プロローグb
♪鳥のさえずり
【自分の耳にマイク装着/ちょっとエコー/固定】
俺 :俺はこの団地に越してきたばかりの主夫
主夫と言っても、夫の方の主夫だ。
少し前までは、旦那の癖に家事をしてなんて言われたもんだが
妻の仕事は、医師だ。人の命に携わる仕事をしている彼女に
家庭に入って欲しいだなんて酷なことは言えない
毎日、疲れきって帰ってくるが、やはり仕事は生き甲斐のようだ
ならば、周囲から不出来な夫だと言われようが
そんな妻を支えるのが、夫である俺の仕事だと思う。
だが、団地に越してきた以上、ご近所付き合いは必須だ
同じように主夫をしている人がいるか分からないが
奥様方と上手くやっていかなければならないのだろう
♪鳥のさえずり+ティーカップ
【左斜め前】
二見:そういえば、誰とは言えないんだけど、同じ階の奥さん、
管理人さんとデキテルらしいよ?
黒木:うっそぉ、信じらんなーい
確かに、昔はモテたんだろうなって感じはするけどいくらなんでも
【フェードアウト】
俺 :―――どうやら、団地の奥様方というのは
昼下がりにこうして噂話に花を咲かせるのはテンプレらしい
二見:あ、そうそう、お隣の奥さんから貰ったケーキ出すの忘れちゃってた
ちょっと取ってくる
♪椅子引く音+スリッパ音遠ざかり+遠くで冷蔵庫開ける音+食器音
黒木:二見さんのお隣の奥さんがくれるケーキ、凄く美味しいんだよ
今日は、何のケーキかなぁ。この前のモンブランも美味しかったんだよねー
俺 :今日はたまたま俺を含めて三人だけど、
いつもはもっと沢山の奥様方で集まっているらしい
きっと、男性だからと、いっぱい呼ぶのは気を使ってくれたのだろう
♪スリッパ音近づき+食器音
二見:はい、お待たせ。今日はバームクーヘンでしたー
黒木:あら、お隣さんにしては随分シンプルなんじゃない?
いつもは手が込んだものを作るのに
二見:私も初めそう思ったんだけど、横にバニラアイスあるでしょ?
それもお隣さんからなの。後、これに付けて食べるらしいんだけど―――
♪シロップ入れ程度の物を置く食器音
黒木:なにこれ、蜂蜜?
二見:そう、蜂蜜。アカシア蜂蜜っていう種類らしいよ?
普通の蜂蜜よりも後味がスッキリしてるみたい
♪適度にもごもご+食器音
黒木:ふーん―――蜂蜜…ねぇ―――いただきまーす
そういえば、お隣さん、前もシンプルなやつ持ってきた時って
旦那さんじゃない人と歩いてたって下の奥さん言ってたよねー
二見:そうそう、腕まで組んでたって言ってたっけ?
俺 :―――他所の不倫事情を肴に優雅なティータイム―――
男の俺が聞いていい話なのだろうか
黒木:ねぇ!貴方は、そういうの興味ないの?
【エコー解除】
俺 :え?!えっと―――不倫…ですか?
二見:まぁ、早い話が不倫かな
俺 :お…俺は、妻を支えるのが仕事だと思ってますから
黒木:ふーん―――じゃぁ、そういう機会があったらどうする?
俺 :え…そういう機会っていうのは…
二見:この団地、結構『そういうの』多いみたいなのよね
俺 :み…皆さん、お元気なんですね
黒木:笑 お元気なようですね
二見:笑 そのようですね
二見:でもほら新婚ホヤホヤだと、いっぱい仲良しするかもしれないけど―――
何年も経っちゃうと―――ねぇ?
黒木:奥さん、お医者様なんでしょ?
いつも疲れて帰って来てるからって、気使っちゃうんじゃない?
二見:だから、そういう機会がもし目の前にあったら―――
黒木:飛びついてもいいと思うんだけど―――どう思う?
俺 :お…俺は―――
♪やかん
二見:あらあら、イイ所だったのに―――
♪椅子引く音+スリッパが遠ざかる音+やかんOUT
【囁き】
黒木:ねぇ、ちょっと目閉じて?
ブランク3秒
【口元】
黒木:【短いチュパ音】アイス、付いてたよ?
笑 耳赤くなってるじゃん
もしかして、ちょっとドキッってしたの?
もうちょっと…する? 笑
二見:笑 いつの間に帰ってきたの?って言いたい?
どうぞ、続けて?それとも、私としたい?
【定置戻りながら】
黒木:可愛いからからかっちゃった
【定置】
二見:主婦ってね、パートナーを支える事に徹するから
自分のことはどうしても後回しになっちゃうのよ。
今の貴方みたいに。
貴方も今、不満がないわけじゃないでしょう?
わかるわよ。私達もそう。
だからこうして楽しむのも、ある意味一つの不満の解消方法になると想うの。
勿論、旦那は愛してるわよ?貴方も奥様の事、愛してるんでしょう?
※此処からいつもの台本の形式になります※
♪椅子引く音+服ずれの音入ってOK
【だんだん耳元に近づいていく感じ】
二見: 裏切れない
黒木:そう、奥様の事は愛してる 裏切りたくない
二見:だから 割り切った関係で
黒木: だからこそ 割り切られた関係で
二見:女として愉しむ
黒木: そう、男としてじゃなく
二見:一人の女性として、快感を受け止める
黒木:一人の女性として
二見:何を言ってるかわからないかもしれないけれど
黒木:
二見:
黒木:すぐにわかるようになるから
二見:怯えないで大丈夫
黒木: 悪いようにはしないから
二見: 貴方が女性になれば
黒木:女同士になれば
二見:私達の関係は不倫とは言わない
黒木:私達の関係は不倫とは言わない
二見:歪んでる? 簡単なこと
黒木: 同性なら 狂ってる?
二見:女の悦びを 与えるだけ
黒木: 女として 求めるだけ
二見:そういう関係
黒木: 興味あるでしょ?
※ブランク無