引きこもり少女と夜遊びへGO
■
……なぁ、お前。
今、暇か?
(主「どうしたの?」)
うん、なんというか……
こんな遅くに申し訳ないのだが……外に行きたくなってな。
(主「例のアプリゲーム?」)
ふふ、やっぱりバレてしまったか。(ワクワクが隠せなくなってくる少女)
そうだ、この前配信になったアプリゲームのことでな。
どうやらこの近くにまだ持ってないレアなモンスターがいるらしくて、
地図の……ほらここ(スマホの画面を見せながら)
草むらが動いているだろう?もしかしたらここに居るのかもって思ったら、いてもたってもいられなくってな。
……でも、真夜中だし、流石にこんな時間に勝手に出ていくのはよくないと思ったんだよ。
行っても……いいか?
(主「ダメに決まってる」)
あぁ……やっぱりダメか……
いや、いいんだ。もとよりダメ元で…………
(主「準備するからちょっと待っててね」)
え?準備するって……
あはは、そうかそうか。お前も行きたくてウズウズしてたんだな。
だったら素直にそう言えよ……全く。
残念がって損したじゃないか。
うん……嬉しい。
本当はお前も一緒にどうかって言いたかったんだよ。
だけど、いくら週末とはいえ、仕事で疲れてるお前に無理させるわけにもいかないし……
だからこうやって、わざわざ許可を取りに来たんだ。
しかし、お前も同じようなことを思っていたとは……
そうか。どちらかと言うとこのコンテンツは、お前の方が世代だったんだな。
私の頃は2作目か3作目を周りがやっていたかな。懐かしい話だよ。
ああ、では出かけようか。
早くしないとモンスターに逃げられてしまうな。
必要な物は持ったか?
虫除けスプレーと、懐中電灯と、お財布……あとはモバイルバッテリーもだな。
(主「懐中電灯はスマホのライトでいいんじゃない?」)
いや、懐中電灯はいるぞ。
あのゲーム、モンスターを捕まえる時にカメラを起動するから、その度にライトが切れるんだよ。
毎回付け直すのも面倒だし、それに、一瞬でも真っ暗だと危ないだろ?
うむ、わかればよろしい。
では、狩りに出発だ!
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うーん……さっきの草むら、消えてしまってるな……
わざわざ出てきてもらったのに、なんだか無駄にしてしまったようだ。すまない。
ん?……いや、でもまだ近くにいるみたいだな。
お前の方にも……うん。(主人公の画面を確認する)
そうだな……せっかくだし、このまま探してもいいか?
(主「姫のお望みなら」)
んむ……お前、急にそんな返しはナシだぞ……全く……
甘い雰囲気の時なんかは言われ慣れているが、外で「姫」なんて言われると、照れてしまうじゃないか……
うむ……そうだなぁ……では、バラけて探してみるか?
その方が効率的だし、見つけたら電話で連絡をくれれば……
(主「それはダメだよ」)
ダメ……?なんで……
(主「こんな暗い中で一人にできるわけないでしょ」)
……ふふ。私だって子供じゃないんだ。
こんな暗闇が怖いわけあるまい?
(主「そうじゃなくって」)
……ああ、そうか。まあ……確かに。
あまりこんな時間に外に出ないからな。暗闇が危険なものだという認識が欠けていたようだ。
流石に離れていては私を守ることができないよな。我がナイトよ。
(主「ふざけてないで……」)
別にふざけているわけではないさ。
今の言い回しは、さっきのお返しだよ。
そうだな……では、少し離れて探してみるか。
お前の目に届く範囲だったら構わんだろう?
うむ、ではその作戦で行こう。
絶対に捕まえてやるぞ……覚悟してろ……
ふふ、ふふふふ……
[しばらく後]
(少し離れたところから主人公に呼ばれる少女)
ん?どうした?
え?そっちの方に何かいるのか?
(主「探してたの、これじゃない?」)
なんだと……それって探してたモンスターだよな!
私も欲しい……そっちに行けば出てくるかな?
よっと(少し無理に段差を乗り越えようとする)
…………!(転びそうな少女を体で受け止める主人公)
(結局転んでしまうが、主人公がクッションになり少女は無傷)
あいたたた…………
(主「大丈夫?」)
うむ……すまないな。少々驚いたが、おかげさまで無傷のようだ。
(主「今みたいに無理したら危ないって、わかっててやったの?」)
ん……わかったから、あまり大声で怒るな……夜中に近所迷惑だぞ……
いや、な。目当ての物を目の前に、少々浮かれていたんだ。
もう少し足元をよく見るべきだったな。本当に、すまなかった。
(少女を立たせようとする主人公)
ああ、大丈夫だ。自分で立てるよ。
(足に怪我をして、痛みに表情が歪む主人公)
ん?お前、どうしたんだ?
(主人公が怪我してるのに気づく少女)
え?嘘……お前、足……怪我してるのか?
