私赤だよ
お、おかえりっおかえりぃっーなさい、なんだよっ!
あ、ちょっと、待って、待った!
そのままドア閉めないで!
今、自分で鍵開けて入ってきたでしょ、ここは君の家なの、そそ、とりあえず入って、奥までぐぐっとなんだよぉ~。
はい、おかえりなさい♪
ぎゅう~
くんくん、すんすんっ…すんすんっ、すはぁ~♪
う~ん、君の匂いなんだよぉ♪
この匂い、安心なんだよぉ~、ほらほら、いつも帰ってきたら、こうして抱っこしてくれるでしょぉ~、うりうり♪
疲れてるのか…って、そりゃ君は疲れてるけど、そうじゃないんだよっ。
ほら見てみて~、ぴんと立った髪の毛は三角お耳のよう!
そして、このきゅーとな、長くてもっふもふのしましま尻尾!
うん、私は赤(あか)。
君とずっと一緒に生きてきた、レッサーパンダのぬいぐるみ、「赤」なんだよっ♪
…あ、いやいや…夢じゃないんだよぉ、ほらほら、ふりふり…もふもふ尻尾の、ここんとこ。
君が赤ちゃんの頃、ここばっかり、はむはむもしゃもしゃしてたせいで、何回お風呂入れてもらっても、元通りにならないんだからっ。
ほらほら、もしゃもしゃ、君のお口にジャストフィット。
これでもまだ信じない?
私の名前、赤…お父さんがレッサーパンダの別名がレッドパンダだから、赤にした…これでどう?
んふふ~♪
こんな姿になれたのはねぇ…君がいない間、ベッドにちょこんって座ったまんま見る壁にも飽きて、動けたらなぁ、君とお話したいなぁって思ってたら、なんか、白い服で手にしゃもじみたいなの持って、にゅーって長い帽子被った…そうそう、烏帽子に勺!
で、見た目は小学生女子なんだけど…その人が、天井からすーって出てきて、そんなに願うなら、お前もよく生きたし、付喪神っていうのにしてやろうって。
そ、れ、で、こうなったんだよ、ん~ぎゅ~ぎゅ♪
いいこいいこ~、あぁ~ずぅ~っと、こうしてあげたかったんだよぉっ♪
むむ…身長ちっさいくせに、おねえさんぶってるって、私は君よりお姉さんなの!
君が生まれる前に、君のために、お母さんが私を買ってきたんだから、おねえさんなんだよっ!
ほら、ぎゅーぎゅー、ぎゅう、おねえさんの包容力♪
うん、思いだした?
忘れるわけないよね…ずっと傍にいたんだから…この匂い、この毛並み♪
…落ち着いたら、おかえりなさい、だよ♪