撫猫さんとお部屋
転居に伴うお掃除がほぼ終わって午後
撫猫 「これでお掃除はほぼ終わりですね」
主人公「いいですよ……けっこう部屋数があって時間かかりましたね」
撫猫 「あの……旦那様、そんなに謙った言葉を私に遣わないでください……平常語でお願い致します」
主人公「へいじょうご?」
撫猫 「あ、申し訳ありません……分かりづらかったですね……えっと、今の方の言葉ですと……タメ口?でしょうか」
主人公「んー、えっーと、敬語を遣うなってことかな!」
撫猫 「はい、それです。私に敬語を使わないでください……私は旦那様の猫なんですから」
主人公「う、うん、わかったよ……じゃあ撫猫さんも」
撫猫 「私はいけません!……殿方に平常語を使うのは大和撫子ではありません」
主人公「そ、そっか(こう見えて意外に融通が利かない性格なのかも)」
少しだけ間
撫猫 「あの……一緒に掃除をしていただいて申し訳ありません」
主人公「いいって、この家を色々見ておきたかったし」
撫猫 「……は、はい!これからは旦那様が使ってくださるので、この家も喜ぶと思います」
主人公「そうかな?」
撫猫 「ふふ、そういうものですよ……私のことも遠慮なく使ってくださいね……旦那様にお仕えするのが私の喜びです」
主人公「う、うん(今時こんな子がいるんだな……猫……か)」
撫猫 「あの旦那様……そんなにまじまじと見られたら照れてしまいます……あ、そのお部屋は」
主人公気まずくなって襖を開ける
撫猫 「そこは……私が使わせていただいているお部屋です」
主人公「あ、ごめん。和室なんだ。イメージぴったりだね」
撫猫 「はい、昔から和室が落ち着くもので……」
その時主人公が何かに足をぶつける
主人公「あれ……これは……」
撫猫 「あ、旦那様、おみあしは大丈夫ですか?申し訳ありません、不注意にそんなところに分厚い書物を置いてしまって……それは時刻表です」
主人公「時刻表?……電車好きなの?」
撫猫 「いえ、その電車が好きという訳ではなくてですね……このお家に偶然あっただけなんです……ただその、この街から出た列車が、私の知らないどこかに、いつ着くのか、そういう想像をするのが好きなんです……おかしいですよね?(もじもじしてしまう)」
主人公「そうなんだ……そういう楽しみもあるんだね」
撫猫 「そうですか……ありがとうございます!……あの……日当たりもよくて、ついこのお部屋を使ってしまいました……私は納戸にでも移動します……今荷物をまとめますのでお待ちくださいね……」
主人公「いいよ。撫猫さんが使いなよ」
撫猫 「え……いえ、そんな……こんな日当たりの良いお部屋を、旦那様を差し置いて使用人の私が使うなんて……」
主人公「いいって。その方が家も喜ぶんじゃないかな」
撫猫 「その方が家も喜ぶ……ですか?……本当に私などが使ってもよろしいんですか?」
主人公「うん、使って」
撫猫 「あ、ありがとうございます、旦那様!……では旦那様はよろしかったらお隣のお部屋を自室に使ってください。日当たりもほぼ同じはずですから」
主人公「ありがとう。そうさせてもらうよ」
撫猫 「はい♪日々のお掃除は私にお任せくださいね!……それでは私はごお夕食の準備を致します……冷蔵庫に、いい鯛があるので腕によりをかけますね」
主人公「あ、手伝う……」
撫猫 「いけません……昔から台所は女の城と申します……旦那様は自室でゆっくりお休みになっていてくださいね」?