触手娘のにゅるにゅる耳かき
あははっ、捕まえたぁ。
わたしたちの森にたった一人で入ってくるなんて、おバカな冒険者さん。
よくここまで生きてたどり着けたね。
・・・は・な・さ・なーい。
久しぶりの獲物なんだもん。
残さずにぜーんぶ食べてあげるんだぁ。
でもまずは・・・こーこ。
脳みそに種を植え付けなきゃいけないんだあ。
ちょうどいい季節に来てくれたね。あはは、ありがとう。
あなたの顔に空いている穴から触手を入れてね、
やーらかい脳みそに種を植え付けるの。
中で発芽してね、ちっちゃなわたしがいっぱい生まれて、
脳みそを食べながら育っていくんだよ。
その間、わたしは足の先からちょっとずつあなたを食べていこっかな。
どの穴から入れちゃおうかなあ。
わたしはお口から生まれたんだけどー・・・どこがいいかなー・・・
きーめた!お耳にしよう!
10年前の前の種まきの季節にはお鼻にしたからね。
まだやってないところ。
そうと決まればー、穴に触手をずぶぶーっと・・・おぉ?
冒険者さんのお耳きったないなー。
何日も必死にここまで歩いてきたから?
あはは、そっかそっかー。
わたしに食べられるためにそんな必死に歩いてきてくれたんだあ。
じゃあお礼しなきゃねー。
ほらほら、入っていくよー。
お掃除してあげるんだよ。良かったねー。
生まれて最初に食べるのは脳みそだけじゃなきゃいけないから、
間違って他のものが入らないようにきれいにするの。
わたしの触手・・・表面にね、ほそーい毛がいっぱい生えてるんだ。
お耳の汚れをこれでとっちゃうの。
ほーら、もっと奥にぃ・・・ぐるぐるーわしゃわしゃー。
ね、ね、これっておりょうり?
人間は食べ物をもっと美味しくするために手を加えるんでしょ?
それとおんなじだからーおりょうりだ!
わたしが生まれるときに食べた女の人の脳みそにあったの。
おりょうりの知識。かぞくのおもいで!
にんげんの言葉もそこで習ったんだよ。
だーかーらー。逃がさないって。
冒険者さんの頭の中からちっちゃなわたしが眼球を食い破って出てくるのが早いか、
わたしが首から下を全部食べちゃって、
おめめをくり抜いてぱくってするのが早いか・・・
今のわたしとあたらしいわたしで競争するんだからー。
あれれー?奥におっきいのがあるよー。
お耳の穴せまいなあ。
この触手じゃ、これ以上奥にはいれない。
じゃあ、細くてやーらかい、新しく生えたばっかりの触手が入っていくよー。
お耳のお汚れ掻き出して、種を植え付けている間にわたしが味見してみちゃおう。
ちっちゃいわたしには早いからー、あはは、にんげんもあるよね?
大人しか食べちゃいけないもの。
あっ・・・耳の奥の・・・なにこれ?
白くてつるつるのうすーい皮みたいのが穴を塞いでるよぅ。
これどうしたらいいんだろー?
破っちゃっていいのかなーうーん・・・。
あはは、冒険者さん、汗かいてどうしたのー?
えーっと・・・これも知ってる気がするなあ。
こ、こま・・・こまい?うーん違うかなー?こます?
わあ!おっきいの出てきたー!
まいっか。思い出せないんだからしかたないよねー。
すごいの見たらどうでもよくなっちゃった。
えへへ、できたー。
だめだよ?終わらないよ。
反対のお耳もやってあげなくちゃね。
ほらほら、こっちにもちゃーんと穴があいてるでしょ。
両方から同時にずぶーって入れてあげたいから、
きれいきれいしなくっちゃね。
触手をにゅるーっとのばして・・・穴にいれちゃおうねー。
お耳の汚れを毛でからめとっちゃうの。
捕まえちゃうんだよ。
くるくるって回しながら入れたり出したりー
上にー下にーって動かすんだあ。
そういえば・・・また人間に会ったら聞こうと思ってたことがあったの。
わたしの葉っぱ、人間の使う道具に似てるでしょ。
えっと・・・ブラシ?
