01
お邪魔しま~……じゃなくて、ただいま~♪
あぁ、今日からここが私の家になるのね。
兄さんと一緒のおうち。
んふふ……あら?
えぇそうね、本当に来ちゃったわ、あはは。
やだもうっ。
そりゃテンションも高くになるに決まってるでしょ?
ようやく長年の夢が叶ったんだから、興奮しないでいる方が無理だわ。
さぁ、上がってゆっくりしましょう。
ふ~~っ……あぁ、兄さんの匂いがする。
今日からこの部屋に、私の匂いも付いていくのね。
えぇ、もちろん本気よ。
何度も言わせないで?
それに、荷物も届いてるでしょ?
そうそう、新しい布団も届いてるでしょ?
私の分だけじゃなくて、兄さんのも新しくね。
引越祝いと少し早い結婚祝いにってお婆ちゃんが買ってくれたのっ、嬉しいわよね。
お婆ちゃんは、最初から私たちの結婚に賛成してくれてたからね~。
えぇ、うちの親ももう完全に説得済み。
オジさんオバさんも賛成してくれてるでしょ?
当たり前よね~♪
イトコとはいえ、こんなに器量好し(きりようよし)の娘さんがお嫁に来てくれるんだもの。
ご両親が反対するわけないじゃない。
だいたい、何年言い続けてきたと思ってるの?
ふふふっ。
そうね。
初めて兄さんと結婚するって言ったのは、私が四年生の時だったわ。
はっきり覚えてる。
それから十二年、お正月ごとにしか会えなかったけど、ず~っと言ってきたでしょう?
えぇ、あの頃からわたしの気持ちが揺らいだことは一度もないわ。
それに兄さんだって、んふふっ。
未(いま)だに独身なのは、わたしを待っていてくれたからでしょう?
そうよねぇ?
兄さんがモテないことは知ってるわ。
優しいだけが取り柄で、イイお友達でいましょう、って言われるために生まれてきたような男性……そんなところも含めて、私は好きよ。
幼い頃からずっと、兄さんが好き。
大好き。
えぇ、愛してるわ♪
あの頃は信じてくれなかったけど、大人になった今なら信じてくれるでしょう?
嘘でも、冗談でもないのよ。
私はず~っと本気だったわ。
だからこうして約束を果たして、兄さんの家に転がり込んできたんじゃない。
だいたい兄さんったら、約束……というか、条件が甘かったのよね。
大学に入ったら~とか、社会人になったら~とか……そんなの条件でもなんでもないわ。
当たり前のことじゃない。
だから、兄さんも私を待っててくれてるって思えたんだけど♪
初めて兄さんに結婚を申し込んだ日から、私は本気。
兄さんのために育って、兄さんのために勉強して、兄さんのために花嫁修業してきたわ。
もちろん、他の人との交際なんて一切してない。
私には兄さんだけだもの。
私にとっての男性は、女になってからず~っと兄さんだけよ。
……はい?
女になってって……や、やだもうっ。
だからそれは、しょ、初潮のことよっ。
ふぅ~。
兄さん、そういうトコロが鈍いのも相変わらずね、んふふっ。
まぁ、そういうとこも可愛いと思うんだけど♪
……そうよ~?
私も年齢イコール彼氏いない歴なの。
もちろん、経験もしてないから……あれ?
何の経験かは訊かなくていいの?
ふふっ、訊いてくれたら教えてあげる。
ねぇ、訊いて?
私、兄さんに教えてあげたいわ。
そう、そうよ……私、まだ処女だから♪
兄さんにしかあげたくないし、兄さんとしかしたくないの。
ねぇ、嬉しい?
んふふっ、嬉しいでしょう。
兄さんも未経験なのよね?
私よりずっと年上なのに、童貞……ううんっ、嬉しいわ。
兄さんにも、私以外の女性を知って欲しくなかったから。
ねぇ兄さん?
今夜が初夜っていうことで、いいのよね?
えぇ?
そりゃ、まだ結婚はしてないけど、どうせすぐに結婚するんだし……んもうっ。
それじゃ、同棲初日の夜っていうことで初夜?
あぁん、いいじゃないのよ~、兄さぁん。
んもう~……はいはい、まだ実感ないのよね。
わかってる、それはそうだと思うわ。
私だって、まだまだ夢見心地だもの。
今こうして、兄さんと二人きりでいられるだけで……。
あぁ、私、すっごく幸せよ♪
ふふっ、幻滅?
して欲しいの?
だ~か~ら~、私は兄さんが好きなの。
兄さんは兄さんのままでいてくれていいのよ?
ぜ~んぶ好きだから。
私が来ることが信じられなかったのに、ちゃんと掃除してくれてるところとか、届いてた荷物を片付けておいてくれてるところとか……昔から、優しくて気弱なままの兄さん。
そんなアナタを、これからは私が守ってあげるわ。
……ねぇ?
ずっと年下の、しかもイトコの女の子にそんなことを言われるのは嫌?
私のこと、欲しくない?
いらない?
いらなくないわよね♪
あぁ~、良かった~。
もし本当は嫌われてたら、どうしようかと思っちゃった。
いくら私が好きでも、兄さんが私のこと嫌いなら……ない?
ふふふっ。
ありがとう、嬉しいわ。
それじゃ改めまして……今日からよろしくお願いします、兄さん。
押しかけ女房のイトコですけど、末永く愛してくださいね?
ん~っちゅ、んふふ♪
おはよう兄さ……んっひゃあ!?
も、もう~っ、驚きすぎじゃないの?
はい、私ですよ♪
ゆうべからお世話になってる、イトコでお嫁さんの私ですっ、あはは。
照れる~っ。
あれ?
兄さん、起きてますか?
夢じゃないですよ?
本当のことですよ?
ほら、さわってみて?
私は、ここにいますよ~、んふふ♪
それでは、お目覚めのキスを……。
あっ、あぁん!
んもう、兄さんってば照れすぎっ。
そんなに焦られると、まるで嫌われてるように思えちゃうじゃないの。
まったくもう、ゆうべ飲み過ぎたからじゃない?
ホントもホント。
私たちはもう、こうしてお布団を並べて眠る間柄なんです。
本当なら、ゆうべは同棲初夜で、結婚を約束したカップルの、あんなコトやそんなコトを……っ!
や~だ~もう~♪
兄さんのエッチ~!
……っと、いっけない。
もっとイチャイチャしてたいけど、兄さんは今日もお仕事でしょう?
朝ご飯、もう用意できてますからね♪