威度Cの魔物が出没したそうです。
私のお試しとして……今から一緒に討伐しに行く、というのはいかがでしょうか?
あ……
……ありがとうございますっ。
私、あなたにご満足いただけるよう……頑張りますっ。
では、早速出発いたしましょう。
よろしくお願いいたしますっ。