110回目(?)
<正面 普通>
(調子悪そうに)あっ、お兄さん、この度はご足労いただきありがとうございます。
ええ、まあ、いつもお兄さんに足を運んでもらってはいるのですが。
あのー、そのー、大変申し訳無いんですけど、今日は、手で我慢していただけませんか? 誠心誠意、頑張りますので。
えーっと、調子が悪いというかー、なんと言いますか、そのー、実は、女の子の日、でしてー。
ええ、今まではそういう時はずらしてもらっていましたけど。
4月は教科書をそろえないといけないものでして。
教授方ったら、お高い自著を買わせるんですから。げに恐ろしきは新年度かな、ですね。
(小声)それに、新刊台の本にもついつい手が伸びてしまいましたし。
えっ、何でもありませんよ。
とにもかくにも、何かと入り用でピンチなものでして。
ですから、ここはひとつ「頼りがいのある」お兄さんの胸をお借りしたいなー、と。
んー、低用量ピルを試してみて、ずいぶんと楽にはなったんですけどねー。
それでも月経が無くなる訳ではありませんので、血も出ちゃいますし、調子もいいとは言い難いですね。
ですから、どうか今日のところは手でご寛恕【かんじょ】を。
<正面 近い>
そんな、要らないなんて言われてしまうと教科書が。不足分は今度頑張りますから、なにとぞ。
(呆然とした感じで)えっ? お金、いただけるんですか?
あっ、はい、ありがとうございます。
<正面 普通>
あのー、これ、本当にいただいちゃってもいいんですか?
いえ、何もせずにいただいてしまうと、なんともいたたまれない気分に。
まあ、お口で譲歩してもらうのが落とし所かなー、と予定していたので。
んー、できない事もないですし、してあげたい気持ちはやまやまなのですが、今日はそのー、吐き気も少々ありまして、できれば日を改めて頑張りたいなーという所存です。
えっ、夕飯のメニューですか? アスパラが旬ですから、鶏肉とアスパラの炒めものにしようかと。
鶏【とり】なら豚よりも油気が少ないですし、塩麹に漬けておいたので消化にもやさしいかと思いまして。
それなら、私にも食べられそうですし、お兄さんにも満足していただけるようなボリューム感もあるかなーと。
せめて、ご飯だけでも満足して欲しいですから。
んー、私1人なら、調子の悪い日はお茶漬けなんかで済ます事が多いですね。
さっぱりしていて、準備も片付けも楽ですし。
はあ、今日は、お茶漬けでいいんですか? えーと、今から?
いえ、材料もあり合せの物で十分ですから、すぐに用意できますよ。
んっ、お兄さんも手伝っていただけるんですか? ふふっ、ありがとうございます。
そうですねー、では、お兄さんには鶏肉をお願いしましょうか。
はい、これをレンジでチンしてから、流水で冷まして、手で食べやすい大きさに割いてくださいね。
<左 普通>
私は、んー、せっかくアスパラを用意したので、おひたしにしましょうか。
ふふっ、今日はやけにやさしいじゃないですか。大丈夫ですよ、切って茹でて、めんつゆにひたすだけですので。
お兄さん、私を心配するよりも自分のお仕事に集中してください。
ほらっ、言わんこっちゃない。水で冷ましても中は熱いですから、気をつけないと火傷しちゃいますよ、ふふっ。
<正面 普通>
んー、できましたか? ふふっ、上出来じゃないですか。
じゃあ、ご飯をよそって、鶏肉とゴマとネギと塩昆布、お好きなだけ載せてくださいね。
それで、玄米茶をかけてあげればー。はい、完成です。
ねっ、簡単でしょう? ふふっ。
では、いただきましょうか。
あーむっ、んー、やっぱりさらっと食べられていいですねー。
ふふっ、お兄さんのお口にも合いましたか? それはそれは、僥倖【ぎょうこう】です。
へー、そんなにお気に召しました?
んー、今までは満足感のあるちょっと豪華な物をと張り切っていましたけど、こういう肩の力が抜けた料理も悪くないかもしれませんね。
夏には冷やし茶漬けにするのもいいですよ。
大葉にミョウガにネギにと、たっぷりの薬味の上にしらすと明太子を盛り付けて、お茶の代わりに冷たい白だしをかけたりとか。
ねっ、おいしそうじゃないですか? 暑い日なんかにはピッタリですよ。
ふふっ、アスパラもいい味でしょう? よさそうな物がお店に並んでいまして。
あむっ、んー、朝採りだから甘みがあって、さくりと歯ざわりもいいですねー。
こういう新鮮なのは、やっぱり素材の味を活かすのが一番ですね。さっと茹でて、めんつゆで味付けして、かつお節をかけてあげるだけで立派な料理です。
ふぅ、ごちそうさまでした。
あら、お兄さん、後片付けも手伝っていただけるんですか?
ふふっ、軽く水で流すだけですけど、お言葉に甘えちゃいましょうか。
ええ、洗い終わったらそのカゴに入れておいていただければ結構ですよ、どうもありがとうございました、ふふっ。
あれ、お兄さん、今日は泊まってはいかれないんですか?
まあ、おっしゃるとおり、1人でゆっくり休めた方が翌日に響かなくて助かりはするでしょうが、うーん、なんだか寂しい気もしてしまいますね。
んー、では、せめてこれくらいは。
<正面 近い>
(キス)んっ、チュッ。
<右 近い 囁き>
んっ、ぎゅーっ。
(からかうように)あれれー、お兄さん、お腹に何か当たっている気がするのですが。
ふふっ、こーれ、なんだか、むくむくって、おっきくなってきてません?
んー、お兄さん、本当に、離れて欲しいんですかぁ? ふふっ。
どうやら、お兄さんも私と居ては心が休まらないご様子でしたかねぇ、ふふっ。
もう、こんなにしてるのにカッコつけちゃって。
ねぇ、お兄さん、本当にしなくてもよかったんですかぁ? ふふっ。
でも、気を遣ってもらえるの、うれしいですよ。
それに、こんなに望んでいただけるなんて、悪い気はしません、ふふっ。
元気になったら、今日できなかった分も満足させてあげますから、楽しみにしてくださいね、ふふっ。
だ・か・ら、そういうお店とか、行っちゃダメですからね。
んっ、最後にもう1回。
<正面 近い>
(キス)んっ、ンチュッ、はぁ……、ふふふっ。
<正面 普通>
お兄さん、今日はありがとうございました。