発覚
「……まさか、見つかっちゃうなんてね」
「予想外よ。困ったわ」
「ここで何をしているかって? そんなこと、聞かないでよ」
「私の正体くらい、見当はついてるんでしょう?」
「こんな生足の見えるはしたない格好……どう考えたって、家出したお嬢様になんて見えないわ」
「この真夜中に、こんな装束に身を包んだ女が何者かだなんて、馬鹿でも分かるわよ」
「ええそうよ。私は女忍。くの一って言った方が分かりやすいかしら?」
「この屋敷の主を亡き者にしろって任務を受けたから、侵入して、ここに隠れていたのよ」
「……ふふ、あっさり白状したことが、そんなに不思議?」
「何だったら、スリーサイズも教えてあげるわよ。抱かれた男の数だってね」
「ふふ、冗談が過ぎたわね。でも、見つかってしまったんだからしょうがないでしょう?」
「私のことだったら何でも教えてあげるわ。あなたの気を悪くしたくなんかないもの」
「……どういう意味かって?」
「見つけてくれたのがあなたで良かったって言ってるのよ」
「そんなの、すぐに分かるわ」
「すぐにね。ちゅ……ん……」
「……どう? 私の唇の味は?」
「ほら、そんなに驚いた顔しないで」
「もっと私のコト、感じ取って……?」
「流れに身をまかせるの……」
「そう、もっと舌を絡めて……吸い取るように……」
「くちゅ、ん……れろぺちょ……ちゅ、む、ん……ぁ、はぁん、ちゅ……ん、はぁ……」
「ふふ、上手よ。やっぱりあなたで良かったわ」
「……ねえ、取引しない?」
「別に自分の身が惜しくて言ってるワケじゃないのよ」
「あなたのことを心配して言ってるの」
「だって、考えてみて?」
「私のコト、誰かに報告したとして、あなたに一体どんなメリットがあるって言うの?」
「ここの主人……あんな金に目のくらんだ、ケチなタヌキオヤジが、感謝の気持ちなんか持つわけがないわよ」
「どうせいいことなんかない。任務を受けた私はそのことを誰よりも知っているわ」
「だから、ね? 私と楽しいことしたほうがずっといいと思わない?」
「ちゅ……ほら、こうやってキスをして、舌を絡めて……でも、これだけで終わらせる気なんて可哀相なこと、私はしないわ」
「あなただって知っているでしょう?」
「忍びの仕事は主に諜報と暗殺……」
「腕力に劣る私たちくの一が、存在する意義は何かってコト……」
「ほら、だからあとはあなたが決めて?」
「タヌキオヤジに報告するか、それとも――」
「……ふふ。契約成立ね」
「じゃあ、あなたの部屋に案内してくれない?」
「この屋敷の中にあるんでしょう? あなただったらバレないように出来るはず」
「そして、誰の邪魔も入らないところで、一緒に気持ちよくなりましょう?」