Track 2

Track 2

[後日、放課後部室にて] ところで君は今、好きな人っているのかい? ふふ、あまりに唐突だったね。 先日、恋愛経験については尋ねたけど、今現在の君の恋については聞いていなかったなと、あの日帰ってから考えていたんだ。 無理やりこういった関係を作ってしまって問題はなかったのかと、少し不安に思ったというわけさ。 (主「いえ、特には」) そうか、それなら何も気後れすることなく実験に協力してもらえそうでよかったよ。 憂事はなるべく解消しておいたほうがいいからね。 君も、何か気にかかることがあるならなんでも聞いてくれていいんだよ? (主「今日は一体何をするんですか?」) なるほど、要するに今日の実験内容についてだね。 ※今日はこのまま家に帰るよ。 帰ると言っても、もちろん何もしないわけじゃないよ? 君、ちょっと右手を前に突き出してみてくれるかい? (言われたとおりにする主人公と、その手を掴み恋人繋ぎにする) ん…… ……こうやって、手を繋いで下校したいと思っているんだ。 いろいろ考えたんだよ。実験したいことは山ほどあるんだけど、最初には一体どれが相応しいのかって。 その結果がこれさ。こうやって、恋人繋ぎをするときの感触や感情の変化、実際に体や行動にどういう影響を及ぼすかと言ったね。 ……初めてかい?少し手が震えているのがわかるよ。 ふふ、そうだね、僕も同じだ。簡単なことなのに、どうしてこんなに胸が高鳴るんだろう。 文献等で聞き及んではいたけど、実際に体験するとなかなか…… 君の手、暖かいね。 こうやって繋いだ手の中に感じる温度や水分。 これはまさに恋人たちにしか感じることのできないもの、なのかな。 ……素敵だね。 君はどう思う? ……あ、そうだ。だったら今日のことをレポートにして提出してくれないかい? レポートと言っても、ほんの少しで構わないよ。 たった一言二言でも、ただ君が思ったこと、感じたことを言葉に、文字にして僕に教えてほしい。 どうだい、やってくれるかい? (承諾する主人公) ふふ、本当に助かるよ。ありがとう。 (主「そろそろ行きましょうか」) うん、そうだね。それに、ちょうどいい夕焼けだ。 恋人たちが手を繋いで家路につくのにお誂え向きの背景、十分に堪能させてもらうとしようじゃないか。 [手を繋いだまま、校門から出てくる二人] どうしたんだい、そんなにキョロキョロして。 (主「いや、知ってる人間に見られてないかなっと思って」) ふふ、確かに。少々人目が気になるところはあるね。 だけど、今はこっちに集中してほしいな。 それに、これは純然たる研究のための行為であって、不純異性交遊に当たるものではないと僕は考えている。 そもそもそれは、青少年の健全な成育に悪影響を及ぼすものとして扱われているんだろう? ならばこの研究は、その表裏の位置にあるものだと言っても過言ではないと、僕は思っているよ。 青少年を取り巻く性というものは大人たちによって「悪」としてみなされることが多い。 だが実際はどうだろうか。 感情を持った人間である以上、恋愛感情や性欲と言ったものは多かれ少なかれ必ずつきまとうもので、 それを外野がいくら頭ごなしに否定したところで一個人同士の密接な関係には入り込めないだろう? そのときに繋がった物同士、性に関しての知識や倫理観が欠如したままでは、ほぼ確実に不幸せな結果を生んでしまう。 だから僕たちは正しいことを学ばなくてはならない。 社会が忌避する性というものを、実際に当事者になる前に知っておく必要があると思うんだ。 ……話が脱線してしまったね。 つまり、僕らくらいの男女が手を繋いで歩いている程度、誰からも咎められる言われはない。 それ以上に、健全に成長して大人になっていくために必要なことなんだ、と言いたいわけさ。 僕達人間は、恋をする生き物だからね。 お腹が空くのと同じ。眠くなるのと同じ。 生きている以上、生理的欲求に抗うことなんてできないからね。 ……しかし君、それは無意識かい? いや、時々僕の手を確かめるように強く握ってみたり、指の付け根をコリコリしてみたり…… 嫌じゃないけど、少しくすぐったいかな。あはは…… (主「本当ですか?」) え?あ、うん。正直に言ったほうがいいかな。それが研究者としての義務だからね。 ……少し、気持ちいいなって、思ったよ。 だからお返し、させてもらおうかな。 (ぐりぐりと、主人公の手を握り返す) 気持ちいいかい?ふふ、それは何よりだね。 ただ手を繋いでるだけかと思いきや、こんなふうに追加のスキンシップを得られるなんて、全くこれは奥が深いものだ。 ん?どうしたんだい?急に立ち止まって。 ああ、そうか。君の家はこっちの道なんだね。ついつい習慣で自分の家へと向かっていたよ。 では、今日の研究はここまで、だね。お疲れ様。 (なかなか手を離そうとしない望愛) …………。 ふふ、なかなかこの手が離れてくれなくてね。 なんだかこのまま離すのを惜しく感じてしまってるようだよ。 それは、君も同じなんだろう? (頷く主人公) うん、正直でいいね。 なら今後も、活動のあとはこうやって手を繋いで帰ることにしよう。うん、それがいい。 実験とは1度だけでなく、継続して行うことも大切だからね。 何度も何度も数を重ねるに連れて、今日の、最初に感じたことがどういった変化を見せるのか、楽しみじゃないかい? ということで、残念だけど今日はここまで。 (ゆっくりと手を離す) さて、この感触を忘れないうちに研究日誌を付けないとだね。 君もレポートの件、よろしく頼むよ?