あの黒い水をつけて字を書くときに使うもの。
ああ、あれは「ふで」っていうんだー。
あはは!わたしかしこくなっちゃった!
この触手の毛ね。
普段は水滴を集めたりするのに使ってるんだけど、
まさか人間のお耳きれいにするのに役に立つなんてねー。
冒険者さんも良かったよね、あはは。
白いの・・・はがれた皮膚や汚れのかたまり、いーっぱい出てきたあ。
あ、こっちも奥にいくほど狭くなってるんだあ。
これじゃ入らないね、また細い触手を使わなきゃ。
え?入らないからやめろって?
そんなことないよう、さっきも大丈夫だったもん。
えいっ、にゅるにゅるー。
これなら細いから一番奥までちゃんと入るよ。
お耳の穴の奥でも、もぞもぞ動いてるのわかるかなあ?
あ、こんな所にかたまった汚れがあった。
白っていうかー・・・ちょっと黄色くなっちゃってる。
冒険者さんってば、よっぽどがんばってここまできたんだね。
誉めてるんだよぅ。
だってね、殆どの人間はここにくる途中で、
もっと森の入り口にいる他のみんなに食べられちゃうんだもん。
たまにたどり着く人間がいても、死にかけだったり食べかけだったりで、
こんな五体満足なのは本当に久しぶり・・・えへへ、嬉しいなあ♪
だから念入りにきれいにして種をまいて、
簡単に死んじゃわないように大事に大事に食べなきゃね。
人間って痛すぎると死んじゃうんでしょう?
わたしのね、花粉の匂いでー痛いのも飛ばしてあげるからー。
きもちいいーっていいながら食べられてね。
ほーらほらー・・・こしょこしょ・・・にゅるるー・・・あはは♪
あ、またあった。
さっきの白いつるつるの膜ー。
これーどうしたらいいんだろうねー?
どうせ種を植えるときに破っちゃうけどー今はそっとしておいたほうがいいのかなー?
こしょこしょしてみたらどうなるのかなあ。
冒険者さんどうしたの、怖いの?
こんな森の奥までたどり着いた勇猛果敢な戦士さんなのに怖いんだー。
あはは、おもしろーい。
・・・うんうん、こんなものかなー。
あれ?あれれ・・・耳の裏や縁のところも汚れてる。
へえ、人間の耳って穴の中だけじゃなくってこんなところも汚れてるんだー。
下の方の大きなふとーい触手・・・
地面をつかむためのやーらかくて毛の長いこれで、こしょこしょーってくすぐってあげるね。
さっき反対側やるの忘れちゃった・・・。
じゃあ、両方同時にやっちゃえばいいかあ。
せーの・・・っ、わしゃわしゃわしゃわしゃー。
あれ?冒険者さん泣いてるの?
目から水が垂れてるっていうのは泣いてるってことだよね。
ん、なになに・・・。
きもちいいのと悔しいのと怖いのでわけがわからなくなっちゃった・・・?
あはは、わたしにもわかんないや。
にんげんってほんとにおもしろいねー。
ほら、ほら、ほーら・・・わしゃわしゃーこしょこしょー。
ねえねえ、冒険者さんはおなまえ何ていうの?
にんげんにはそれぞれの個体に「おなまえ」っていうのがあるんでしょ。
わたしねー・・・覚えてるの苦手だから忘れちゃうかもしれないけど、
教えてくれたらいーっぱい呼んであげる。
いや?
今教えてくれなくてもいいよー。
冒険者さんが教えてもいいかなーって思ったら教えて。
でもあんまり遅くなると、冒険者さん、おなまえいう前に死んじゃってるかもね。
あはは、でーきた。
じゃあ冒険者さん、わたしの種、あなたに蒔かせてね。
こういう時ーにんげんの言葉ではー・・・えーっと・・・。
たしかおもいでのなかにあったなあ。
わたしが最初に食べた女の人が一緒に暮らしてた男に言われたことー。
えーとえーと・・・あ、思い出したー。
「わたしのおよめさんになってください」