Track 1

1-1.『会社の上司に、ミスを隠す代わりに体を要求されたら』

☆1-1  えっと……  ……あ。  こんにちは。  佐藤課長。  失礼します……。  ……あ。では、アメリカンコーヒーを。  ありがとうございます。  はい。うちの夫が、いつもお世話になってます。  いつも、私が忘れ物を届けるとき……取り次いでいただけて、助かります。  ……ふふ。いまだに、少し抜けたところがある人で。困ります。  あ。ありがとうございます。  コーヒー、いただきます……  ……すーっ。  あの。ところで……  ご用をお伺いしても?  夫ではなく、私のほうを、会社近くの喫茶店に呼び出す……なんて。  夫に何か問題でも……?  ……え、ええと。  この書類は……?  はい。確かに、ここに夫の名前がありますが……  ……え。  そんな重大なミスを……夫が?  このまま進めば、会社に……す、数億円も損失を……?  ま、まさか……。  ……え?  そ。そうでしたか……。  佐藤課長がフォローしてくださったのですね……。  しかも、ミスが発覚しないように、根回しまで……  ありがとうございます。深くお礼申し上げます……。  …………。  ……あの。  どういう意味……でしょうか? 〝分かるよね?〟とは……。  …………。  そ、それは……  夫が、会社に大きな損失を出しかけたのは……事実かもしれません。  佐藤課長がフォローしてくださらなかったら、きっと、クビになってしまったでしょう……。  新婚の私たちにとって……仕事がなくなってしまうのは、すごく、困ります……。  ……で。でも。  だからって……  わ、私と……佐藤課長が、なんて……!  そんな……夫を、裏切るような真似……。  はい……  そうすることが、夫を守ることに繋がるっていうのは、分かっています。  ですが……そんな……。  ……こ。ここからすぐのところに、ラブホテルがあるんですか?  …………。  わ。私……  私、は……