愛莉雪原を泳ぐ
んんっ、ああ…ご耳愛部へようこそ…。
んっ?
何…私、紬愛莉の姿に不審でもあるかしら?
…これはね、雪原を泳いでいるの。
ただ白いシーツにくるまって、ばたばたしてるだけ、とか…困ったものね。
んしょ…今季暖冬で、この辺り、一回も積もるような雪が、降らなかったでしょ?
待っているうちに、もうすっかり春だし。
私はね、雪原に、だーって、飛び込んで泳いでみたいのよ。
けれど、雪は降らない。
降り積もったとしても、本当にやったら、冷たいし、それなりの装備をしないと、服だって濡れちゃうでしょ?
雪、一面、綺麗…衝動的だからこそ、そういうものは楽しいのよ。
準備万端でやったら、興ざめよ。
人はね、想像力ってもので、星空を飛んだり、雪原を泳いだりするものなの。
そんな自由があるっていうのに、想像力を先に立たせてから、行動しない人が多すぎるわ、まったく…と、お話がずれちゃったわね。
ここは…そうね、噂ぐらいは届いてるんじゃないかしら?
放課後になると行ける、旧校舎に不思議な場所があるって。
このご耳愛部は、そういう翼がちょっと疲れたなぁって人が、羽を休める場所、渡り鳥が越冬する湖…そんな場所。
ふふ、誰でも来られるところじゃないのよ?
んしょっと…百聞は一見にしかず…何でも肌で感じてやろうっていう冒険心をもちなさい!
ん?
何って顔は、君が一生を持って、追いかけられる不可思議の前までとっておくといいわ。
さぁ、この私…紬愛莉が、君にご耳愛してあげるっ!