プロローグ
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「あらあら、どうしたんですかそんな格好で帰ってきて」
「いったい何があったんですか? んーそうなんだ、言えないのですか」
「うふふっ、いいですよ。そのような事もありますよね、さ、じゃあ何があったか秘密にするために、着替えちゃいましょうか」
「このままだとお母様に叱られてしまいますしね、ほら誰も見てないうちに私の部屋に来てください」
「ふふっ、こんな擦り傷まで作っちゃって。今救急箱を出しますから待っていてくださいね」
「でもこの程度で良かったですわ、帰ってきた貴方様を見て、私とても心配したのですよ……うん、はい、綺麗になりました」
「さ、いいですよ、何事もなく家に帰ったふりで部屋に戻っても、今日のことは内緒にしてあげますから……ん、どうしたのですか?」
「わっ! あらあら何ですか急に、まぁ……そんな抱きついて……うふふっ、恥ずかしいです」
「何があったのかはわからないですけど……ふふっ、いいですよ、先程もいいましたが全て内緒にしてあげます、好きなだけ甘えてください」
「よしよし、いい子いい子。ギューて抱きしめてあげます……ふふっ、だからこれが終わったら涙を止めるんですよ、男の子なんですから」
「はいギュー……メイドさんの抱擁には魔法がかかっていて、どんな悲しい気持ちもすぐ無くなっちゃうの……ふっー」
「暖かい衣服に包まれて……ふわぁって……ふふっ……怖いことも不安なことも全部……消えていっちゃうんですからね」
「ギュー♪ ギュッ♪ ふふっ……ふぅー いい子ですねぇ、涙も止まって、素敵な男の子の顔に戻ってますよ」
「さ、もういいですよ。何もなかった事にして、静かに、いつもの元気な貴方様に戻ってください♪」
「えっ? ……うんうん、喧嘩に負けちゃったんだ。でもしょうがないですよ、男の子同士、立派に貴方様は戦ったんですから」
「まぁ、相手は女の子? ……ふーん、そうなんですか、女の子に勝てなかったんですか」
「それじゃあ私の出る幕は無いですね、相手が卑怯な男複数人……とかだったら出て行って成敗してあげたのですが、ふーん……女の子に泣かされちゃったんだ」
「男なのに……女の子に……平手で叩かれたのかな……それで我慢できず、ひぃって泣いちゃったんだ」
「本気で反撃したのに力で負けて、足で踏まれて、情けないものを見るような目で笑われて、悔しくて我慢できなくて泣いちゃったの?」
「女の子に手を出さない……とかの問題じゃないですよね、それなら泣く必要がないですもの。全力で戦って、それで負けたんですよね」
「男の子なのに恥ずかしいねぇ、もうその子の前に出ることも出来ないよね、うふふっ……男のプライド、折れちゃった」
「……んっ……ちゅっ はい、お終い。ふふふっ、自分の気持ちを吐き出すってとてもスッキリするでしょ」
「うんうん、また泣きそうな顔しないの……ほーら、涙を拭いてあげるね」
「うんしょ……んしょ……はい、いつもの綺麗な顔に戻りましたよ、うふふふっ♪」
「また、もしつらい事があったらいつでも会いに来てくださいね、私ソフィアはずっと、貴方様を愛していますから」