大丈夫じゃないだろ!?だって、血が出てる……
うう……私のせいでこんな…………
本当に……本当に…………
んっ……(涙をこらえる)
(泣きそうなのを我慢して)
ほら、お前。私の肩を貸してやるから……近くのコンビニまで行くぞ。
あそこまで行けば消毒薬も売ってるだろうし……
こんなことになるんだったら、ちゃんと傷薬も持ってくるんだったな……
(主「そこまで用意しだすと大事だよ」)
いや、そもそも私があんな無理をしなければよかっただけの話か……
ほら……早く……
……ん……(主人公に肩を貸す)
(主「重くないかな」)
ああ……重くないぞ……大丈夫だ……(重い)
今くらいは……私の事を頼ってくれ……
■
[コンビニの前、傷口を洗って消毒を済ませた後]
そんなにひどい傷じゃなくてよかった……
帰ったらちゃんと洗って、もう一回消毒してやるからな。
(主「そんな気にするほどじゃないって」)
気にするさ。今は痛みが引いてるかもしれないが、さっきのお前は本当に辛そうだった。
あんな顔……私の前ではあまり見せないからな。尋常じゃなかったのは誰にでも判る。
……なんだか今日はお前に迷惑をかけてばかりだな。
私のわがままで連れ出して、私のわがままで怪我をさせてしまって……
私がいなければこんなことには……
(少女を抱きしめる主人公)
ん…………
(言わんとする事を察する)
…………すまない。
(少女の首筋にキスをする主人公)
んぁ……ふ………………
お前……こんなとこでキスなんて……んv
何考えてるんだ、馬鹿者……っv
……するなら……首なんかじゃなくて……ちゃんと口にしてくれ……
それだったら……変な声出ないから……バレないだろ?
ん……ちゅ、ちゅぷ……れる、ん……
ぁぷ……ちゅる、れりゅ、ちゅ……んふ……ぁふ……
…………ふぅ。
……深夜だからいいものの、店先でこんなこと……
ううむ…………
しかし……逃げられてしまったな。(話題を変えようとする)
お前も、捕まえてはいないんだろう?
まあ、さっきの状況だ。さすがにゲームよりも優先するさ。
さっきの場所から随分離れてしまったし、もう近くにもいないみたいだ……
これ以上の探索は流石に厳しいかな……
(主「まだ行ける?」)
ん?……ああ、私は大丈夫だ。
多少疲れてしまったが、ここでいくらか休めばまだ歩けるよ。
それに……そのためにこれを買ったんだ。(缶のココアを見せる)
甘いものを入れると、体が元気になるからな。
さっきお前に甘いキスも貰ったことだしな。
(缶を開け、ココアを飲む)
んきゅ、んきゅ、んきゅ……
ぷはぁ……
……えへへ。
さて、もう少しだけ頑張ろうか。
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お前、普通に歩き回ってるが、足はもう痛くないのか?
そうか……それは良かった……
でもあんまり無理をするのもよくないだろう。
どうする?もうそろそろ帰るか?
こんな時間だし……もう明るくなってきてる……
(主「ここで引き下がりたくないな」)
諦めるつもりはない、か。
全く……お前はそういうとこあるよな。
人生、引き際も大事なんだぞ?
……なんて、いつでも引いてる私が言えた立場じゃないか。ふふふ。
いいぞ。だったらお前が満足するまで付き合ってやるさ。
元は私の要求だったはずなのに、いつの間にかまた逆転してる……
いつもの私達だな。
そうだろう?
私が食べたいって言ったものを、おなかいっぱいになるまで食べさせたり……
私から誘ったのにお前に好き放題に愛されたり……な。
しかしヘトヘトで帰ってきたはずのお前をここまで元気にするとは……
これはとんでもないゲームだな。
システムとしてはまだまだ未成熟な部分が多くて、改善の余地だっていくらでも見られるというのに……
でも、このワクワク感は初めて感じるものだ。
今日だって、近所をぐるぐるしてるだけなのに、全く知らない道を通ったり、知覚していなかったオブジェクトに出会ったり……
まるで、この世界を冒険をしてるみたいに思えるよ。
このご時世にこんな体験ができるなんて、本当に幸せだな、私たちは。
もちろん、お前とこの幸せを、感動を分かち合えること……
私はそれを一番嬉しく思っているんだ。
先ほどだって、私の不注意とはいえ、お前に物理的に守られてしまって……
いつぞや一緒にプレイしていたゲーム、あの世界での立ち回りを思い出したよ。
ありがとう……愛してる…………
ん……ちゅ。(軽いキスを)
(スマホが反応する)
……!
お前!ほら!
やっと見つけた……
お前のほうでも出てるか?ふふふ……
よかった……諦めないで……勇気を出して……よかった……!(感極まった様子)
……さあ、捕まえるぞ!
今度こそ逃さないからな!
■
[帰り道、今夜のことを想いながら]
はぁ……もうすっかり朝だな。
……ああ、楽しかったよ。
(画面見せつつ)
こいつだって、捕まえられたしな。
ふふふ。
本当に、現実以上の現実を体験した気分だよ。
しかし、随分歩きまわったな……
今夜だけで3ヶ月分くらい歩いたんじゃないか……?
……明日あたり、筋肉痛で動けなくなってそうだ。
それに、変なとこ歩いたから服とか汚れてるし、結構汗もかいてしまった……
せっかく入れてもらったのに、またお風呂入らないといけないな……
(主「また洗ってあげるよ」)
んむ……では、その言葉に甘えて、また洗ってもらおう。
(主「足は大丈夫?」)
え?足か?
あ、ああ。疲れてはいるが、別に問題なく動いているぞ?
(「どうぞ」と、しゃがんでおんぶするポーズをする主人公)
「どうぞ」って……ふふふ。
わかった、では背中、失礼するよ。
(主人公におぶわれる少女)
ん……お前の背中、大きいな。
(主「汗臭くない?」)
いいや、汗臭くなんかない。
お前の匂いは、私にとっては心地の良いものだ。
私の居場所の匂い……本当に……落ち着く…………
(主「朝ごはんはなにがいい?」)
(以下、とても眠そうに)
うん……そうだな…………
朝ごはんは……軽いもので…………
お前も……お風呂入ったら……すぐに寝てしまうんだろ……?
(主「パンでもいいかな」)
……うん…………じゃあ……それで…………
……お前のごはん…………好き…………
ん…………くぅ…………すぅ…………
(寝息)
………………
………………
………………
END