撫猫さんとの出会い
ドア(ガラガラ系)を開ける主人公
撫猫 「ようこそいらっしゃいました」
うやうやしく玄関で座って出迎える撫猫 和装をしているが耳と尻尾が出ている。
主人公「……(突然のことで理解できない)」
撫猫 「……この方が私の旦那様……優しそうな方でよかった」
主人公「だ、誰?」
撫猫 「あ、どうぞ、お上がりください、旦那様。早速家の中をご案内しますね」
主人公「え、あの、それってどういう……それにその耳と尻尾、コスプレ?」
撫猫 「はぁ……この耳と尻尾ですか?コスプレ……あぁ、仮装のことですね……いえ、これはですね……あの、色々と突然の事で混乱されていると思います」
柔らかな笑みを浮かべながら
撫猫 「……引越しのおソバを打ったんですが、良かったら召し上がりませんか?」
場面転換
撫猫 「はい、そちらの座布団にお掛けください。そこは旦那様のお席です」
主人公「……(なんだろうこの人、お隣の人?でもソバって普通越す側が茹でるよな)」
撫猫 「あ……もしお暇なようでしたら、本日の新聞とテレビのリモコンを用意しておきましたので、よろしければどうぞ……それとお茶です」
新聞とリモコンを差し出す。お茶を差し出す(テキパキ)
撫猫 「すぐ用意が出来ますからお待ちくださいませ」
ソバの用意をしに台所に行く撫猫 (ソバは茹でてあるので水でさらして盛り付けるだけ)
主人公「……あの、この引越しの荷物、キミが?」
お蕎麦の用意をしながら答える撫猫さん
撫猫 「……え、はい。お引越しの荷物は私が荷解きしておきました……申し訳ありません……勝手な事をしてしまいましたでしょうか?」
主人公「……いや、まぁ助かるよ……ありがとう」
撫猫 「そ、そんな、お礼を言われる何てとんでもありません!私は当然のお役目を果たしただけですので……ただ、そう言われると……嬉しく思います(照れ)」
撫猫 「はい、おソバが出来ました……失礼致します」
ソバをお盆ごと主人公の前に置くヒロイン
主人公「え、もう?早いな」
撫猫 「はい、そろそろいらっしゃる頃合かと思いまして、茹で上がりを調節しておきました……あ、のびていませんから安心してくださいね……どうぞ、お召し上がりください」
主人公食べてみる
主人公「……まぁ。食べてみるか」
撫猫 「……いかがですか?(おそるおそる)」
主人公「あぁ、うん……あ、おいしい」
撫猫 「ふふっ、お口に合ってよかったです。おソバを打つのは初めてなので少しだけ心配だったんです……あ、いえ、ちゃんと味見はしたんですよ?……ただ旦那様にお気に召していただけるか……へ?」
主人公「その旦那様っていうのは何なんだ?……ていうか、あなたは誰ですか?」
撫猫 「あ、申し遅れました……私、本日から旦那様のお世話をさせていただく事になりました撫猫と申します」
主人公「え……お世話?」
撫猫 「はい。私はこのお家に越してくる方にお仕えするためここにいます……つまりあなた様にです」
主人公「どうしてそんな」
撫猫 「どうしてですか……難しい質問ですね。簡単に申し上げますと……「猫は家に付く」というのが理由でしょうか」
主人公「?……なにそれ?」
撫猫 「あ……ご存知なかったですか?私ったら申し訳ありません!?……えっと、猫は家が気に入るとそこに定住したくなると言いますか……そのような意味です」
主人公「いや、それもどういう意味かさっぱり……」
撫猫 「も、申し訳ありません。全然わからないですよね……それではこの家の賃貸の契約書です……ここの欄外をご覧ください……猫付きと記してありますよね?」
主人公「猫ってあなたが?……冗談ですよね?」
撫猫 「……はい、私です♪」
撫猫 「私は猫なんです……なぜ人の姿をし、こうして言葉を操れるのか……それは私にもわかりません」
主人公「いや、意味が」
撫猫 「ただ……私は猫です。それはだけは自信を持って申し上げられます!……かつて私を育ててくれた人は常々そう言っておりました」
撫猫 「あ、そうです!良い方法がありますね……私の猫の耳をよく見てください……ほら、直に生えているのがお分かりいただけますか?」
主人公「ん……うっ……黒髪だし、わかりにくい」
撫猫 「……髪が黒くてわかりづらいですか?……尻尾の方も……直にお見せ出来ればいいのですが……その、お嫁に行けなくなってしまいます……(恥ずかしそうに)それでも旦那様がどうしてもと言われるなら……」
撫猫 「……(恥ずかしさのあまり黙ってしまう)」
主人公「……いや、そんなつもりは……信じるよ!信じるからさ(何となく罪悪感)」
撫猫 「はっ……信じていただけるんですか?……ありがとうございます!」
撫猫さん改めて三つ指を突き挨拶
撫猫 「ご迷惑は重々承知しております。旦那様、どうか私をこの家に置いてはいただけないでしょうか」
主人公「そんなことを言われましても……」
撫猫 「お願い致します……屋根裏部屋でも納戸でも、それこそ軒先でも構いません!旦那様の身の回りのお世話は全てお任せください!もし他にもご要望があれば何でもお申し付けください……ですから……ですから……私を……捨てないでください」
その眼はとても悲しげ
主人公「い、いや……その捨てるとかじゃなくて」
困惑する主人公を見て申し訳なくなってしまう撫猫さん
撫猫 「やはりご迷惑ですよね……契約とはいえ旦那様のご了承も得ずに居座るわけには参りません……私は出て行きますね」
立ち上がる撫猫
撫猫 「……あのお蕎麦……まだあるのでよかったら食べてくださいね」
歩き出す撫猫さん
主人公「……わかりました」
撫猫 「今何と……」
主人公「いいですよ……これ食べたら一緒に掃除手伝ってもらえますか?撫猫さん」
撫猫 「いま私の名前を……掃除を手伝ってほしい……い、いえ!全て私がさせていただきます!……あの……本当によろしいんですか?……旦那様」
撫猫 「はい!それでは……ふつつか者ですがよろしくお願いします」